
今回は足底腱膜炎(Plantar fasciitis)の対処法について解説します。
足底腱膜炎は、足の裏や踵の痛みの原因として頻度が高く、ランニング障害の中でも多くみられる疾患のひとつです[1]。
特に「朝の一歩目が痛い」「歩き始めに踵の内側が痛い」「走ると足裏が痛い」といった症状で悩む方が多いです。
踵には、筋肉・腱膜・神経・脂肪体など多くの組織があり、体重もかかりやすいため、痛みの原因を整理して対応することが大切です。
この記事では、足底腱膜炎の症状、原因、検査、体外衝撃波治療、リハビリ、スポーツ復帰の目安について解説します。
- 足底腱膜炎とは何か
- 足底腱膜炎が起こりやすい場面
- 足底腱膜炎のよくある症状
- 病院で行う検査
- 体外衝撃波治療の考え方
- 足底腱膜炎のリハビリの流れ
- スポーツ復帰の目安
- インソールやヒールカップの活用
踵の痛みには、足底腱膜炎以外にも、踵部脂肪体炎、シーバー病、アキレス腱炎などがあります。痛む場所や痛みが出る動作によって原因が異なるため、症状が続く場合は医療機関で確認しましょう。
足の痛みについて知りたい方は、足部・足関節の痛みをまとめた記事も参考にしてみてください。
目次
足底腱膜炎とは?
足底腱膜炎とは、足の裏にある足底腱膜の踵骨付着部に痛みが出ている状態をさします(図1)。
成人の慢性的な踵の痛みの原因として多く、若いスポーツ選手だけでなく、40〜50代以降の一般の方にもみられます[2]。
「炎症」という名前がついていますが、慢性的な足底腱膜炎では、単純な炎症だけでなく、足底腱膜への負荷の蓄積、腱膜の肥厚、柔軟性低下、足部機能の低下などが関係することがあります。

足底腱膜は、足のアーチを支え、歩く・走る・ジャンプする動作で足部を安定させる役割があります。
荷重によって、足底腱膜には伸ばされるストレスと圧迫されるストレスの両方が加わります。そのため、負荷が蓄積すると痛みが出やすくなります[3]。
また、踵の内側から足裏へ向かう神経が痛みに関係することもあります。足底腱膜だけでなく、神経症状や踵部脂肪体の痛みとの見極めも大切です。

踵の骨棘は痛みの原因になる?
慢性的に足底腱膜への負荷が高い場合、図3のように足底腱膜の踵骨付着部に骨棘(骨の出っ張り)がみられることがあります。
ただし、骨棘があるからといって、必ず足底腱膜炎の痛みの原因になるわけではありません。骨棘と症状が一致しないこともあるため、画像所見だけで判断しすぎないことが大切です[4]。

足底腱膜炎を起こしやすいシーン
スポーツ選手では、ランニング量が多い陸上長距離、バスケットボール、サッカーなどで起こりやすいです。
ランナーでは足底腱膜炎が比較的多い障害のひとつとして報告されています[1]。
また、一般の方では、体重が多いことや、長時間の立ち仕事、歩行量の増加、ランニング習慣などが関係することがあります[1,5]。
足のアーチが低下している場合、ふくらはぎが硬い場合、踵への衝撃が大きい動作が多い場合も、足底腱膜への負担が増えやすくなります。
足底腱膜炎のよくある症状
- 朝起きて歩きはじめると、足の裏や踵が痛い
- 足の裏を押すと痛い(図4)
- 足裏が地面に当たると痛い
- 歩行時の蹴り出しで痛い
- 走ると痛い
- 運動後や翌朝に痛みが強くなる

早めに受診した方がよいサイン
足底腱膜炎は自然に軽快する場合もありますが、他のケガや神経症状が隠れていることもあります。
- 歩くのがつらいほど踵が痛い
- 痛みが数週間続いている
- 安静にしていても痛い
- 強い腫れや内出血がある
- しびれ、灼熱感、感覚の鈍さがある
- ジャンプや着地で急に強い痛みが出た
- 成長期の子どもで踵の痛みが続いている
- 踵の骨折や疲労骨折が心配な痛みがある
踵部脂肪体炎、シーバー病、踵骨疲労骨折、足根管症候群などは、足底腱膜炎と似た症状になることがあります。痛みが続く場合は、自己判断せず医療機関で確認しましょう。
病院で行う検査
症状が軽度の場合は、問診や診察のみで判断されることもあります。
画像検査を行う場合は、エコー検査で足底腱膜の厚みや炎症の有無を確認し、レントゲン検査で骨棘や骨の状態を確認します。
痛みが強い場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合には、MRI検査で筋肉・腱膜・骨の状態を詳しく確認することがあります。
一般的には、問診、触診、荷重時痛、足底腱膜の伸長時痛、神経症状をみるTinelテストなどを行います。

足底腱膜炎と診断されたら
足底腱膜炎は、基本的には保存療法で対応します。
保存療法では、痛みのコントロール、足底腱膜やふくらはぎの柔軟性改善、足部の安定性改善、インソールやヒールカップの活用などを行います。
難治例では、体外衝撃波治療が検討されることがあります。
非常に長期間痛みが続き、保存療法で改善しない場合には、手術療法が検討されることもあります。ただし、手術の適応は限定的であり、専門医とよく相談して判断する必要があります。
体外衝撃波治療(extracorporeal shock wave therapy:ESWT)
体外衝撃波治療は、足底腱膜炎に対して行われることがある治療法です。
衝撃波には「収束型」と「拡散型」があり、機器や治療方法は医療機関によって異なります。
日本では、難治性の足底腱膜炎に対して保険適用となる場合があります。ただし、適応や費用、実施施設には条件があるため、治療を希望する場合は医療機関で確認しましょう。
体外衝撃波治療は、すべての足底腱膜炎に必要な治療ではありません。まずはリハビリや負荷管理を行い、症状が長引く場合の選択肢として考えるとよいでしょう。
足底腱膜炎のリハビリテーション
足底腱膜炎のリハビリのポイントは、「足底腱膜とふくらはぎの柔軟性改善」、「アーチの形状を整えること」、「足部・足関節周囲の安定性を高めること」です。
痛みがある時期は、無理に走るよりも、痛みの反応を確認しながら段階的に負荷を上げることが大切です。
具体的なリハビリメニューは、以下の記事でも紹介しています。
リハビリの期間は目安です。実際には、痛み、圧痛、朝の一歩目の痛み、運動後・翌日の反応を確認しながら進めましょう。
- 朝の一歩目の痛みが悪化していない
- 足底腱膜の圧痛が悪化していない
- リハビリ中・リハビリ後に痛みが増えていない
- 当日夜・翌日朝に痛みが増えていない
- 腫れや熱感が強くなっていない
- 歩行やランニングフォームが崩れていない
炎症期:足裏が腫れている、ストレッチで痛い時期
- 痛みが出る動作を一時的に減らす
- 必要に応じてアイシングを行う
- 足底腱膜、ふくらはぎ、ハムストリングスをほぐす
- 荷重なしで足趾・足首周囲の筋トレを行う
- 体幹とお尻の筋肉を鍛える
リハビリ前期:ストレッチ・つま先立ちが痛くない時期
- 足底腱膜、ふくらはぎ、ハムストリングスの柔軟性改善を継続する
- 足裏の外側、くるぶし周囲をほぐし、アーチの形状を整える
- 立位でのカーフレイズなど、荷重位での筋トレを開始する
- スクワット、片脚スクワット、ランジなどを段階的に行う
- 体幹とお尻の筋肉を鍛える
リハビリ中期:ジャンプ・ケンケンが痛くない時期
- ホップなどのジャンプエクササイズを開始する
- ジャンプ着地で足首・足部を安定させる
- ジョギングを短い距離から開始する
- 直線のランニングスピードを少しずつ上げる
- 運動後と翌朝の痛みを確認する
ジョギングを開始する前に、以下を確認しておきましょう。
- 下腿前傾角度に大きな左右差がない
- 片足カーフレイズが痛みなく行える
- ケンケンの着地で踵が安定している
- 朝の一歩目の痛みが悪化していない
- 足底腱膜の圧痛が悪化していない
リハビリ後期:ランニングしても痛くない・腫れない時期
- スプリント、ステップワーク、ジャンプを段階的に行う
- アジリティトレーニングを開始する
- リアクションドリルや対人動作へ進める
- 運動後の足底腱膜の硬さや痛みを確認する
- 翌朝の一歩目の痛みを確認する
復帰期:強度を上げても痛くない・腫れない時期
- 1〜2週間かけて段階的に練習参加を増やす
- 練習後と翌朝の痛みを確認する
- 足底腱膜の硬さをチェックする
- インソールやシューズを調整する
- 再発予防のため、ふくらはぎ・足部トレーニングを継続する
足底腱膜炎とインソール

よくある質問
足底腱膜炎は自然に治りますか?
軽症であれば、負荷を調整することで改善することもあります。ただし、痛みが数週間続く場合や、朝の一歩目の痛みが強い場合は、リハビリやインソールなどを含めて対応した方がよいことがあります。
足底腱膜炎でも走ってよいですか?
痛みの程度によります。走った後や翌朝に痛みが強くなる場合は、ランニング量を減らす必要があります。痛みが落ち着き、ケンケンやカーフレイズで痛みが出ない状態を確認してから、段階的に再開しましょう。
朝の一歩目が痛いのはなぜですか?
寝ている間に足底腱膜やふくらはぎが硬くなり、朝の歩き始めに急に伸ばされることで痛みが出やすくなります。朝の痛みは足底腱膜炎でよくみられる特徴のひとつです。
インソールは必要ですか?
必ず必要ではありませんが、足のアーチが崩れやすい方や、踵への衝撃が強い方では役立つことがあります。足に合わないインソールは逆に痛みを増やす場合もあるため、可能であれば専門家に相談しましょう。
体外衝撃波治療は効果がありますか?
難治性の足底腱膜炎に対して、体外衝撃波治療が選択されることがあります。ただし、すべての人に必要な治療ではありません。保存療法を行っても長期間改善しない場合に、医師と相談して検討しましょう。
スポーツ復帰までどれくらいかかりますか?
症状の強さや競技種目によって異なります。数週間で復帰できる場合もありますが、慢性化している場合は数か月かかることもあります。期間だけでなく、朝の痛み、圧痛、ジャンプやランニング後の反応を確認しながら進めましょう。
まとめ
ここまで、足底腱膜炎の方針やリハビリテーションについて解説しました。
足底腱膜炎は、足底腱膜の踵骨付着部に痛みが出る状態で、朝の一歩目の痛みが特徴的です。
慢性例では、炎症だけでなく、足底腱膜の硬さ、アーチの機能低下、ふくらはぎの柔軟性低下、荷重の偏りなどが関係します。
リハビリでは、痛みを悪化させない範囲で、足底腱膜とふくらはぎの柔軟性、足部の安定性、ランニングやジャンプ動作の負荷管理を行うことが大切です。
痛みが長引く場合や、歩くのがつらい場合は、医療機関で原因を確認しながら進めていきましょう。
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参考文献
[1]Taunton JE et al. A retrospective case-control analysis of 2002 running injuries. Br J Sports Med. 2002;36(2):95-101. PubMed ID: 11916889
[2]Neufeld SK et al. Plantar fasciitis: evaluation and treatment. J Am Acad Orthop Surg. 2008;16(6):338-346. PubMed ID: 18524985
[3]Latt LD et al. Evaluation and Treatment of Chronic Plantar Fasciitis. Foot Ankle Orthop. 2020;5(1):2473011419896763. PubMed ID: 35097359
[4]Ahmad J et al. Treatment of Plantar Fasciitis With Botulinum Toxin. Foot Ankle Int. 2017;38(1):1-7. PubMed ID: 27630253
[5]Riddle DL et al. Risk factors for Plantar fasciitis: a matched case-control study. J Bone Joint Surg Am. 2003;85(5):872-877. PubMed ID: 12728038



