投球障害肩とは?症状・原因・投球フォーム・リハビリ・復帰の目安を解説

今回は投球障害肩について、症状・検査・投球フォームとの関係・リハビリの考え方をわかりやすく解説していきます。

投球動作の繰り返しによって起こる傷害は、小学生年代では肘に多いと言われています[1]。一方で、高校生[2]やメジャーリーガー[3]では、肩の障害の比重が高くなる傾向が報告されています。

投球障害肩はひとつの病名ではなく、投球によって肩に痛みが出る状態の総称です。そのため、痛みの場所や投球フォーム、負荷のかかり方を整理することが大切になります。

この記事でわかること
✅ 投球障害肩とは何か
✅ 痛みが出やすい場所と代表的な病態
✅ 投球動作のどの場面で負担がかかりやすいか
✅ 肩・肘に負担がかかりやすいフォームの特徴
✅ リハビリと投球復帰の考え方

 

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投球障害肩とは?

投球障害肩(野球肩)とは、投球動作のようなオーバーヘッドスポーツで繰り返し肩を使うことによって生じる、肩の痛みの総称です。

「投球障害肩」は総称であるため、損傷されている組織や痛みの種類など、さまざまな病態が含まれています。

投球障害肩に含まれるケガをわかりやすく説明するため、痛みの出やすい場所で「前方」「外側」「後方」に分けてみました。

あきと

あきと
それぞれの疾患について詳しく知りたい方はリンク先の記事をご覧ください。
この記事では、投球動作とケガの関係について掘り下げていきます。

 

投球障害肩のよくある症状

主症状は、投球時の肩の痛みです。

  • 投げたときに肩が痛い
  • ウォームアップでは軽いが、強く投げると痛い
  • 投げた直後や翌日に痛みが残る
  • 痛みの場所が前方・外側・後方で異なる
  • 球速低下、コントロール低下、違和感として始まることがある
    あきと

    あきと
    投球時の肩痛は、痛みの場所と痛みが出るタイミングが大切なヒントになります。

     

    早めに受診を考えたいサイン

    • 安静にしていても痛い、夜間痛が強い
    • 急に腕が上がらなくなった
    • しびれや脱力感がある
    • 外傷のあとから痛みが出た
    • 球速低下やコントロール低下が急に起きた
    • 休んでも痛みが繰り返す

    このような場合は、腱板損傷や関節唇損傷などの組織損傷が隠れていることもあるため、早めに病院の先生に診てもらいましょう。

     

    投球動作のフェーズ分け

    投球動作は大きく6つのフェーズに分類されています(図1)[4]。

    • ワインドアップ期:投球の開始〜グラブからボールが離れるまで
    • 初期コッキング期:踏み込み足が接地するまで
    • 後期コッキング期:投球肩が最大外旋するまで
    • 加速期:ボールリリースまで
    • 減速期:投球肩が最大内旋するまで
    • フォロースルー期:投球終了まで

     

    投球動作の6フェーズ(ワインドアップ期・初期コッキング期・後期コッキング期・加速期・減速期・フォロースルー期)の流れを示した図
    (図1)投球動作は、ワインドアップ期からフォロースルー期までの6つのフェーズに分けられ、それぞれで肩や肘にかかる負担が異なります。
    あきと

    あきと

    投球フォームをチェックするときや、痛みが出た瞬間を確認するときに、投球フェーズの知識が役立ちます。

     

    痛みの出やすい投球フェーズ

    投球障害肩で確認したいフォームのポイントは肩最大外旋ボールリリースです(図2)。

    1. 肩最大外旋位(MER: maximum external rotation、レイトコッキング期)
      肩最大外旋位の直前には、多方向から肩(肘も)への負担が集中すると言われています[5]。
    2. ボールリリース(減速期の入り口)
      ボールリリースの前後でも、腕が引っ張られる方向に大きな力が加わります[5]。
    投球動作において痛みが出やすいフェーズ(肩最大外旋位とボールリリース)を示した図
    図2:痛みが出やすいといわれている、「肩最大外旋位」と「ボールリリース」の投球フェーズ。文献5(Fleisig et al. 1995 AJSM)より引用しています。

     

    病院で行う検査

    まずは問診や診察で、痛みの場所、いつ痛いか、投球数やポジション、可動域、筋力、肩甲骨の動きなどを確認します。

    組織損傷が疑われる場合には、MRI検査エコー検査レントゲン検査を行い、痛みの原因となっている組織損傷を確認します。

    明らかな断裂などがない場合でも、投球動作に伴う機能障害として評価されることがあります。

     

    投球障害肩と診断されたら

    基本的には保存療法でリハビリを行います。

    損傷組織によってリハビリの内容は異なるため、それぞれのページも参考にしてください。

    また、痛みが強い時期は無理に投げ続けず、投球量の調整やフォームの見直しを並行して行うことが大切です。

    ここでは、投球動作に復帰する際の投球フォームに関するリハビリについて詳しくみていきます。

     

    肩・肘に負担がかかりやすい投球フォーム

    投球フォームについては、いろいろな考え方があります。

    ここでは、肩・肘のケガにつながる可能性があると報告されている代表的なフォームエラーを紹介します。

    3つの代表的なフォームエラー
    ★肘下がり
    ★hyper angulation
    ★手投げ

    それぞれ説明していきます。

    肘下がり

    肩最大外旋位が含まれるレイトコッキング期で、「両肩のラインよりも肘の高さが下がるフォーム」のことを指します(図3)。

    肘下がりは肘内側障害の発生要因になると言われています。肩の記事ではありますが、投球フォームは肩だけでなく肘への負担とも関係するため、フォーム全体として確認することが重要です。

    投球動作のレイトコッキング期における肘下がり(肩のラインより肘が低いフォーム)を示した図
    図3:肘下がりフォームのイメージ図。レイトコッキング期において、両肩を結んだラインよりも肘が低くなるフォームを「肘下がり」と呼びます。

     

    hyper angulation

    肩最大外旋時前後のフェーズで、肩水平外転が増大する現象を指します。

    肩水平外転とは、肩を真横に上げた状態で、肘が肩より後ろに移動する動きのことです。

    インターナルインピンジメントなど肩のケガの要因になると言われています[7]。

    投球動作の肩最大外旋付近で肩水平外転が過度に大きくなるhyper angulationのフォームを示した図
    図4:hyper angulationのイメージ図。肩最大外旋付近で肩水平外転が過度に増大するフォームは「hyper angulation」と呼ばれます。※写真は説明用であり、この選手がhyper angulationとういわけではありません。

    手投げ

    加速期において、肩水平内転(肘が前に突き出す)が増大し、上腕が肩甲骨平面上から逸脱した状態でリリースする現象を指します。

    わかりやすく言うと、下半身や体幹よりも先に、腕だけで前に投げにいってしまうイメージです。

    肩・肘など多くのケガと関連していると言われています。

    投球動作の加速期で肘が前に突き出る手投げフォーム(肩水平内転の増大)を示した図
    図5:手投げのイメージ図。加速期において肘が前に突き出し、肩甲骨平面から逸脱した状態でリリースするフォームを「手投げ」と呼びます。

     

    不良投球フォームの原因

    「肘下がり」「hyper angulation」「手投げ」の背景には、図6のような要因があると考えられています。

    例えば、軸足の不安定さ、股関節や体幹のタイミング不良、踏み込み足の機能不足などが重なると、各フェーズのエラーが次のフェーズに影響しやすくなります。

    投球動作の各フェーズのエラーが連鎖して不良フォームを生じる流れを示した図
    図6:不良フォームの原因となるイメージ図。投球動作では、各フェーズでのエラーが次のフェーズに影響し、不良フォームを連鎖的に生み出します。

     

    フォームを安定させるためのトレーニング例

    軸足・体幹の安定性
    ・軸足のお尻の筋トレ
    ・体幹の筋トレ
    ・片足スクワットなどの荷重トレーニング
    あきと

    あきと
    まずは軸足を安定させ、安定した状態で骨盤をスムーズに前方へ押し出す能力が必要です。
    骨盤・体幹のスムーズな運動
    ・股関節のストレッチ
    ・体幹の回旋運動
    ・タイミングを合わせて体幹回旋を協調的に行う練習
    あきと

    あきと
    軸足で骨盤をスムーズに押し出しながら、安定して使える股関節の可動域が必要です。
    踏み込み足が接地するまでは体幹の回旋を急ぎすぎず、接地と同時に体幹回旋をスタートする意識が大切です。
    踏み込み足の機能
    ・踏み込み足のストレッチ
    ・荷重をかけたトレーニング
    あきと

    あきと
    踏み込んだ足の可動性や安定性も重要です。

     

    投球復帰の目安

    投球復帰を考えるときは、次のような点を確認しながら段階的に進めます。

    • 日常生活で肩の痛みがない
    • 肩の可動域と筋力が十分に戻っている
    • シャドーピッチングや軽いスローイングで痛みが出ない
    • 翌日に痛みが残らない
    • 段階的な投球プログラムを進められている

    フォーム修正だけで急に治るわけではないため、痛みのコントロールと投球量の調整も並行して進めることが大切です。

     

    よくある質問

    痛くても投げてよいですか?

    軽い違和感でも、投げるほど強くなる痛みがある場合は無理をしない方が安全です。痛みの場所やタイミングを確認し、必要に応じて受診を検討しましょう。

    フォームを変えれば必ずよくなりますか?

    フォームは大切な要素ですが、それだけで必ず改善するとは限りません。可動域、筋力、投球量、休養なども一緒に見直すことが大切です。

    MRIは必ず必要ですか?

    必ずしも全員に必要ではありません。診察で評価し、組織損傷が疑われる場合に行うことが多いです。

     

    まとめ

    ここまで、投球障害肩と投球フォームについて書いてきました。

    投球フォームについては考え方がさまざまあります。

    今回はデータに基づいて、肩や肘への負担につながる可能性があるフォームエラーの例を紹介しましたが、フォームを修正するときは選手自身や監督・コーチともよく相談した上で行っていきましょう。

    また、痛みがあるときはフォームだけの問題と決めつけず、必要に応じて医療機関で評価を受けることが大切です。

    あきと

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    参考文献

    [1]Sakata J et al. Physical Risk Factors for a Medial Elbow Injury in Junior Baseball Players: A Prospective Cohort Study of 353 Players. Am J Sports Med. 2017;45(1):135-143. PubMed ID: 27604190

    [2]Shanley E et al. Shoulder range of motion measures as risk factors for shoulder and elbow injuries in high school softball and baseball players. Am J Sports Med. 2011;39(9):1997-2006. PubMed ID: 21685316

    [3]Pollack KM et al. Developing and Implementing Major League Baseball's Health and Injury Tracking System. Am J Epidemiol. 2016;183(5):490-496. PubMed ID: 26874305

    [4]DiGiovine NM et al. An electromyographic analysis of the upper extremity in pitching. J Shoulder Elbow Surg. 1992;1(1):15-25. PubMed ID: 22958966

    [5]Fleisig GS et al. Kinetics of baseball pitching with implications about injury mechanisms. Am J Sports Med. 1995;23(2):233-239. PubMed ID: 7778711

    [6]Davidson PA et al. Rotator cuff and posterior-superior glenoid labrum injury associated with increased glenohumeral motion: a new site of impingement. J Shoulder Elbow Surg. 1995;4(5):384-390. PubMed ID: 8548442

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