リスフラン靭帯損傷の手術適応|保存療法・ORIF・関節固定術とスポーツ復帰【文献レビュー】

今回は、リスフラン靭帯損傷の手術適応について、世界の文献をもとに「現在どのように考えられているのか」を整理します。

リスフラン靭帯損傷は、足の甲にあるリスフラン関節を支える靭帯の損傷です。軽い捻挫のように見えるものから、骨折や関節のずれを伴う重症例まで幅があります。

特に気になるのは、「保存療法でよいのか」「手術が必要なのか」「何mmずれたら手術なのか」「スポーツ復帰できるのか」という点だと思いますので、文献レビューをして、現在の研究でどのように考えられているかをわかりやすく整理していきます。

※この記事は診断や治療方針を決める記事ではありません。

この記事でわかること
  • リスフラン靭帯損傷の手術適応がどのように考えられているか
  • 保存療法と手術療法の考え方
  • Nunley分類など代表的な分類
  • X線、CT、MRIなど画像検査の役割
  • スポーツ復帰について文献で報告されていること
  • 現在のエビデンスの限界

リスフラン関節捻挫・リスフラン靭帯損傷の症状、原因、検査、基本的な治療方針について知りたい方は、まず以下の記事をご確認ください。

具体的なリハビリ方法やスポーツ復帰基準を知りたい方は、実践編の記事も参考にしてください。

足の痛み全体について知りたい方は、以下の記事も参考になります。

あきと

リスフラン靭帯損傷の治療方針は、「痛みの強さ」だけでは決まりません。画像で確認される関節のずれ・不安定性・骨折の有無・競技レベルなどを総合して判断されます。

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リスフラン靭帯損傷の治療方針はどう考えられている?

リスフラン損傷は、軽い中足部捻挫から、骨折脱臼を伴う重症例まで幅があるケガです[1][2]。

そのため、すべてのリスフラン靭帯損傷が手術になるわけではありません。一方で、関節の不安定性や骨のずれがある場合には、保存療法だけでは足部アーチの崩れや慢性痛につながる可能性があるため、手術療法が検討されることがあります[1][2]。

文献上では、リスフラン損傷の治療方針を考えるうえで、特に以下の点が重要とされています。

  • 第1中足骨と第2中足骨の間の離開
  • 内側楔状骨と第2中足骨の位置関係
  • 荷重したときに関節が広がるか
  • 足部アーチの低下があるか
  • 骨折や小さな剥離骨片の有無
  • MRIでの靭帯損傷の程度
  • 競技レベルや復帰目標

つまり、リスフラン靭帯損傷の手術適応は「ひとつの数値だけ」で判断されるものではなく、関節が安定しているかどうかを中心に考えられていると整理できます。

手術適応はどのように判断されているのか

リスフラン靭帯損傷の手術適応については、近年システマティックレビューでも整理されています。

Pearsallらのシステマティックレビューでは、手術適応を明記していた58本の報告が検討されました。その中で、最も多く使われていた基準は、骨と骨の間の離開、つまりdiastasisでした[3]。

ただし、その基準は一定ではありません。報告によって、1mm以上、2mm以上、3mm以上など幅があり、どの部位の離開を測るかも統一されていませんでした[3]。

文献レビューで重要なポイント
  • 「2mm以上なら必ず手術」と単純には言い切れない
  • 1〜3mmの離開が手術適応として使われている報告がある
  • 測定する場所や画像条件が文献によって異なる
  • 荷重時の不安定性やアーチ低下も重要
  • 最終的には医師が画像所見と症状を総合して判断する

あきと

よく「何mmずれたら手術ですか?」と聞かれますが、文献上も完全に統一された答えはありません。ずれの大きさ+荷重時の不安定性+症状をセットで考える必要があります。離開については下にある図1を見るとわかりやすいかもしれません。

不安定性

リスフラン靭帯は、足の甲の中足部を安定させる重要な靭帯です。

この靭帯が損傷して関節が不安定になると、歩行や走行、ジャンプ、切り返し動作で足部アーチに負担がかかりやすくなります。

文献では、関節の不安定性がある場合、手術療法が検討されることが多いとされています[1][2]。

転位・離開

リスフラン損傷では、第1中足骨と第2中足骨の間、または内側楔状骨と第2中足骨の位置関係が重要になります。

手術適応に関するシステマティックレビューでは、離開の基準として1〜3mmが使われている報告があり、最も多い基準は2mm以上でした[3]。

しかし、これは「2mmなら絶対手術」という意味ではありません。測定部位、撮影条件、荷重の有無、骨折の有無によって解釈が変わります。

足部アーチの低下

リスフラン関節は足部アーチの安定に関わります。

そのため、関節の離開だけでなく、荷重時に足部アーチが低下するかどうかも重要です。Nunley分類では、StageⅢで第1〜2中足骨間の離開に加えて、アーチ高の低下がある状態とされています[4]。

このようなアーチ低下を伴う場合は、保存療法よりも手術療法が検討されることがあります。

MRIで靭帯断裂がある場合

MRIは、リスフラン靭帯の損傷や骨髄浮腫、周囲組織の状態を確認するために用いられることがあります。

ただし、MRIで靭帯損傷が見つかっただけで、すぐに手術が決まるわけではありません。Pearsallらのレビューでは、MRI上の断裂を手術適応として示した報告もありましたが、頻度としては限定的でした[3]。

実際には、MRI所見に加えて、荷重X線やCT、症状、競技復帰目標を合わせて判断されることが多いと考えられます。

代表的な分類

リスフラン損傷では、損傷の程度を整理するためにいくつかの分類が使われます。

分類は治療方針を考えるうえで参考になりますが、分類だけで治療方針が自動的に決まるわけではありません。

Nunley分類

スポーツ選手の比較的低エネルギーの中足部捻挫では、Nunley分類がよく知られています(図1)[4]。

  • StageⅠ:レントゲンで明らかな離開はないが、リスフラン靭帯損傷が疑われる状態
  • StageⅡ:第1〜2中足骨間の2~5mmの離開があるが、アーチ高の低下はない状態
  • StageⅢ:第1〜2中足骨間の2~5mmの離開に加えて、アーチ高の低下がある状態

Nunleyらの報告では、StageⅠは保存療法、StageⅡ・Ⅲは解剖学的整復と固定が行われる形で整理されています[4]。

 

リスフラン靭帯損傷 分類 重症度
図1:Midfoot sprain classification(文献4より引用)。StageⅠ:レントゲンでは変化が見られないリスフラン靭帯損傷が疑われる状態。StageⅡ:第1〜2中足骨間の2~5mmの離開があるが、アーチ高の低下はない状態。StageⅢ:第1〜2中足骨間の離開に加えて、アーチ高の低下が認められる状態。

Myerson分類

Myerson分類は、主にリスフラン関節の脱臼方向や損傷パターンを整理する分類として使われます。

骨折脱臼を伴うような比較的重症のリスフラン損傷では、損傷方向や転位のパターンを把握することが重要になります。

分類の限界

分類は便利ですが、リスフラン損傷は非常に幅が広いため、すべての症例をきれいに分類できるわけではありません。

また、分類はあくまで治療方針を考えるための材料の一つです。実際には、画像所見、症状、スポーツレベル、職業、生活背景などを踏まえて治療方針が検討されます。

あきと

分類はとても大事ですが、「StageⅡだから絶対こうする」と決めるためだけのものではありません。実際の現場では、画像と症状、競技復帰目標を合わせて考えます。

画像検査の役割

リスフラン損傷は見逃されやすいケガとして知られています。

そのため、適切な画像検査は非常に重要です。Carterらのレビューでは、適切な画像検査は見逃しを減らすだけでなく、過剰治療を避けるためにも重要であると述べられています[2]。

単純X線

まず行われることが多い検査はX線検査です。

通常のX線では、骨折、関節のずれ、第1〜2中足骨間の離開などを確認します。

ただし、軽度のリスフラン損傷では、非荷重のX線だけでは異常が分かりにくいことがあります。

荷重X線

荷重X線は、体重をかけた状態で撮影するX線です。

微妙なリスフラン損傷では、荷重をかけることで初めて関節の離開や不安定性が分かることがあります。

Carterらは、いわゆるsubtle Lisfranc injuryを評価するうえで、荷重X線が大きな価値を持つと述べています[2]。

CT

CTは、骨折や小さな骨片、関節面のずれを詳しく確認するために有用です。

特に、X線では分かりにくい骨折や関節の位置関係を確認したい場合に使われます。

スポーツ選手では、復帰後の負荷が大きいため、骨性損傷の有無を丁寧に確認することが重要になることがあります。

MRI

MRIは、リスフラン靭帯そのものや骨髄浮腫、周囲軟部組織の状態を確認する検査です。

レントゲンやCTで大きなずれがなくても、靭帯損傷が疑われる場合にMRIが検討されることがあります。

ただし、MRIだけで手術適応を判断するのではなく、荷重時の不安定性や症状と合わせて考える必要があります。

画像検査の考え方
  • X線:関節のずれや骨折を確認する
  • 荷重X線:荷重時の不安定性を確認する
  • CT:小さな骨折や関節面の状態を詳しく見る
  • MRI:靭帯損傷や骨髄浮腫を確認する

保存療法と手術療法の成績

リスフラン損傷の治療には、保存療法と手術療法があります。

保存療法は、関節の不安定性が小さく、転位がない、または非常に軽度の症例で検討されることがあります。

手術療法は、関節のずれや不安定性がある場合に検討されます。

保存療法

保存療法では、固定、免荷、段階的な荷重、リハビリを行います。

ただし、保存療法が適しているかどうかは慎重に判断する必要があります。リスフラン損傷では、不安定性を見逃すと痛みが長引いたり、足部アーチの問題につながったりする可能性があるためです。

保存療法の対象になりやすいのは、一般的には関節のずれがなく、荷重時にも不安定性が小さい症例と考えられます。

手術療法

手術療法では、ずれた関節を整復し、スクリュー、プレート、ボタン固定などで安定させる方法があります。

また、症例によっては一次関節固定術(Primary Arthrodesis)が検討されることもあります。

Carterらのレビューでは、手術方法にかかわらず、転位した損傷では解剖学的整復と安定した固定が良好な結果の前提になるとされています[2]。

ORIFとPrimary Arthrodesis

ORIF(Open Reduction and Internal Fixation:観血的整復固定術)は、ずれた関節を元の位置に戻し、スクリューやプレートで固定する方法です。関節自体は温存し、将来的に動くことを期待します。

一方、Primary Arthrodesis(一次関節固定術)は、損傷した関節を初回手術で固定し、関節の動きをなくして安定性を得る方法です。

簡単にいうと、

  • ORIF:「関節を残して固定する手術」
  • Primary Arthrodesis:「関節をくっつけて固定する手術」

どちらがよいかについては、現在も議論があります。

van den Boomらのシステマティックレビュー・メタ解析では、ORIFとPrimary Arthrodesisを比較し、AOFASスコアではPrimary Arthrodesisに有利な結果が示されましたが、その差が臨床的に重要かどうかは明確ではなく、質の高い前向き研究が必要とされています[5]。

つまり、現時点では「すべての症例で固定術がよい」「すべての症例でORIFがよい」と断定できる状況ではありません。

あきと

ORIFか固定術かは、文献でもまだ議論があります。ケガのタイプ、関節面の損傷、骨折の有無、競技特性などによって方針が変わるため、担当医とよく相談することが大切です。

スポーツ復帰について文献ではどう報告されているか

リスフラン損傷は、スポーツ選手にとって復帰までの道のりが長くなることがあるケガです。

一方で、文献では多くの選手が何らかの形でスポーツ復帰できていることも報告されています。

スポーツ復帰率

Ter Laak Bolkらのメタ解析では、リスフラン損傷後のスポーツ復帰について検討されています[6]。

保存療法、手術固定、一次部分固定術のいずれでも、何らかのスポーツレベルへの復帰率はおおむね高いことが報告されています[6]。

ただし、受傷前と同じレベルに戻れるかどうかは、治療方法、損傷の重症度、競技レベルによって変わります。

復帰時期

同メタ解析では、スポーツ復帰までの期間は研究によって幅があり、平均復帰時期を単純に一つの数字で示すことは難しいとされています[6]。

復帰時期は、保存療法か手術療法かだけでなく、損傷の程度、固定期間、荷重開始時期、リハビリの進み具合、競技特性によって変わります。

競技復帰で注意したいこと

リスフラン損傷では、走れるようになっても、切り返し、ジャンプ、スパイクでの踏み込み、相手との接触などで痛みが戻ることがあります。

そのため、復帰判断では以下のような項目を確認する必要があります。

  • 歩行で痛みがない
  • つま先立ちで痛みがない
  • 片脚カーフレイズで痛みがない
  • ジャンプ着地で足の甲に痛みがない
  • 切り返し動作で不安定感がない
  • 練習後や翌日に痛み・腫れが増えない

あきと

スポーツ復帰は「期間」だけで決めないことが大切です。特にリスフラン損傷では、翌日の足の甲の痛みや腫れをチェックしながら、少しずつ強度を上げていく必要があります。

現在のエビデンスの限界

リスフラン靭帯損傷の手術適応については、文献が増えてきていますが、まだ限界もあります。

特に以下の点は注意が必要です。

  • 手術適応の基準が文献によって統一されていない
  • 離開の測定部位が研究ごとに異なる
  • 荷重X線、CT、MRIの使い方が統一されていない
  • スポーツ選手だけを対象にした質の高い研究が少ない
  • ORIFとPrimary Arthrodesisのどちらが最適かは症例差が大きい
  • 長期成績や競技パフォーマンスの報告はまだ十分ではない

そのため、この記事で紹介している内容は、あくまで文献上の傾向です。

実際の治療方針は、画像所見、痛み、職業、競技レベル、年齢、復帰目標などによって変わります。自己判断で「手術が必要」「保存療法で大丈夫」と決めるのではなく、足部外傷に詳しい医師と相談することが大切です。

受診を急いだ方がよい症状

以下のような症状がある場合は、自己判断で運動を続けず、早めに整形外科やスポーツ整形外科で相談しましょう。

  • 足の甲の腫れや痛みが強い
  • 足の裏に内出血がある
  • 歩くと強く痛む
  • つま先立ちができない
  • 足の甲を押すと強く痛い
  • 外傷後に足の甲の痛みが続く
  • 数日たっても痛みが改善しない
  • スポーツ復帰後に痛みを繰り返す

あきと

足底の内出血、強い腫れ、歩行困難がある場合は要注意です。「ただの足の甲の捻挫」と思って運動を続けると、痛みが長引く可能性があります。

FAQ

リスフラン靭帯損傷は何mm離開すると手術ですか?

文献では、1〜3mmの離開が手術適応として使われている報告があります。最も多く使われている基準は2mm以上ですが、測定部位や画像条件が統一されているわけではありません[3]。

そのため、「2mm以上なら必ず手術」と断定するのではなく、荷重時の不安定性、アーチ低下、骨折の有無、症状を総合して判断されます。

MRIでリスフラン靭帯が切れていたら手術ですか?

MRIで靭帯損傷が確認されることは重要な情報ですが、それだけで手術が決まるわけではありません。

荷重X線やCTでの不安定性、症状、競技復帰目標などを合わせて判断されます。

保存療法でも治りますか?

関節のずれや不安定性が小さい場合は、保存療法が検討されることがあります。

ただし、不安定性が見逃されると痛みが長引く可能性があるため、医師の判断に沿って固定や免荷、画像確認を行うことが重要です。

ORIFと関節固定術はどちらがよいですか?

ORIFとPrimary Arthrodesisのどちらがよいかは、現在も議論があります。

システマティックレビューではPrimary Arthrodesisに有利な結果が示された項目もありますが、その差が臨床的に重要かどうかは明確ではなく、さらに質の高い研究が必要とされています[5]。

実際には、損傷のタイプや関節面の状態、競技レベルを踏まえて判断されます。

スポーツ復帰までどれくらいかかりますか?

リスフラン損傷のスポーツ復帰時期は、損傷の程度や治療方法によって大きく変わります。

文献では、多くの選手が何らかのスポーツ復帰をしている一方で、復帰までの期間には幅があります[6]。

復帰は「何週たったか」だけではなく、痛み、腫れ、筋力、ジャンプ、切り返し、翌日の反応を確認しながら段階的に判断することが大切です。

まとめ

リスフラン靭帯損傷の手術適応は、現在の文献でも完全に統一されているわけではありません。

多くの報告では、関節の離開や不安定性が手術適応として使われていますが、その基準は1〜3mmと幅があり、測定部位も一定ではありません[3]。

そのため、リスフラン靭帯損傷では、ずれの大きさ、不安定性、荷重時の変化、骨折の有無、MRI所見、競技レベルを総合して治療方針が検討されます。

保存療法と手術療法のどちらがよいか、ORIFとPrimary Arthrodesisのどちらがよいかについても、症例によって判断が分かれる部分があります。

この記事は文献レビューとして現在の考え方を整理したものです。実際の治療方針は、担当医と相談しながら決めるようにしてください。

あきと
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参考文献

[1]Chen J et al. The Lisfranc Injury: A Literature Review of Anatomy, Etiology, Evaluation, and Management. Foot Ankle Spec. 2021;14(5):458-467. PubMed ID: 32819164

[2]Carter TH et al. Management of Lisfranc Injuries: A Critical Analysis Review. JBJS Rev. 2023;11(4):e22.00239. PubMed ID: 37014938

[3]Pearsall C et al. Defining Operative Indications in Lisfranc Injuries: A Systematic Review. Foot Ankle Spec. 2024;17(6):632-638. PubMed ID: 37278226

[4]Nunley JA et al. Classification, investigation, and management of midfoot sprains: Lisfranc injuries in the athlete. Am J Sports Med. 2002;30(6):871-878. PubMed ID: 12435655

[5]van den Boom NAC et al. Lisfranc injuries: fix or fuse? A systematic review and meta-analysis of current literature presenting outcome after surgical treatment for Lisfranc injuries. Bone Jt Open. 2021;2(10):842-849. PubMed ID: 34643414

[6]Ter Laak Bolk CS et al. Adequate return to sports and sports activities after treatment of Lisfranc injury: a meta-analysis. J ISAKOS. 2021;6(4):212-219. PubMed ID: 34272297

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