
今回は内果疲労骨折(medial malleolar stress fracture)の対処法について解説します。
内果疲労骨折は、内くるぶし周囲の痛みとして発症する疲労骨折です。サッカー、陸上競技、バスケットボール、器械体操など、ランニングやジャンプを繰り返す競技でみられます[1][4]。
内果疲労骨折は難治性の疲労骨折に分類されることがあり、状態によっては手術療法が検討される場合もあります[1]。
一方で、早期に発見できた場合は保存療法で治癒を目指せることもあります。大切なのは、痛みを我慢して運動を続けないことと、医師の指示に沿って段階的にリハビリを進めることです。
- 内果疲労骨折とはどのようなケガか
- 内くるぶし周囲に出やすい症状
- 病院で行う検査
- 保存療法・手術療法の考え方
- 競技復帰までのリハビリの流れ
足首・足部の痛み全体について知りたい方は、関連する足部・足関節の記事もあわせて確認してみてください。
目次
内果疲労骨折とは?
内果疲労骨折とは、内くるぶしにある脛骨の内果に生じる疲労骨折のことをさします(図1)。
疲労骨折は、1回の大きな外力ではなく、ランニングやジャンプなどの負荷が同じ部位に繰り返しかかることで、骨に小さな損傷が蓄積して起こります。
内果疲労骨折は若い男性アスリートに多く報告されており、治療方針は骨折の進行度や競技レベル、復帰時期などをふまえて判断されます[1]。

内果疲労骨折では、内果部分に斜め方向の骨折線が入ることがあります(図2)。ただし、疲労骨折の初期段階ではレントゲン検査で確認しにくい場合もあるため、症状が疑わしい場合にはMRI検査やCT検査が検討されます[3][5]。

内果疲労骨折を起こしやすいシーン
内果疲労骨折は、ランニングやジャンプ、切り返し動作を繰り返す競技で発生しやすいとされています。
報告では、サッカー、陸上競技、バスケットボール、器械体操などの選手にみられます[4]。
特に、足首の内側へ繰り返し負担がかかる動作、足首の可動域制限がある状態での反復ジャンプ、片脚着地、切り返し動作などでは注意が必要です。

内果疲労骨折のよくある症状
- 内くるぶし周囲、足首の内側が痛い
- 内くるぶしを押すと痛い
- ランニングやジャンプなどの衝撃で痛い
- 足首を曲げて体重をかけると痛い
- 歩いていて痛い
- 朝の歩き始めに痛みが強い
ランニングやジャンプなどで足首に衝撃が加わったときの内くるぶし周囲の痛みが特徴的です。
また、内くるぶしを押したときの痛みや、朝の歩き始めの痛みが強くなることもあります。
歩行時にも痛みがある場合、押した痛みが日に日に強くなる場合、腫れが強い場合は、疲労骨折が進行している可能性もあるため、早めに整形外科で相談しましょう。

足関節内側の痛みには、後脛骨筋腱炎、外脛骨障害などもありますのであわせて確認してみてください。
病院で行う検査
病院では、まず問診で痛みが出たきっかけや練習量、痛みの出る動作を確認します。
そのうえで、触診で内くるぶし周囲の圧痛を確認し、荷重時の痛みや片脚動作での痛みなどを評価します。
画像検査では、レントゲン検査で骨折線の有無を確認します。
ただし、疲労骨折の初期ではレントゲンに写りにくいこともあるため、MRI検査で骨の中の炎症を確認したり、CT検査で細かい骨折線を確認したりすることがあります[5]。

内果疲労骨折と診断されたら
内果疲労骨折と診断された場合、骨折の状態によって保存療法または手術療法が検討されます。
疲労骨折が初期段階で、骨折線が明らかでない場合や転位がない場合は、保存療法で癒合を目指すことがあります。
一方で、完全骨折に近い状態、骨折線が明らかな状態、転位がある場合、早期復帰を強く希望する競技選手では、手術療法が検討されることがあります[1][5]。
どちらの治療を選択する場合でも、内果に負担がかかってしまった原因を改善するリハビリが重要です。
内果疲労骨折のリハビリテーション
リハビリのポイントは、「荷重負荷のコントロール」、「足首周りの動きの改善」、「足首の安定性の改善」です。
内果疲労骨折では、まず骨の癒合を最優先に考える必要があります。
そのため、痛みを我慢してトレーニングを進めるのではなく、医師からの荷重許可や画像上の回復状況を確認しながら、段階的に運動負荷を上げていきます。
- 内くるぶしの押した痛みが悪化していない
- 歩行時痛が悪化していない
- リハビリ後や翌日朝に痛みが強くなっていない
- 医師から荷重や運動開始の許可が出ている
リハビリの負荷を上げたあとに、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の痛みが悪化する場合は、負荷が高すぎる可能性があります。
非荷重期:体重をかけない時期
- 骨の癒合を妨げない
- 痛みや腫れを悪化させない
- 足首周囲や体幹の機能低下を最小限にする
この時期は、医師から荷重制限の指示が出ている場合があります。指示された範囲を超えて体重をかけないようにしましょう。
- LIPUS、ESWTなどの骨折治療が検討される場合があります
- 足首周囲のほぐし
- 荷重なしでの足趾トレーニング
- 体幹とお尻の筋力トレーニング
部分荷重期:部分荷重が許可された時期
- 痛みを悪化させずに足首へ少しずつ負荷を戻す
- 足首周囲の柔軟性を改善する
- 歩行再開に向けて筋力を保つ
- 足首周囲のほぐし
- 座位でのカーフレイズ
- 足首のチューブトレーニング
- 体幹とお尻の筋力トレーニング
荷重開始期:歩行の許可が出た時期
- 歩行時の痛みを確認する
- 足首の可動域を左右差なく戻す
- 体重をかけた筋力トレーニングを再開する
- 足首周囲のほぐし
- 立位でのカーフレイズ
- スクワット
- ランジ
- 片脚スクワット
- 体幹とお尻の筋力トレーニング
この時期までに、足関節の可動域の左右差をできるだけ少なくしておきましょう。
ジョギング開始期:ジョギングの許可が出た時期
- 足首の安定性を高める
- ジャンプ着地での痛みを確認する
- 段階的に走行負荷を戻す
- ホップなどのジャンプエクササイズ
- ジョギング
- 直線ランニングのスピードアップ
ジョギングを開始する前に、以下を目安に確認しましょう。
- 内くるぶしの圧痛がない、または悪化していない
- 医師からジョギング開始の許可が出ている
- 片足カーフレイズが30回できる
- ケンケンの着地で踵が安定している
リハビリ後期:ステップワーク・部分練習開始許可が出た時期
- 競技特有の動作に慣れる
- 切り返しやジャンプ着地での足首の安定性を高める
- 運動後の痛みや腫れを確認する
- スプリント
- ステップワーク
- ジャンプトレーニング
- リアクションドリル
- 対人動作に近い練習
復帰期:全体練習への復帰を目指す時期
- 練習量を段階的に戻す
- 再発を防ぐ
- 復帰後の痛み・腫れ・圧痛を管理する
復帰時は、いきなり全ての練習に参加するのではなく、1〜2週間ほどかけて段階的に練習量を増やしていきましょう。
特に、ランニング量、ジャンプ回数、切り返し動作、対人プレーは負荷が上がりやすいため、慎重に進めることが大切です。
内果疲労骨折で注意したいこと
痛みを我慢して走り続けない
内果疲労骨折は、初期には「少し痛いけど走れる」程度の症状で始まることがあります。
しかし、痛みを我慢して運動を続けると、骨折線が進行し、治療期間が長くなる可能性があります。
画像での確認を軽視しない
疲労骨折では、症状の改善だけでなく、骨の状態を確認することが大切です。
特に内果疲労骨折は難治性に分類されることがあるため、復帰の判断は自己判断ではなく、医師やリハビリ担当者と相談しながら進めましょう。
再発予防には足首の安定性が重要
骨が癒合しても、足首の可動域制限や着地時のぐらつきが残っていると、再び内果へ負担が集中する可能性があります。
復帰後も、カーフレイズ、片脚バランス、ジャンプ着地、股関節・体幹の安定性トレーニングを継続しましょう。
FAQ
内果疲労骨折は自然に治りますか?
初期の疲労骨折では、荷重制限や運動休止などの保存療法で治癒を目指せる場合があります。ただし、完全骨折に近い状態や転位がある場合は、手術療法が検討されることもあります[1]。
レントゲンで異常がなければ大丈夫ですか?
必ずしも大丈夫とは言い切れません。疲労骨折の初期ではレントゲンに写りにくいことがあります。内くるぶしの痛みや圧痛が続く場合は、MRI検査やCT検査が検討されます[5]。
いつから走ってもよいですか?
走り始める時期は、痛みの状態、圧痛の有無、画像上の回復、医師の許可によって決まります。痛みが軽くなっただけで自己判断で再開するのは避けましょう。
復帰後に再発を防ぐには何が大切ですか?
足首の可動域、片脚での安定性、ジャンプ着地の安定性、運動後の圧痛チェックが大切です。復帰後も練習量を急に増やさず、段階的に負荷を上げましょう。
まとめ
ここまで、内果疲労骨折の特徴、検査、治療方針、リハビリテーションについて解説してきました。
内果疲労骨折は、内くるぶし周囲に痛みが出る難治性の疲労骨折です。
初期であれば保存療法で治癒を目指せる場合もありますが、状態によっては手術療法が検討されることもあります。
大切なのは、痛みを我慢して走り続けないこと、医師の指示に沿って荷重や運動を再開すること、そして復帰後も足首の安定性を高めるリハビリを継続することです。
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参考文献
[1]Irion V et al. The treatment and outcomes of medial malleolar stress fractures: a systematic review of the literature. Sports Health. 2014;6(6):527-530. PubMed ID: 25364485
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25364485/
[2]Lee HS et al. Medial malleolar stress fracture resulting from repetitive stress caused by lateral ankle instability: A case report. Medicine (Baltimore). 2019;98(5):e14311. PubMed ID: 30702607
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30702607/
[3]Iwamoto J et al. Stress fractures in athletes: review of 196 cases. J Orthop Sci. 2003;8(3):273-278. PubMed ID: 12768465
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12768465/
[4]Lempainen L et al. Medial malleolar stress fracture in athletes: diagnosis and operative treatment. Scand J Surg. 2012;101(4):261-264. PubMed ID: 23238501
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23238501/

