
肩の痛みにはさまざまな原因があります。肩の痛みの原因まとめでは、よくある原因を全体像から解説しています。
今回はその中でも、肩インピンジメント症候群について、症状・検査・対処法・リハビリの流れをわかりやすく解説していきます。
肩を上げたときに痛い、ある角度で引っかかる、投げると肩の奥が痛いといった症状がある場合、肩インピンジメント症候群が関係していることがあります。
日常生活でも起こりますし、水泳や投球動作の繰り返しなど、肩を大きく使うスポーツでもみられます。
初期は周囲の組織に炎症が起きていることが多いですが、無理を続けると腱板などの周囲組織に負担がかかりやすくなるため、早めに状態を整理しておくことが大切です。
この記事でわかること
✅ 肩インピンジメント症候群とは何か
✅ よくある症状と起こりやすい場面
✅ 病院で行う検査の概要
✅ 保存療法とリハビリの考え方
✅ 受診を考えたいサイン
こんな症状はありませんか?
・腕を横から上げると肩が痛い
・バンザイの途中や下ろす途中で痛みが出る
・肩の前や横、あるいは後ろに引っかかる感じがある
・投球やサーブ動作で肩の奥が痛い
・一度よくなっても、肩を使うとぶり返しやすい
目次
肩インピンジメント症候群とは?
肩インピンジメント症候群は、肩を動かしたときに腱板や滑液包などの組織に負担がかかり、痛みが出る状態を指します。
「インピンジメント(impingement)」はぶつかる・挟まるような状態を表す言葉ですが、実際には骨だけの問題ではなく、肩の動き方、筋力バランス、姿勢、繰り返しの負荷なども関わります[1]。
肩インピンジメント症候群は、痛みが起こる場所や動きによって大きく2つに分けて考えられます。
- 肩峰下インピンジメント(図1):肩の上側にある肩峰の下で、腱板や滑液包に負担がかかって症状が出るタイプです。
- インターナルインピンジメント(図2・3):投球などで肩を大きく外転・外旋したときに、肩の後上方で関節唇や腱板の関節面側に負担がかかって症状が出るタイプです[2]。
初期の肩インピンジメント症候群では、はっきりした断裂がないことも多く、まずは炎症や過負荷のコントロールが重要です。
ただし、痛みが引いても肩の使い方や負荷のかけ方が変わっていないと再発しやすいため、リハビリで根本的な要因も整えていくことが大切です。


肩インピンジメント症候群が起こりやすいシーン
肩を大きく動かす体操競技、水泳、投球動作の繰り返しなどで起こりやすいです。
また、スポーツだけでなく、腕を繰り返し上げる作業や、肩まわりの筋力・柔軟性・姿勢の影響で日常生活の中でも生じることがあります。
一般的に「肩峰下インピンジメント」は、腕を上げる動作の繰り返しで起こりやすく、「インターナルインピンジメント」は、投球時の外転・外旋位で肩後方に負担が集中しやすいことが知られています[2]。

肩インピンジメント症候群のよくある症状
肩インピンジメント症候群では、次のような症状がよくみられます。
- 肩を上げたときの痛み
- 肩を上げきる途中、または下ろす途中の特定の角度での痛み
- 肩の前・横・後ろに感じる引っかかる感じ/つまる感じ
- 投球やサーブで肩の奥が痛い
- 使った後に痛みが強くなる、ぶり返しやすい
肩峰下インピンジメントでは、腕を横から上げる動作やバンザイ動作で痛みが出やすく、インターナルインピンジメントでは、投球時の肩後方痛や引っかかり感として現れることがあります。
一方で、腱板損傷、関節唇損傷、頚椎由来の症状などでも似た症状が出ることがあるため、長引く場合は自己判断しすぎないことが大切です。原因を広く整理したい方は、肩の痛みの原因まとめも参考にしてみてください。
早めに受診を考えたいサイン
次のような場合は、肩インピンジメント症候群以外の病気や、より強い損傷が隠れていることもあるため、早めに整形外科で相談を検討してください。
- 転倒や接触などはっきりした外傷のあとから痛い
- 痛みが強く、腕が上がらない
- 夜間痛や安静時痛が強い
- 明らかな筋力低下を感じる
- しびれがある
- 腫れ・変形がある
- セルフケアをしても症状が長引く
病院で行う検査
肩インピンジメント症候群は、問診と診察をもとに状態を整理し、必要に応じて画像検査を組み合わせて評価します[1]。
問診では、痛みが出たきっかけ、スポーツ歴、投球歴、どの動きで痛いか、いつから続いているかなどを確認します。
診察では、可動域、痛みの出る角度、押して痛い場所、筋力、肩甲骨の動きなどを確認し、Neerテスト、Hawkinsテスト、HERTテストなどの徒手検査を組み合わせることがあります。
画像検査としては、MRIで腱板損傷や関節唇損傷などを確認したり、エコーで滑液包や腱板周囲の状態を確認したりすることがあります。
「肩の痛み=すべてインピンジメント」とは限らないため、必要に応じて他の疾患との区別を行います。
肩インピンジメント症候群と診断されたら
基本的には保存療法でリハビリを進めることが多いです[1]。
大切なのは、痛みそのものだけでなく、なぜ肩に負担が集まったのかを整理することです。
具体的には、炎症を落ち着かせながら、肩甲骨の動き、胸郭の柔軟性、腱板機能、姿勢、競技フォーム、練習量などを必要に応じて見直していきます。
肩インピンジメント症候群のリハビリテーション
状態によって細かな内容は変わりますが、一般的には次のような流れで進めます。
リハビリのポイント
✅ 患部の炎症を落ち着かせる
✅ 肩甲骨・胸郭も含めて肩の位置や動きを整える
✅ 腱板(インナーマッスル)を中心に肩の安定性を高める
✅ 姿勢やフォーム、練習量も含めて再発しにくい状態を目指す
炎症期(痛みが強い時期)
・必要に応じてアイシングなどで痛みを和らげる
・痛みを我慢したセルフケアは避ける
・肩だけでなく、背中や肩甲骨まわりの動きも整え始める
この時期は、痛みを強く出す動作を無理に続けないことが大切です。アイシングは症状緩和に役立つことがありますが、すべての人に同じように必要とは限りません。
背中・肩甲骨まわりの柔軟性を整えたり、姿勢を見直したりすることも有効なことがあります。ただし、ボールや手で強く押しすぎて痛みを悪化させないよう注意しましょう。
リハビリ前期(痛みが落ち着き、特定の動きで痛む時期)
・肩甲骨まわりや胸郭の動きを改善する
・腱板のトレーニングを少しずつ始める
・普段の姿勢や動作を見直す
この時期は、痛みのない範囲で肩のストレッチや腱板トレーニングを進めます。フォームが難しいことも多いため、可能であれば理学療法士などに確認してもらうと安心です。
「インナーマッスルだけ鍛えればよい」というわけではなく、肩甲骨や体幹との連動も大切です。
リハビリ中期(痛みがかなり減り、可動域も改善してきた時期)
・荷重位のトレーニングを取り入れる
・肩甲骨と体幹の連動を高める
・競技フォームや反復負荷を見直す
この時期には、四つ這い、プッシュアップ系の軽い荷重練習、肩甲骨コントロール練習などを状態に応じて取り入れます。
投球やスイム動作など、競技特有のフォームの影響も見逃せないため、必要に応じて動作チェックも行います。
投球フォームについての解説は、下のページも参考にしてみてください。
リハビリ後期(スポーツ復帰を目指す時期)
・徐々に競技動作を再開する
・練習量を段階的に増やす
・再発予防のためのセルフチェックを続ける
スポーツ復帰は、痛みがないことだけでなく、可動域、筋力、肩の安定性、競技動作での再現痛の有無を見ながら判断します。
特に投球やサーブでは、いきなり元の強度に戻すのではなく、段階的に量と強度を上げていくことが大切です。
スポーツ復帰の目安
肩インピンジメント症候群からの復帰時期は人によって異なりますが、次のような点がひとつの目安になります。
- 日常生活で痛みがない
- 肩の可動域が十分に回復している
- 肩まわりの筋力と安定性が戻っている
- 競技に必要な動きで痛みが再現しない
- 練習量を増やしても症状が悪化しない
復帰を急ぎすぎると再発しやすいため、状態を確認しながら段階的に戻していきましょう。
よくある質問
肩インピンジメント症候群は自然に治りますか?
軽い症状であれば、負荷を調整することで落ち着くこともあります。ただし、肩の使い方や練習量が変わっていないと再発しやすいため、リハビリで原因を整理しておくことが大切です。
冷やすのと温めるのはどちらがよいですか?
痛みが強い直後は冷やすことで楽になることがあります。一方で、こわばりが強い場合には温める方が楽なこともあります。痛みが増える方法は避け、自分に合う方法を選びましょう。
筋トレはしてもよいですか?
痛みを強く出さない範囲であれば、状態に応じたトレーニングを行うことはあります。ただし、痛みを我慢して続けるのは逆効果になることもあるため、メニューの選び方が重要です。
どんなときに病院へ行った方がよいですか?
外傷後に強く痛む場合、腕が上がらない場合、夜間痛が強い場合、しびれがある場合、なかなか改善しない場合は、早めに整形外科で相談することをおすすめします。
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まとめ
ここまで、肩インピンジメント症候群の症状、検査、対処法、リハビリの流れについて解説してきました。
肩インピンジメント症候群は、単に肩を休ませるだけでなく、肩の動き方や負荷のかかり方を見直すことが大切です。
長引く痛み、強い痛み、筋力低下、しびれなどがある場合は、自己判断しすぎず整形外科で相談してみてください。
無理なく段階的にリハビリを進め、再発しにくい肩を目指していきましょう。
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参考文献
[1]Horowitz EH et al. Shoulder Impingement Syndrome. Oper Tech Sports Med. 2023;31(1):150955. PubMed ID: 37003655
[2]Peduzzi L et al. Internal impingement of the shoulder in overhead athletes. Arthroscopy. 2019;35(12):3238-3248. PubMed ID: 31594731


