
今回はモートン病(Morton病/Morton neuroma)について解説します。
「足の指の付け根が痛い」「足の裏がピリピリしびれる」「靴を履くと前足部が痛い」といった症状がある場合、モートン病が関係している可能性があります。
特に、歩く・走る・ジャンプする・切り返すなどの動作や、幅の狭い靴を履いたときに症状が出る場合は、痛みの場所だけでなく、靴や前足部への荷重のかかり方も含めて確認することが大切です。
この記事では、モートン病の症状・受診の目安・検査・治療・リハビリ・スポーツ復帰について、スポーツ現場の視点も含めてわかりやすく整理します。
- モートン病とはどのような状態か
- 足趾の付け根の痛み・しびれと受診の目安
- 病院で行う検査と治療の考え方
- リハビリとスポーツ復帰の進め方
足全体の痛みについて知りたい方は、まずはこちらの記事も参考にしてください。
モートン病とは?
モートン病とは、足趾へ向かう神経が前足部で繰り返し圧迫・刺激され、足趾の付け根から足先にかけて痛みやしびれを起こす状態です。
医学的には「Morton neuroma」と呼ばれますが、一般的な腫瘍とは異なり、足趾へ向かう神経の周囲に線維化や肥厚が生じた状態です。原因や詳しい発生メカニズムには議論が残っていますが、繰り返される機械的な刺激や圧迫が関係すると考えられています[1]。
多くは第3趾と第4趾の間にみられ、第2趾と第3趾の間に生じることもあります。

症状は、前足部を横から圧迫するような靴や、つま先側への荷重が増える場面で悪化することがあります。幅の狭い靴やハイヒールだけでなく、スポーツシューズやスパイクの形状が影響することもあります。
- 幅の狭い靴や前足部を圧迫するシューズ
- 長時間の歩行やランニング
- ジャンプ・踏み込み・切り返しの繰り返し
- つま先側へ荷重が集中する動作
- 前足部の荷重の偏りや足部アーチ機能
スポーツ現場では、痛みのある場所だけでなく、靴・インソール・足部アーチ・前足部の荷重・歩き方や走り方も評価します。
横アーチを含む足部機能とモートン病の関係には十分に確立されていない部分もありますが、前足部の特定の場所へ負担が偏っていないかを確認することは、リハビリを考えるうえで大切です。

モートン病の主な症状と受診の目安
モートン病では、足趾の付け根から足先にかけて痛みやしびれが出ることが多く、症状の感じ方には個人差があります。
- 足趾の付け根や前足部が痛い
- 足の裏や足趾がピリピリ・ジンジンする
- 小石を踏んでいるような違和感がある
- 長く歩く、走る、ジャンプするなどで症状が出る
- 幅の狭い靴で悪化し、靴を脱ぐと楽になる
スポーツ選手では、普段の歩行では問題がなくても、ランニング、ダッシュ、踏み込み、ジャンプ、切り返しなど、前足部への負荷が高まったときだけ症状が出ることがあります。
受診前には、「どの指の間に症状があるか」「どの靴や競技動作で出るか」「運動後や翌日に悪化するか」「しびれがどの程度続くか」を整理しておくと、診察時の参考になります。ただし、症状だけでモートン病と自己診断することはできません。
- しびれが続く、または徐々に強くなっている
- 歩くだけでも強く痛む、運動量を落としても改善しない
- 強い腫れや外傷後の強い痛みがある
- 足趾に力が入りにくい、足趾の色が明らかに悪い
- 安静時や夜間にも強く痛む、発熱を伴う
特に、外傷後に体重をかけられない場合や、しびれ・筋力低下が進行している場合は、モートン病以外の問題も含めて確認が必要です。
病院で行うモートン病の検査
モートン病が疑われる場合は、症状の特徴や診察所見を確認し、必要に応じて画像検査を組み合わせて判断します。身体所見だけ、画像だけで判断するのではなく、症状との一致を確認することが重要です。
問診・診察
痛みやしびれの場所、靴との関係、運動時の症状、症状が始まった時期などを確認します。足趾の間を押したときの痛みやしびれ、前足部を圧迫したときの症状なども確認します。
Mulder徴候などの身体所見
前足部を横から圧迫しながら足趾間を確認すると、痛み・しびれやクリック感が出ることがあります。Mulder徴候を含む身体所見の診断精度にはばらつきがあるため、単独の検査だけで確定するものではありません[3]。
エコー検査・MRI検査
エコー検査やMRI検査では、足趾へ向かう神経周囲の病変を確認します。システマティックレビュー・メタ解析では、エコーとMRIはいずれもモートン病の診断に用いられる画像検査として報告されています[2]。エコーはその場で動かしながら評価しやすく、MRIは周囲組織や他の前足部疾患を確認する際にも利用されます。
似た症状を起こす疾患の確認
前足部の痛みはモートン病だけでなく、骨・関節・腱・滑液包などの問題でも起こります。必要に応じてレントゲン、エコー、MRIなどを使い分けます。
モートン病の治療
モートン病では、まず神経周囲への圧迫や刺激を減らす保存療法が検討されることが多いです。症状の強さや生活・競技への影響に応じて、注射療法や手術療法が選択されることもあります[4][5]。
保存療法
保存療法では、「前足部を圧迫する環境を減らすこと」と「症状を悪化させない範囲へ運動負荷を調整すること」が基本になります。
- 痛みやしびれが強くなる運動量を一時的に調整する
- つま先に余裕のある靴や前足部を圧迫しにくいシューズへ変更する
- 必要に応じてインソールや中足骨パッドなどを使用する
- 前足部への荷重の偏りや足部機能を評価する
- 症状に合わせてリハビリを行う
インソールやパッドは、前足部の圧迫や荷重を調整する目的で使用されます。ただし、位置や形状が合わないと別の場所に負担が移ることもあるため、症状を確認しながら調整します。
保存療法で改善しない場合
痛みやしびれが強い場合には、ステロイド注射などが検討されることがあります。モートン病に対する非手術療法のシステマティックレビューでは、注射療法、装具療法、体外衝撃波など複数の治療法が検討されていますが、治療ごとにエビデンスや効果の持続性には違いがあります[4]。
保存療法や注射療法を行っても症状が続き、日常生活やスポーツに大きな支障がある場合には手術療法が検討されることがあります。治療方法は症状の期間・強さ、病変の状態、競技レベルなどを踏まえて担当医と相談して決定します[5]。
モートン病のリハビリテーション
モートン病のリハビリでは、痛みやしびれを悪化させないようにしながら、前足部へかかる負担を調整し、歩行からランニング、競技動作へ段階的に戻していきます。
ショートフットエクササイズ、カーフレイズ、スクワット、股関節・体幹トレーニングなどは、モートン病そのものへの効果が十分に確立されている運動ではありません。一方、スポーツ現場では、足部機能や荷重コントロール、下肢全体の動きを改善するための実践的な手段として、個々の評価に応じて取り入れることがあります。
- 運動中に痛みやしびれが強くならない
- 運動後に症状が残り続けない
- 翌朝に痛みやしびれが増えていない
- 歩行時の症状が悪化していない
前期:痛み・しびれを落ち着かせる
目的:前足部への刺激を減らし、日常生活で症状が悪化しない状態を作ります。
- 症状が出るランニングやジャンプ量を一時的に減らす
- 幅の狭い靴や前足部を圧迫するシューズを見直す
- 必要に応じてインソールや中足骨パッドを使用する
- 痛みのない範囲で足趾・足首を動かす
- 症状を悪化させない範囲で股関節・体幹などのトレーニングを継続する
足底をセルフマッサージする場合は、しびれや痛みが出る足趾間を強く押し続けないようにします。裸足で硬い床を長時間歩くことで症状が増える場合も、負荷を調整しましょう。
中期:足部機能と荷重コントロールを改善する
目的:前足部の痛みが出ている場所へ負担が偏りすぎないようにし、片脚動作や軽いジャンプへ進められる状態を作ります。
- ショートフットエクササイズなどで足部アーチを支える筋肉を使う
- カーフレイズで前足部の荷重配分と足首の安定性を確認する
- スクワット・片脚スクワットで下肢全体の安定性を高める
- 症状がなければ軽いケンケンやジャンプへ段階的に進める
- 必要に応じて股関節・体幹の筋力や動作も合わせて改善する
青竹踏みなどの足底刺激を取り入れる場合も、症状が出ている足趾間を強く圧迫しない範囲で行います。大切なのは「前足部へ乗らないこと」ではなく、痛みのある場所だけへ負担が集中しないように荷重をコントロールすることです。
後期:ランニング・ジャンプ・切り返しへ戻す
目的:スピードや方向転換が加わっても、前足部の症状を悪化させずに競技動作を行える状態を作ります。
- ジョギングからランニングへ段階的にスピードを上げる
- ジャンプ・着地・ケンケンの強度を段階的に上げる
- スプリントやステップワークを開始する
- アジリティや切り返し動作を競技に合わせて増やす
- 練習後と翌日の痛み・しびれを確認する
競技動作を戻すときは、一度にスピード・距離・ジャンプ数・方向転換回数を増やさず、症状の反応を見ながら負荷を調整します。
モートン病からスポーツ復帰する目安
モートン病に特化した確立されたスポーツ復帰基準は十分ではないため、「何週間経ったか」だけで判断するのではなく、症状・基本動作・競技動作・運動後の反応を組み合わせて判断します。
- 普段の歩行で痛みやしびれがない、または十分に落ち着いている
- 日常で使用する靴を履いても症状が強くならない
- 階段昇降などで前足部の症状が悪化しない
- 活動した翌日に症状が増えていない
- 30分程度の歩行で痛み・しびれが出ない
- 片脚カーフレイズで症状が出ない
- 軽いジャンプやケンケンで症状が出ない
- 実施後から翌朝にかけて症状が悪化しない
- ダッシュ、ジャンプ、着地で症状が出ない
- 競技に必要な切り返しや踏み込みを行える
- 競技用シューズやスパイクでも症状が出ない
- 練習量を増やしても症状が大きく悪化しない
- 練習後から翌日に痛み・しびれが増えていない
競技用シューズは普段履きと前足部の幅や硬さが異なることがあります。練習へ戻る前に競技用シューズで段階的に動作を確認し、必要に応じて医師や理学療法士、アスレティックトレーナーなどと相談しながら復帰を進めましょう。
よくある質問
モートン病は自然に治りますか?
症状が軽い場合は、靴や運動量の調整、インソール、リハビリなどによって症状の改善を目指せることがあります。神経周囲の変化そのものがなくなるかだけではなく、日常生活やスポーツで痛み・しびれを出さずに活動できるかを確認することが大切です。
モートン病にインソールは効果がありますか?
前足部の圧迫や荷重を調整する目的で、インソールや中足骨パッドが使用されることがあります[4]。ただし、適した形や位置には個人差があるため、使用して症状が悪化する場合は調整が必要です。
まとめ
- モートン病では、足趾の付け根から足先にかけて痛みやしびれが出ることがあります。
- まずは前足部を圧迫する靴や、症状を悪化させる運動負荷を見直すことが大切です。
- リハビリでは足部だけでなく、荷重のかかり方やランニング・ジャンプ・切り返しまで段階的に確認します。
- しびれが続く、歩行でも強く痛む、症状が悪化している場合は医療機関への相談を検討してください。
参考文献
[1]Mak MS et al. Morton's neuroma: review of anatomy, pathomechanism, and imaging. Clin Radiol. 2021;76(3):235.e15-235.e23. PubMed ID: 33168237
[2]Bignotti B et al. Ultrasound versus magnetic resonance imaging for Morton neuroma: systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2015;25(8):2254-2262. PubMed ID: 25809742
[3]Pitcher M et al. Diagnostic Accuracy of Subjective Features and Physical Examination Tests for Morton Neuroma: A Systematic Review. Foot Ankle Orthop. 2024;9(4):24730114241291055. PubMed ID: 39564390
[4]Thomson L et al. Non-surgical treatments for Morton's neuroma: A systematic review. Foot Ankle Surg. 2020;26(7):736-743. PubMed ID: 31718949
[5]Valisena S et al. Treatment of Morton's neuroma: A systematic review. Foot Ankle Surg. 2018;24(4):271-281. PubMed ID: 29409240


