
今回は足関節捻挫をしてしまったときの対処法について解説します。
足関節捻挫は、スポーツ現場で非常によくみられるケガのひとつです。
「ただの捻挫」と思われることもありますが、痛みや腫れが長引いたり、再発を繰り返したりすることがあります。受傷から半年後でも症状が残る例が報告されているため、初期対応とリハビリを丁寧に行うことが大切です[1]。
この記事では、足関節捻挫の種類、症状、受診目安、病院で行う検査、保存療法、リハビリ、スポーツ復帰の考え方について解説します。
- 足関節捻挫とは何か
- 足関節捻挫で損傷しやすい靱帯
- 足関節捻挫を起こしやすいシーン
- 病院を受診した方がよいサイン
- 病院で行う検査
- 保存療法と手術療法の考え方
- 足関節捻挫後のリハビリの流れ
- スポーツ復帰の目安
- 再発予防で大切なポイント
足首・足部の痛み全体について知りたい方は、関連する足部・足関節の記事もあわせて確認してみてください。
目次
足関節捻挫とは?
足関節捻挫とは、足首をひねることによって、足関節まわりの靱帯や関節包などを損傷している状態をさします。
足関節捻挫は、ひねった方向によっていくつかに分けられます。特に多いのは、つま先が内側に向くようにひねる足関節外側靱帯損傷です。
- 足関節外側靱帯損傷:回外・内がえし方向の捻挫で起こりやすい
- 足関節内側靱帯損傷:回内・外がえし方向の捻挫で起こりやすい
- 底屈方向の捻挫:つま先が下に向く動きで起こる
- 背屈方向の捻挫:つま先が上に向く動きで起こる
一般的には「内反捻挫」と呼ばれることも多いですが、足部の運動方向については、日本足の外科学会などで用語の整理が行われています。この記事では、わかりやすさを優先しながら、必要に応じて回外・回内、内がえし・外がえしという表現も使って説明します。
① 内がえし/外がえし:前額面上の運動
② 背屈/底屈:矢状面上の運動
③ 内転/外転:水平面上の運動
④ 回外:内がえし+底屈+内転の複合運動
⑤ 回内:外がえし+背屈+外転の複合運動


足関節捻挫で損傷しやすい組織
足関節捻挫では、ひねり方によって損傷されやすい組織が変わります。
- 回外捻挫:前距腓靱帯、踵腓靱帯、前下脛腓靱帯、二分靱帯、後距腓靱帯、腓骨筋腱など
- 回内捻挫:三角靱帯など
- 底屈方向の捻挫:前距腓靱帯、前下脛腓靱帯、リスフラン靱帯、三角骨周囲など
- 背屈方向の捻挫:前下脛腓靱帯、骨挫傷など
アメリカの高校スポーツで発生した足関節靱帯損傷の調査では、足関節捻挫の多くで前距腓靱帯が関係していたと報告されています[2]。
足関節捻挫では、外側靱帯、とくに前距腓靱帯の損傷が多くみられます。
足関節捻挫の重症度
足関節捻挫は、一般的に損傷の程度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されます。
- Ⅰ度:靱帯が軽く伸ばされた状態。腫れや痛みは比較的軽い
- Ⅱ度:靱帯の一部損傷。腫れ、内出血、痛み、不安定感が出やすい
- Ⅲ度:靱帯の完全損傷。強い腫れや不安定感が出やすい
復帰までの期間は、Ⅰ度で1〜3週間、Ⅱ度で4〜8週間、Ⅲ度で約3か月程度が目安になることがあります。ただし、実際の復帰時期は、痛み・腫れ・可動域・筋力・ジャンプや方向転換の安定性によって判断する必要があります。
足関節捻挫を起こしやすいシーン
足関節捻挫は、方向転換、ジャンプ着地、相手選手の足を踏んだとき、接触プレーでバランスを崩したときなどに起こりやすいです。
バスケットボール、サッカー、バレーボール、ラグビー、ハンドボール、陸上競技など、ジャンプ・着地・切り返しが多い競技でよくみられます。
接触をして全体重が乗ってしまった場合や、「バキッ」「ボキッ」という音がした場合、強い腫れや内出血がある場合は、骨折を伴う可能性もあるため、早めに病院を受診しましょう。
足関節捻挫後のよくある症状
足関節捻挫の症状は、損傷した場所や重症度によって異なります。ここでは、典型的な症状を整理します。
- 外くるぶし周囲が腫れる・痛い
- 外くるぶしの前方を押すと痛い
- つま先を下・内側に向けると痛い
- 歩行や片脚立ちで不安定感がある
- 内くるぶし周囲が腫れる・痛い
- 内くるぶし周囲を押すと痛い
- つま先を上・外側に向けると痛い
- 外側靱帯損傷よりも復帰に時間がかかる場合がある
- 外くるぶし前方〜足首の前が腫れる・痛い
- 足首の後方が痛い場合もある
- つま先を下に向けると痛い
- 三角骨障害や前方組織の損傷との鑑別が必要なことがある
- 足首の前側が腫れる・痛い
- つま先を上に向けると痛い
- 前下脛腓靱帯損傷が関係する場合がある
- 通常の外側靱帯損傷より長引く場合がある

早めに病院を受診した方がよいサイン
足関節捻挫は軽症であれば保存療法で改善することが多いですが、骨折や重度の靱帯損傷を見逃さないことが大切です。
- 受傷直後から歩けない、または体重をかけられない
- 外くるぶし・内くるぶし・足の甲・足の外側の骨を押すと強く痛い
- 腫れや内出血が強い
- 足首の変形がある
- しびれ、感覚の鈍さ、足先の冷感がある
- 「バキッ」「ボキッ」という音がした
- 数日たっても痛みや腫れが改善しない
- 足首が抜けるような不安定感が強い
- スポーツ復帰後に繰り返し捻挫する
これらに当てはまる場合は、単なる捻挫と決めつけず、医療機関で確認しましょう。
病院で行う検査
軽度の損傷の場合は、問診や診察で足関節捻挫と判断されることもあります。
一般的には、問診、触診、腫れや内出血の確認、関節の不安定性の確認、前方引き出しテスト、内がえし・外がえしストレステストなどを行います。
エコー検査を併用すると、靱帯の損傷部位や腫れの状態を確認しやすくなります。
骨折が疑われる場合はレントゲン検査を行います。重症例や痛みが長引く場合、骨軟骨損傷・骨挫傷・脛腓靱帯損傷などが疑われる場合には、MRI検査を行うことがあります。
足関節捻挫と診断されたら
足関節捻挫は、基本的には保存療法で対応します。
保存療法では、初期の腫れや痛みを抑え、足関節の可動域、筋力、バランス能力、ジャンプや方向転換の安定性を段階的に回復させていきます。
中等度以上の損傷では、痛みが引いた後も靱帯の緩みや不安定感が残ることがあります。そのため、足関節周囲だけでなく、股関節・体幹を含めた下肢全体の安定性を高めるリハビリが重要です。
前距腓靱帯損傷後もスポーツ復帰できる例は多くありますが、再発を繰り返すと慢性的な不安定感やパフォーマンス低下につながることがあります。
保存療法を行っても強い不安定感や痛みが残る場合、競技レベルや症状によっては手術療法が検討されることもあります。治療方針は専門医と相談して決めましょう。
足関節捻挫の保存療法
ここでは、中等度の足関節捻挫をイメージして、保存療法のリハビリの流れを整理します。
期間はあくまで目安です。実際には、痛み、腫れ、可動域、筋力、バランス、競技動作の安定性を確認しながら進めましょう。
リハビリを進めるためのチェックポイント
- 腫れ・痛みが悪化していない
- リハビリ中・リハビリ後に痛みが増えていない
- 当日夜・翌日朝に腫れや痛みが増えていない
- 足首の背屈可動域が回復している
- 歩行でかばいが少ない
- 片脚立ちで大きくぐらつかない
- 片脚カーフレイズが痛みなく行える
- ケンケンやジャンプ着地で不安定感がない
炎症期:受傷直後〜3日ほど
- 痛みと腫れを抑える
- 患部に過度な負担をかけない
- 必要に応じて圧迫・挙上を行う
- 歩行がつらい場合は松葉杖や装具を検討する
- 医師や専門家の指示に従い、固定や保護を行う
リハビリ前期:受傷後3日〜2週ほど
- 腫れを改善する
- 足首の背屈可動域を改善する
- 足首周囲の筋肉を軽く動かす
- 痛みのない範囲で足趾・足部を動かす
- 体幹とお尻の筋肉を鍛える
- 歩行のかばいを減らす
リハビリ中期:2週〜4週ほど
- 体重をかけた筋トレを開始する
- スクワット、片脚スクワット、ランジなどを行う
- 片脚立ちやバランストレーニングを行う
- ジョギング開始に向けて準備する
- 直線的な動作から段階的に負荷を上げる
ジョギングを開始する前に、以下を確認しておきましょう。
- 下腿前傾角度に大きな左右差がない
- 片足カーフレイズが痛みなく行える
- 歩行でかばいがない
- 片脚立ちで大きくぐらつかない
- 運動後・翌朝に腫れが増えない
リハビリ後期:3週〜6週ほど
- ステップワークを開始する
- ジャンプ・着地の練習を行う
- アジリティトレーニングを行う
- リアクションドリルを行う
- 対人動作や競技動作へ段階的に進める
- 外側荷重にならないように動作を確認する
復帰期:4週〜8週ほど
- 1〜2週間かけて段階的に練習参加を増やす
- 競技特性に合わせた方向転換・ジャンプ・接触動作を確認する
- 練習後と翌朝の腫れ・痛みを確認する
- 必要に応じてテーピングやサポーターを活用する
- 再発予防のバランストレーニングを継続する
スポーツ復帰の判断で大切なポイント
足関節捻挫後のスポーツ復帰は、期間だけで判断しないことが大切です。
国際的なコンセンサスでは、足関節捻挫後の復帰判断には、痛み、足関節機能、感覚運動機能、選手本人の不安や自信、スポーツ動作のパフォーマンスなどを確認することが提案されています[3]。
- 痛みがない、または競技動作で悪化しない
- 腫れが増えない
- 背屈可動域の左右差が少ない
- 片脚カーフレイズが安定して行える
- 片脚ジャンプ・ケンケンで不安定感がない
- 方向転換、減速、着地で怖さが少ない
- 競技特有の動きでフォームが崩れない
- 練習後・翌朝に症状が悪化しない
再発予防で大切なこと
足関節捻挫は再発しやすいケガです。痛みが引いた後も、足首の可動域、筋力、バランス能力、ジャンプや切り返しの安定性を継続して高めることが重要です。
必要に応じて、復帰初期はテーピングやサポーターを活用するのも選択肢です。ただし、サポーターだけに頼らず、自分の足首を安定させるリハビリを継続しましょう。
よくある質問
足関節捻挫は病院に行くべきですか?
歩けない、骨を押すと強く痛い、腫れや内出血が強い、しびれがある、変形がある場合は受診をおすすめします。軽症に見えても骨折や重度の靱帯損傷が隠れていることがあります。
捻挫した直後は冷やした方がよいですか?
受傷直後で腫れや痛みが強い場合は、冷却・圧迫・挙上などで痛みや腫れをコントロールします。ただし、冷やしすぎや長時間のアイシングは避け、状態に合わせて行いましょう。
何日で歩けるようになりますか?
軽症であれば数日で歩きやすくなることもありますが、中等度以上では数週間かかることがあります。痛みを我慢して歩き続けると腫れが長引くことがあるため、無理に歩きすぎないことが大切です。
サポーターやテーピングは必要ですか?
復帰初期や不安定感がある時期には、サポーターやテーピングが役立つことがあります。ただし、再発予防には足首周囲の筋力、背屈可動域、バランス能力の改善も必要です。
スポーツ復帰はいつからできますか?
復帰時期は重症度や競技によって異なります。痛みや腫れが落ち着き、背屈可動域、片脚カーフレイズ、ジャンプ、ケンケン、方向転換で不安定感がないことを確認しながら進めましょう。
足関節捻挫はクセになりますか?
適切なリハビリを行わずに復帰すると、再発や慢性的な不安定感につながることがあります。初回受傷後から、可動域・筋力・バランス・競技動作を段階的に改善することが大切です。
まとめ
ここまで、足関節捻挫後の方針やリハビリテーションについて解説しました。
足関節捻挫はスポーツ現場で非常に多いケガですが、痛みや腫れが長引いたり、再発を繰り返したりすることがあります。
特に、初期の腫れや痛みの管理、背屈可動域の改善、足関節周囲の筋力、バランス能力、ジャンプや方向転換の安定性が重要です。
「ただの捻挫」と軽く考えすぎず、必要に応じて医療機関で確認しながら、段階的にリハビリを進めていきましょう。
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参考文献
[1]Gerber JP et al. Persistent disability associated with ankle sprains: a prospective examination of an athletic population. Foot Ankle Int. 1998;19(10):653-660. PubMed ID: 9801078
[2]Swenson DM et al. Epidemiology of U.S. high school sports-related ligamentous ankle injuries, 2005/06-2010/11. Clin J Sport Med. 2013;23(3):190-196. PubMed ID: 23328403
[3]Smith MD et al. Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework-an international multidisciplinary consensus. Br J Sports Med. 2021;55(22):1270-1276. PubMed ID: 34158354


