
この記事では、三角骨障害と診断された、または三角骨障害が疑われる選手・保護者・指導者の方向けに、具体的なリハビリ方法と日常生活・スポーツ復帰の目安を解説します。
三角骨障害の症状・原因・検査・治療方針など、疾患の概要を知りたい方は、まず以下の記事をご確認ください。
また、「足首・足の痛み全体」について知りたい方は、以下の記事も参考になります。
三角骨障害では、足首を強く伸ばす動作で足首の後ろに痛みが出やすくなります。痛みを我慢してつま先立ちやキックを続けるのではなく、足首後方の状態を見ながら段階的に復帰していきましょう。
三角骨障害は、足首の後ろにある三角骨が関係して、足関節後方に痛みが出る状態です。特に、つま先を伸ばす動作、サッカーのキック、バレエのポワント動作、ジャンプの踏み切りや着地などで症状が出やすくなります。
三角骨は足関節後方インピンジメントの原因となることがあり、三角骨の存在や足関節後方の構造が症状に関係することが報告されています[1]。
また、後方インピンジメントはダンサーやサッカー選手など、足関節を反復して強く底屈する競技でみられやすく、後方関節包、長母趾屈筋腱、三角骨などへの反復ストレスが関係するとされています[2]。
そのため、三角骨障害のリハビリでは、痛みを落ち着かせるだけでなく、足首後方の挟み込みを強めないこと、長母趾屈筋腱の滑走性を整えること、底屈動作へ段階的に戻すことが大切です。
目次
三角骨障害リハビリの基本方針
三角骨障害のリハビリで大切なポイントは、以下の4つです。
- 足首後方の痛み・腫れ・炎症を落ち着かせる
- 長母趾屈筋腱や足首後方の柔軟性・滑走性を整える
- 足首・足部を安定させ、つま先立ち動作を段階的に戻す
- 体幹・股関節を含めて、キック・ジャンプ・切り返しで足首後方に負担が集中しにくい動作を身につける
三角骨障害では、痛みが引いたように感じても、つま先立ちやキック動作で再び足首後方に痛みが出ることがあります。リハビリでは、歩行、カーフレイズ、ジョギング、ジャンプ、競技動作の順に、痛みと翌日の反応を確認しながら負荷を戻していきます。
痛み・腫れ・炎症がある時の対処法
足首の後ろに「腫れている」「熱をもっている」「ズキズキ痛む」「つま先を伸ばすと痛い」といった症状がある場合は、まず炎症を強めないように負荷を調整します。
この時期は、痛みを我慢してつま先立ち、キック、ジャンプ、バレエのポワント動作などを続けることは避けましょう。
運動中は我慢できても、翌日に痛みが強くなる場合は負荷が高すぎる可能性があります。
アイシング
目的:足首後方の腫れ・熱感・ズキズキする痛みを落ち着かせることです。
- 氷のう、または氷パックを作ります。
- 足首後方、アキレス腱の両側、内外くるぶしの後方など、痛みや熱感がある部分にアイスパックを当てます。
- 10〜20分程度アイシングを行います。
- 皮膚の感覚が戻り、患部が常温に戻ってから、必要に応じて再度行います。

- 30分以上のアイシングは凍傷のリスクがあるため避けましょう。
- 感覚が鈍い方、皮膚トラブルがある方、寒冷刺激で赤みやかゆみが出る方は注意が必要です。
- アイシングだけで治すのではなく、痛みが落ち着いたら段階的にリハビリを進めましょう。
運動量の調整
目的:足首後方への挟み込みや刺激を減らし、痛みが悪化しにくい状態を作ることです。
- 歩くだけで足首後方が痛い場合:ランニング、ジャンプ、キック動作は控える
- 歩行は可能だが運動後に痛む場合:練習量を減らし、リハビリ中心にする
- つま先立ちで痛い場合:カーフレイズやジャンプは負荷を下げる
- 翌朝に痛みが増える場合:前日の負荷が高すぎる可能性がある
足関節後方インピンジメントでは、活動量の調整、理学療法、必要に応じた注射療法などの保存療法が選択肢として挙げられています[2]。
保存療法で改善しない症候性三角骨に対しては、内視鏡などの低侵襲手術が検討されることもあります[3]。
長母趾屈筋・足首後方を整えるストレッチ/ほぐし
三角骨障害では、足首後方の挟み込みだけでなく、足首の後ろを通る長母趾屈筋腱の滑走性が関係することがあります。長母趾屈筋腱は、足首後方から足の親指へ向かう腱で、つま先立ちや蹴り出し動作で働きます。
ただし、炎症が強い時期に痛い部分を強く押すと、症状が悪化することがあります。痛みが強くならない範囲で行いましょう。
内くるぶし後方のほぐし
目的:内くるぶし後方を通る長母趾屈筋腱周囲の動きを整え、足首後方の負担を減らすことです。
- 内くるぶしの後方を軽く圧迫します。
- 圧迫した状態で、足首を10回ほどゆっくり動かします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。

※足首後方に強い痛みがある場合は、無理に押さないようにしましょう。
外くるぶし後方のほぐし
目的:足首後方の外側から内側へ向かう長母趾屈筋腱周囲の硬さを整え、足首の動きを出しやすくすることです。
- 外くるぶしの後方、アキレス腱との間を軽く圧迫します。
- 圧迫した状態で、足首を10回ほどゆっくり動かします。
- 外くるぶしに沿って、少し上の範囲もほぐします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。

長母趾屈筋腱は足首の後方を通り、親指の動きや蹴り出しに関係します。三角骨障害では、足首後方だけでなく、長母趾屈筋腱の滑走性にも注目しましょう。

足の裏のほぐし
目的:足底の柔軟性を改善し、親指の動きや蹴り出しをスムーズにすることです。
- 足の裏をボールなどに乗せます。
- 痛みが強くない範囲で、足の指をグーパーと10回ほど動かします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。
※痛みが出る部分には、強く当てないように注意しましょう。

足首・足部を安定させる筋トレ
三角骨障害では、足首後方の痛みが落ち着いても、つま先立ちやジャンプで再び痛みが出ることがあります。リハビリでは、足首・足部を安定させながら、つま先立ち動作を段階的に戻していきます。
アーチの安定:ショートフットエクササイズ
目的:足部アーチを安定させ、立位や歩行時に足首・足部がぐらつきにくい状態を作ることです。
- イスに座り、足の裏全体を地面につけます。
- 足の指はリラックスさせます。
- 踵と母趾球を近づけるように意識します。
- 足の指を丸めずに、足の甲が少し持ち上がる感覚を作ります。
- 5秒キープ × 10回 × 2〜3セット行います。
※うまくできると、足の裏の筋肉を使っている感覚が出てきます。

- 足の指を強く握り込まないようにしましょう。
- 土踏まずを無理に高くするのではなく、足裏で地面を軽くつかむ感覚を意識します。
- 痛みなくできるようになったら、立位でも行っていきます。
座位カーフレイズ
目的:足首後方への負担を抑えながら、つま先立ち動作を再開する準備を行うことです。
- 太もも、すね、足の第2趾のラインがまっすぐになるように座ります。
- 足の指はリラックスさせ、母趾球に体重を乗せます。
- 足首後方に痛みが出ない範囲で、踵をゆっくり持ち上げます。
- 上げた位置で3秒キープし、ゆっくり下ろします。
- 10回 × 2〜3セット行います。

立った状態で痛みが出る場合は、まず座位カーフレイズから始めましょう。足首後方のつまり感や痛みが出ない範囲で、少しずつ負荷を上げていきます。
立位カーフレイズ
目的:体重をかけた状態で、つま先立ち動作と足首・足部の安定性を高めることです。
- 足を肩幅に開き、つま先をまっすぐ前に向けて立ちます。
- 足の指はリラックスさせ、母趾球に体重を乗せます。
- 足首後方に痛みやつまり感が出ない範囲で、踵をゆっくり持ち上げます。
- 上げた位置で3秒キープし、ゆっくり下ろします。
- 10回 × 2〜3セット行います。

- 踵を上げすぎて足首後方に痛みが出る場合は、可動域を小さくしましょう。
- 痛みがある状態で片脚カーフレイズへ進まないようにしましょう。
- 翌日に痛みが増える場合は、回数やセット数を減らしましょう。
体幹・股関節を使うリハビリ
三角骨障害では、足首だけを見ていると再発を繰り返すことがあります。キック、ジャンプ、切り返し動作では、体幹・股関節・膝・足首・足部が連動して動くため、体幹や股関節の安定性も重要です。
体幹や股関節が不安定だと、接地時や踏み切り時に足首へ過剰な負担がかかり、足関節後方の痛みにつながることがあります。
ドローイン
目的:体幹を安定させ、下肢の動きをコントロールしやすくすることです。
- 仰向けで寝て、膝を90°程度曲げます。
- ゆっくり息を吐きます。
- 息を吐くのと同時に、お腹を軽くへこませます。
- お尻の穴を軽く締めるように意識します。
- リラックスして息を吸い、同じ動きを繰り返します。
- 20回程度行います。

バードドッグ
目的:体幹を安定させたまま、股関節と肩まわりを連動して使う練習です。
- 四つばいの姿勢から始めます。
- 肩の真下に手、股関節の真下に膝がくるようにします。
- お腹を軽くへこませ、体幹を安定させます。
- 対角線上の手と足をゆっくり持ち上げます。
- 上げた手と足を前後に引っ張られるように伸ばします。
- 3秒キープ × 10回 × 2〜3セット行います。

膝つきプランク
目的:体幹を安定させ、ランニングやジャンプで下肢に余計な負担がかからない姿勢を作ることです。
- 肘、膝、つま先で体を支えます。
- 背骨をまっすぐにし、骨盤が下がらないようにします。
- お腹を軽くへこませた状態でキープします。
- 10秒キープ × 10回 × 1〜3セット行います。
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患部外トレーニングの考え方
足首後方に痛みがある時期でも、痛みを悪化させない範囲で、患部外のトレーニングを行うことは大切です。
- 上半身の筋力トレーニング
- 体幹トレーニング
- 股関節まわりの筋力トレーニング
- 足首後方に痛みが出ない範囲での自転車エルゴメーター
- 水中歩行など、足首への負担が少ない運動
ただし、足首を強く伸ばす動作や、つま先立ちを繰り返す種目では痛みが出ることがあります。患部外トレーニングであっても、足首後方の痛みが出る場合は方法を調整しましょう。
痛みがある時に避けたい動き
三角骨障害では、足首を強く底屈する動作で痛みが出やすくなります。痛みを我慢して運動を続けると、症状が長引くことがあります。
- 痛みを我慢したつま先立ち
- 強い底屈ストレッチ
- サッカーの強いキック反復
- ジャンプや着地の反復
- バレエのポワント動作
- 坂道ダッシュ
- 足首後方を強く押すマッサージ
- 痛みがある状態での片脚カーフレイズ
特に、練習中は我慢できても、翌日に痛みが強くなる場合は負荷が高すぎる可能性があります。運動中の痛みだけでなく、翌日の反応も確認しましょう。
日常生活復帰・スポーツ復帰の目安
復帰時期は、痛みの強さ、競技種目、練習量、足首後方のつまり感、キックやジャンプの有無によって異なります。ここでは、一般的な目安を紹介します。
日常生活復帰の目安
- 歩行時に足首後方の痛みがない、または軽い
- 階段昇降で痛みが強くならない
- 足首後方の腫れや熱感が落ち着いている
- 軽いつま先立ちで痛みが強くならない
- 日常生活後に翌日の痛みが増えない
ランニング再開の目安
- 歩行で痛みがない
- 両脚カーフレイズが痛みなくできる
- 足首を軽く底屈しても痛みが強くならない
- 軽いジョギング後、翌日に痛みが増えない
- ランニング中に足首後方のつまり感が強くならない
スポーツ復帰の目安
- 片脚カーフレイズで痛みが出ない
- ジャンプ・着地で足首後方に痛みが出ない
- ダッシュや切り返し動作で痛みが出ない
- キック動作で足首後方の痛みやつまり感が出ない
- 競技練習後、翌日に痛みや腫れが増えない
三角骨障害の復帰では、「つま先立ちができるか」「キックやジャンプで足首後方が詰まらないか」「翌日に悪化しないか」を確認しながら進めましょう。
再発予防のポイント
三角骨障害は、痛みが引いても、急にキック・ジャンプ・つま先立ち動作を増やすと再発することがあります。再発を防ぐためには、足首後方のケアだけでなく、練習量や動作の見直しも重要です。
- 急にキック練習やジャンプ練習を増やさない
- つま先立ちや底屈動作を段階的に戻す
- 足首後方に違和感が出たら早めに負荷を調整する
- 長母趾屈筋腱周囲の柔軟性を保つ
- ショートフットエクササイズで足部アーチを安定させる
- カーフレイズで足首・足部の安定性を維持する
- 体幹・股関節を安定させ、キックやジャンプ時の足首への負担を減らす
症候性三角骨に対する低侵襲手術のシステマティックレビューでは、保存療法で改善しない症例に対する手術療法の成績やスポーツ復帰が検討されています[3]。
ただし、すべての人に手術が必要なわけではありません。痛みが長引く場合や競技復帰に支障がある場合は、医療機関で相談しましょう。
医療機関に相談した方がよい症状
以下のような症状がある場合は、三角骨障害以外の障害や、より慎重な対応が必要な状態が隠れている可能性があります。
- 外傷後から強い足首後方の痛みが続いている
- 歩くのが難しいほど痛い
- 足首後方に強い腫れや熱感がある
- 足のしびれや感覚の異常がある
- つま先立ちができない
- 足首を伸ばすと強い詰まり感や鋭い痛みがある
- 数週間たっても痛みが改善しない
- 運動を再開するとすぐに痛みが戻る
このような場合は、自己判断でリハビリを続けず、整形外科やスポーツ医療に詳しい専門家へ相談してください。
似た症状を起こす関連疾患
足首後方の痛みは、三角骨障害以外でも起こることがあります。痛みの場所、発症の仕方、動作との関係によって考えられる疾患が異なります。
- 長母趾屈筋腱炎:親指を曲げる動きや蹴り出しで足首後方〜足底に痛みがある場合に注意
- 足関節後方インピンジメント:足首を強く伸ばす動作で後方に痛みやつまり感が出る場合に注意
- アキレス腱炎:アキレス腱そのものや踵に近い部分に痛みがある場合に注意
- 足関節捻挫後の痛み:捻挫後に足首後方や外側の痛みが残る場合に注意
FAQ
三角骨障害は完全に休んだ方がよいですか?
痛みや腫れが強い時期は、つま先立ち、キック、ジャンプなどの負荷を減らす必要があります。ただし、長期間何もしないと足首・足部の筋力や動作の感覚が低下することがあります。痛みを悪化させない範囲で、足部や体幹のリハビリを進めることが大切です。
三角骨障害でストレッチやほぐしはしてもよいですか?
長母趾屈筋腱周囲や足底の軽いほぐしは有効な場合があります。ただし、足首後方の痛みが強い部分を直接強く押したり、足首を強く底屈するストレッチを行ったりすることは避けましょう。翌日に痛みが増える場合は、強さや時間を減らしてください。
カーフレイズはいつから始めてもよいですか?
痛みが強い場合は座位カーフレイズから始め、痛みが落ち着いてきたら立位カーフレイズへ進めます。片脚カーフレイズは負荷が高く、足首後方の挟み込み感が出やすい場合があるため、両脚で痛みなくできるようになってから行いましょう。
ランニングはいつ再開できますか?
歩行や階段で痛みがなく、両脚カーフレイズが痛みなくできる状態が目安になります。再開後は短時間のジョギングから始め、翌日の痛みや足首後方のつまり感を確認しながら少しずつ増やします。
サッカーのキックやジャンプはいつ再開できますか?
片脚カーフレイズ、軽いジャンプ、ダッシュで痛みが出ず、翌日に悪化しない状態が目安です。キック動作は、軽いインサイドキックなどから始め、強いシュートやロングキックは段階的に戻しましょう。
手術が必要になることはありますか?
多くの場合は、運動量の調整、リハビリ、必要に応じた装具や注射などの保存療法から行います。ただし、保存療法で改善しない症候性三角骨では、手術療法が検討されることもあります[3]。痛みが長引く場合や競技復帰に支障がある場合は、医療機関で相談しましょう。
まとめ
三角骨障害のリハビリでは、足首後方の痛みを落ち着かせるだけでなく、長母趾屈筋腱の滑走性、足首・足部の安定性、体幹・股関節の使い方を整えながら、段階的にスポーツ動作へ戻していくことが大切です。
特に重要なのは、痛みを我慢しすぎず、足首を強く伸ばす動作へ少しずつ戻していくことです。運動中の痛みだけでなく、翌日の痛みやつまり感も確認しながらリハビリを進めていきましょう。
痛みが長引く場合、強い腫れや熱感がある場合、つま先立ちや競技動作が難しい場合は、自己判断で進めずに医療機関へ相談してください。
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参考文献
- Ráfare AL, et al. Os trigonum: a discussion of its role in posterior ankle impingement syndrome and a meta-analysis of its prevalence. Surg Radiol Anat. 2024;46(7):1137-1143. PubMed ID: 38780789. PubMed
- Ishibashi MA, et al. Posterior Ankle Impingement Syndrome. Clin Podiatr Med Surg. 2023;40(1):209-222. PubMed ID: 36368844. PubMed
- Anastasio AT, et al. The Utilization of Minimally Invasive Surgery for Os Trigonum Syndrome: A Systematic Review. Am J Sports Med. 2024;52(8):2168-2177. PubMed ID: 38348483. PubMed







