腸脛靭帯炎の症状・原因・リハビリ|ランナー膝の治し方

今回は腸脛靭帯炎(Iliotibial Band Syndrome:ITBS)について解説します。

腸脛靭帯炎は、ランニング中やランニング後に膝の外側が痛くなる代表的なオーバーユース障害のひとつです。日本では「ランナー膝」「ランナーズニー」と呼ばれることもあります。

痛みが落ち着いても、走行距離やトレーニング強度、身体機能、ランニング動作などを見直さずに元の練習へ戻すと、症状を繰り返すことがあります。

この記事では、腸脛靭帯炎の症状と受診の目安、病院で行う検査、治療、リハビリ、ランニング再開までをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 腸脛靭帯炎で膝の外側が痛くなる理由
  • よくある症状と受診を考える目安
  • 病院で行う検査と治療
  • リハビリとランニング再開の考え方

膝の痛み全体について知りたい方は、関連する膝関節の記事もあわせて確認してみてください。

あきと
日本では「ランナー膝」という言葉を腸脛靭帯炎の意味で使うことがあります。
一方、英語のRunner's Kneeは膝蓋大腿部痛などを指す場合もあり、必ずしも腸脛靭帯炎と同じ意味ではありません。
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腸脛靭帯炎とは

腸脛靭帯炎は、太ももの外側にある腸脛靭帯と膝外側の組織に繰り返し負荷がかかり、膝の外側に痛みが生じる障害です。

腸脛靭帯は、大殿筋や大腿筋膜張筋とつながりながら太ももの外側を通り、脛骨などに付着する強い線維性組織です[1]。

以前は「腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の上を前後にこすれて炎症が起こる」と説明されることが多くありました。しかし現在では、単純な摩擦だけではなく、膝を繰り返し曲げ伸ばしする際に腸脛靭帯周囲の組織へ圧迫負荷が加わることなども症状に関係すると考えられています[2,3]。

腸脛靭帯炎 腸脛靭帯 大殿筋 大腿筋膜張筋 膝外側痛
図1:腸脛靭帯炎のイメージ図。大殿筋や大腿筋膜張筋とつながる腸脛靭帯は、太ももの外側を通り膝外側の症状に関係します。

腸脛靭帯炎は特にランニングで起こりやすく、長距離走、走行距離や強度を急に増やした時期、下り坂などで症状が出ることがあります。サイクリングなど、膝の曲げ伸ばしを繰り返すスポーツでもみられます。

腸脛靭帯炎 ランニング 膝の外側の痛み

発症にはトレーニング負荷だけでなく、ランニング動作、股関節や膝のコントロール、筋力など複数の要因が関係する可能性があります。ただし、特定の筋肉の弱さや身体の硬さだけを腸脛靭帯炎の原因と断定できるわけではありません[2]。

あきと
膝の外側だけを見るのではなく、「最近ランニング量を増やしていないか」「どのくらい走ると痛むか」「疲れてくるとフォームが変わらないか」なども確認していきます。

腸脛靭帯炎の主な症状と受診の目安

腸脛靭帯炎では、膝の外側に限局した痛みがみられることが多く、ランニングを続けるうちに徐々に痛くなるのが特徴的です。

  • ランニング中に膝の外側が痛くなる
  • 走り始めは問題なくても、一定の距離を走ると痛くなる
  • 下り坂や長距離走で痛みが出やすい
  • 膝の外側を押すと痛みがある
  • 症状が強い場合は、階段や歩行でも痛みが出る

腸脛靭帯炎 膝外側痛 痛みの場所

自分で確認する場合は、診断を目的とするのではなく、どこが痛むか、どのくらいの運動で痛みが出るか、運動後や翌日に悪化していないかを記録しておくと、負荷調整や医療機関での評価に役立ちます。

受診を考える目安

  • 歩くだけでも膝の外側が痛い
  • 膝に強い腫れがある
  • 膝が引っかかる、ロッキングする
  • 転倒や接触などの外傷後から痛みが出た
  • 負荷を調整しても痛みが改善しない、またはランニング再開のたびに症状を繰り返す

膝外側の痛みは腸脛靭帯炎だけでなく、外側半月板損傷外側側副靱帯損傷、大腿二頭筋腱の障害などでも生じます。

特にロッキングや強い腫れを伴う場合などは、自己判断で腸脛靭帯炎と決めつけず、整形外科などで相談することを検討してください。

病院で行う検査

腸脛靭帯炎の評価では、問診と身体診察が中心です。痛みが出る場所や走行距離、練習量の変化、坂道との関係などを確認し、膝外側の圧痛や下肢の動きを評価します。

  • 問診・触診:痛みが出るタイミングや場所、膝外側の圧痛などを確認します。
  • 動作評価:必要に応じてスクワット、片脚動作、ランニングなどから下肢の動きを確認します。
  • 画像検査:症状が典型的でない場合や他の疾患を除外したい場合などに、X線、超音波、MRIなどを行うことがあります。

画像検査だけで診断するのではなく、症状が出た経過や身体診察とあわせて判断することが大切です。

腸脛靭帯炎の治療

腸脛靭帯炎では、多くの場合保存療法が中心になります[4]。

まず大切なのは、痛みを繰り返している負荷を確認することです。完全に運動を休む必要があるかどうかは症状によって異なりますが、走るたびに痛みが強くなる場合は、走行距離やスピード、坂道などを一度調整します。

  • 痛みを誘発するランニング量や強度の調整
  • 症状に応じた痛みへの対応
  • 股関節周囲を含む筋力・下肢コントロールの改善
  • 必要に応じたランニングフォームやトレーニング内容の見直し

運動後の冷却は、一時的に痛みを和らげる目的で行われることがあります。ただし、アイシングだけで腸脛靭帯炎の原因が解決するわけではありません。

症状が続く場合は、医師や理学療法士などに相談し、他の疾患が隠れていないかも含めて評価してもらいましょう。

腸脛靭帯炎のリハビリテーション

リハビリでは、単に膝の外側を休ませるだけではなく、現在耐えられる負荷を確認しながら、ランニングに必要な身体機能を段階的に戻していくことが重要です。

まずは歩行や階段などの日常生活で症状が落ち着いているかを確認します。そのうえで、股関節周囲の筋力や片脚での下肢コントロールを改善し、徐々にランニングにつなげていきます。股関節外転筋を含む筋力トレーニングは、保存療法でよく用いられている方法のひとつです[4]。

柔軟性に制限がある場合は、大腿筋膜張筋や股関節周囲、下腿などへのストレッチを取り入れることがあります。ただし、腸脛靭帯そのものを強く伸ばせば改善すると単純に考えるのではなく、一人ひとりの身体機能に合わせて行うことが大切です[2]。

リハビリで確認したいポイント

  • 歩行や階段で症状が強く出ない
  • スクワットや片脚動作で痛みが悪化しない
  • 運動後から翌日にかけて症状が明らかに強くならない
  • 負荷を上げても症状が安定している

運動中だけでなく、運動後や翌朝の反応まで確認します。翌日に痛みが明らかに増える場合は、そのときの運動量や強度が高すぎた可能性があるため、負荷を一段階戻して調整します。

あきと
「運動できたか」だけでなく、「そのあと症状がどう変化したか」まで確認するのがポイントです。翌日の状態も見ながら少しずつ負荷を上げていきましょう。

具体的なストレッチやエクササイズメニューについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

ランニング再開・スポーツ復帰の目安

腸脛靭帯炎には、すべての選手に共通する明確な復帰時期や統一された復帰基準があるわけではありません。痛みの程度や競技、ランニング量などに合わせて判断します。

ランニング再開を考える目安として、次のような状態を確認します。

  • 歩行や階段で膝外側の痛みがほとんど気にならない
  • スクワットや片脚動作で痛みが悪化しない
  • 短時間のジョギングを行っても症状が強くならない
  • ランニング後から翌日にかけて症状が悪化しない

再開時は、まず平地での短時間・低強度のランニングから始めます。問題がなければ距離や時間を増やし、その後にスピード、坂道、インターバルなど競技に必要な負荷へ段階的に戻していきます。

途中で痛みが再び強くなる場合は、無理にその段階を続けず、負荷を戻して原因を確認します。復帰を急ぐ場合や何度も再発している場合は、医師や理学療法士、アスレティックトレーナーなどと相談しながら進めるとよいでしょう。

まとめ

  • 腸脛靭帯炎は、ランニングなどで膝の外側に痛みが出る代表的なオーバーユース障害です。
  • 発症にはトレーニング負荷やランニング動作、身体機能など複数の要因が関係する可能性があります。
  • 歩行痛、強い腫れ、ロッキングなどがある場合は、他の疾患も考えて医療機関への相談を検討しましょう。
  • ランニング再開は、運動中だけでなく運動後や翌日の症状を確認しながら段階的に進めることが大切です。

参考文献

[1]Godin JA et al. A Comprehensive Reanalysis of the Distal Iliotibial Band: Quantitative Anatomy, Radiographic Markers, and Biomechanical Properties. Am J Sports Med. 2017;45(11):2595-2603. PubMed ID: 28609131

[2]Friede MC et al. Conservative treatment of iliotibial band syndrome in runners: Are we targeting the right goals? Phys Ther Sport. 2022;54:44-52. PubMed ID: 35007886

[3]Geisler PR. Current Clinical Concepts: Synthesizing the Available Evidence for Improved Clinical Outcomes in Iliotibial Band Impingement Syndrome. J Athl Train. 2021;56(8):805-815. PubMed ID: 34375405

[4]Sanchez-Alvarado A et al. Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review. Front Sports Act Living. 2024;6:1386456. PubMed ID: 39247485

 

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