鵞足炎の症状・原因・リハビリ|膝内側の痛みを解説

今回は鵞足炎(がそくえん)について、スポーツ整形・リハビリテーションの視点から解説します。

鵞足炎は、膝の内側から少し下に痛みが出る状態のひとつで、ランニングや階段、スポーツ動作などで症状が強くなることがあります。

この記事では、鵞足炎の症状と受診の目安、検査、治療、リハビリテーション、ランニングやスポーツへの復帰までを分かりやすく整理します。

この記事でわかること

  • 鵞足炎で痛みが出やすい場所と動作
  • 膝の内側が痛いときの症状確認と受診の目安
  • 病院で行う検査と治療の考え方
  • リハビリの進め方とスポーツ復帰のポイント

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鵞足炎とは

鵞足(がそく)とは、膝の内側にある縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの腱が、すねの骨(脛骨)の内側に集まって付着する部位です(図1)。

その形が「ガチョウの足」に似ていることから、鵞足と呼ばれています。

鵞足炎を説明するイラスト。縫工筋、薄筋、半腱様筋の3筋の付着部を鵞足と呼びます。
図1:鵞足炎が発症する「鵞足」の解剖イメージ図。

 

あきと

鵞足は膝関節そのものより少し下にあります。「膝の内側が痛い」と感じても、実際にどこが痛いのかを確認することが大切です。

この鵞足部には腱だけでなく、その深部に摩擦を減らすための滑液包があります。一般に「鵞足炎」と呼ばれていますが、実際には腱だけの炎症とは限らず、鵞足滑液包炎や周囲組織を含む鵞足部痛として捉えた方がよい場合があります[4]。

症状にはランニングや階段などの反復負荷が関係することがありますが、原因をひとつに決めることはできません。運動量の変化、柔軟性、膝や股関節・足関節の機能、スポーツ動作などを個別に確認することが重要です。

下肢アライメントについては、外反膝と鵞足部痛との関連を示した研究がありますが、対象は主に中高年女性であり、スポーツ選手へそのまま当てはめることはできません[1]。そのため、Knee-inや筋力低下などを単独で「鵞足炎の原因」と判断しないことが大切です。

鵞足炎の症状と受診の目安

鵞足炎では、膝関節の内側から少し下にかけての痛みがみられることが多いです。押したときに痛みがあり、ランニングや階段、立ち上がりなどで症状が強くなることがあります(図2)。

  • 膝の内側下方を押すと痛い
  • 走ると膝の内側が痛む、または距離が増えると痛くなる
  • 階段の上り下りや立ち上がりで痛む
  • 運動後から翌日にかけて痛みが強くなる
  • 鵞足部に腫れぼったさや違和感を感じることがある
鵞足炎と痛みが出やすい部位のイラスト
図2:鵞足炎では、膝関節の内側から少し下にかけて痛みが生じます。

 

自宅では「診断」ではなく、症状の特徴を確認しましょう。

痛みの場所、どの動作で痛むか、運動後や翌日に症状が増えるかを確認しておくと、運動量の調整や医療機関での評価に役立ちます。

鵞足部を押したときの痛みだけで鵞足炎と判断することはできません。臨床所見だけでは診断が難しいことも報告されているため、セルフチェックはあくまで症状を整理するためのものと考えてください[2]。

医療機関への相談を検討したい症状

  • 強い痛みや腫れがある、赤みや熱感が目立つ
  • 膝が引っかかって動かない、膝崩れがある
  • 転倒や接触、ひねったあとから急に痛くなった
  • 負荷を調整しても改善傾向がない
  • 日常生活や練習に支障が続いている

膝の内側の痛みは鵞足炎だけでなく、半月板損傷、内側側副靱帯(MCL)損傷、変形性膝関節症などでもみられます。痛みの場所だけで自己判断せず、症状が強い場合や長引く場合には専門家へ相談することを検討してください。

病院で行う検査

鵞足炎が疑われる場合は、まず問診と診察で痛みの経過や場所、押したときの痛み、歩行・スクワットなどの動作を確認します。

画像検査がすべてのケースで必要というわけではありません。症状が長引く場合や、半月板・靱帯など他の病態との鑑別が必要な場合には、超音波(エコー)やMRIなどを検討します[2,4]。

  • 超音波(エコー):鵞足腱や滑液包周辺の状態を確認するために使用することがあります
  • MRI:鵞足部だけでなく、半月板や靱帯など膝周囲の組織を含めて評価する場合に使用します
  • レントゲン:変形性膝関節症など骨・関節の状態を確認する必要がある場合に行います

鵞足炎の治療

鵞足炎・鵞足部痛では、多くの場合保存療法が基本になります[4]。

まず大切なのは、完全に動かさないことではなく、痛みを悪化させている負荷を一時的に調整することです。ランニング距離やスピード、ダッシュ・切り返しなど、症状との関係を確認しながら負荷を下げます。

  • 痛みを増やすランニングやスポーツ負荷の調整
  • 必要に応じた理学療法・運動療法
  • 熱感や運動後の痛みが強い場合の短時間の冷却
  • 必要に応じて医師の判断による薬物療法

症状が続く場合には、ステロイド注射などが検討されることもあります。理学療法とステロイド注射の両方で改善を認めた研究がありますが、対象は膝の変形性関節症を伴う患者であり、若いスポーツ選手にも同じ効果が得られると断定することはできません[3]。

注射などの治療を検討する場合には、他の膝内側痛との鑑別を含めて診断を確認することが重要です[2]。鵞足炎そのものに対して手術が必要になるケースは一般的には多くありません。

鵞足炎のリハビリテーション

リハビリでは、鵞足部だけをストレッチするのではなく、症状を悪化させている負荷を調整しながら、必要な柔軟性・筋力・動作を段階的に改善することがポイントです。

体幹・股関節・膝・足首のすべてに問題があるとは限りません。実際の動きを確認し、必要な部分を選んで取り組みます。

痛みが強い時期
  • 痛みが増えるランニング、ジャンプ、切り返しを一時的に減らす
  • 歩行や軽い運動など、症状が悪化しない活動は可能な範囲で維持する
  • 強い腫れ・熱感や日常生活での痛みが続く場合は医療機関へ相談する
症状が落ち着いてきた時期
  • ハムストリングスや内転筋などに強い硬さがあれば柔軟性を改善する
  • 股関節・膝・足関節の筋力を必要に応じて改善する
  • 片脚スクワットやステップ動作で、膝や骨盤のコントロールを確認する
ランニング・競技動作へ戻す時期
  • まずジョギングから開始し、距離を少しずつ増やす
  • 距離に耐えられたらスピードを上げる
  • 競技に必要なダッシュ・ジャンプ・切り返しへ段階的に進む
  • 運動直後だけでなく、当日夜や翌日の症状も確認する

柔軟性を改善する場合

半腱様筋を含むハムストリングスや薄筋を含む内転筋などに明らかな硬さがある場合は、ストレッチを取り入れます。すべての筋肉を一律に伸ばすのではなく、評価で硬さがみられる部位を中心に行いましょう。

筋力・動作を改善する場合

殿筋群のトレーニング、カーフレイズ、スクワット、片脚スクワットなどを使いながら、下肢を安定して支えられる状態を目指します。

Knee-inなどがみられても、それだけを鵞足炎の原因と考えるのではなく、股関節・膝・足首の動きや競技特性を含めて改善すべきポイントを判断します。

あきと

運動中に問題がなくても、翌日に痛みが強くなっていれば負荷が大きかった可能性があります。リハビリでは「できたか」だけでなく、その後の反応まで確認しましょう。

ランニング・スポーツ復帰の目安

鵞足炎には「○週間で復帰」といった一律の基準はありません。痛みの期間や競技、必要な運動強度によって復帰までの経過は異なります。

復帰を進めるときは、期間だけでなく以下の状態を確認します。

  • 歩行や階段などの日常生活で症状が大きく出ない
  • スクワットや片脚動作を安定して行える
  • ジョギングから徐々に距離・スピードを上げても症状が悪化しない
  • ダッシュや切り返しなど競技動作を行っても、当日夜〜翌日に症状が増えない

ジョグ → 距離 → スピード → ダッシュ・切り返しなどの競技動作と段階的に進めると、負荷を調整しやすくなります。

途中で痛みが明らかに増える場合は、無理に次の段階へ進まず、負荷を一段階下げて原因を確認しましょう。

よくある質問

鵞足炎は走りながら治せますか?

症状が軽く、走行中に痛みが強くならず、運動後から翌日に悪化しない範囲であれば、距離やスピードを落としてランニングを続けられることもあります。

走るほど痛みが増える場合や翌日に症状が残る場合は、現在の負荷が大きい可能性があるため、運動量を調整しましょう。

鵞足炎に注射は必要ですか?

多くの場合は負荷調整やリハビリなどの保存療法から開始します。症状が続く場合には注射が選択肢になることがありますが、まず他の膝内側痛との鑑別を含めて医師と相談することが大切です[2,3]。

まとめ

  • 鵞足炎では、膝の内側から少し下に痛みが出ることが多いです
  • 痛む場所だけでは診断できないため、症状が強い・長引く場合は他の膝疾患も含めて評価します
  • リハビリでは負荷調整を基本に、必要な柔軟性・筋力・動作を段階的に改善します
  • スポーツ復帰は期間だけで決めず、競技動作と翌日の症状反応まで確認して進めます

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参考文献

[1]Alvarez-Nemegyei J. Risk factors for pes anserinus tendinitis/bursitis syndrome: a case control study. J Clin Rheumatol. 2007;13(2):63-65. PubMed ID: 17414530

[2]Atici A et al. Poor Accuracy of Clinical Diagnosis in Pes Anserine Tendinitis Bursitis Syndrome. Indian J Orthop. 2021;56(1):116-124. PubMed ID: 35070151

[3]Sarifakioglu B et al. Comparison of the efficacy of physical therapy and corticosteroid injection in the treatment of pes anserine tendino-bursitis. J Phys Ther Sci. 2016;28(7):1993-1997. PubMed ID: 27512249

[4]Hasan M et al. Knee Bursae: A Comprehensive Review of Clinical Evaluation, Imaging Differentiation, and the Expanding Role of Biologic Therapies. Cartilage. 2025 Nov 15:19476035251362434. PubMed ID: 41239892

 

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