
膝のお皿の外上あたりがズキッと痛む、ジャンプやダッシュ、階段で膝のお皿の外側が痛い。そんな症状に悩まされていませんか?
その痛みには、有痛性分裂膝蓋骨が関係していることがあります。
有痛性分裂膝蓋骨は、特に成長期のスポーツ選手で問題になることがある膝前方痛のひとつです。分裂膝蓋骨があっても痛みがない人は多く、画像だけではなく、痛みの場所やスポーツ動作との関係を合わせて判断することが大切です。
この記事では、有痛性分裂膝蓋骨の症状、受診の目安、検査、治療、リハビリ、スポーツ復帰の考え方についてわかりやすく解説します。
- 有痛性分裂膝蓋骨とはどのような状態か
- 膝のお皿の外側・外上に出やすい症状と受診の目安
- 病院で行う検査と治療の考え方
- リハビリとスポーツ復帰の進め方
膝の痛み全体について知りたい方は、関連する膝関節の記事もあわせて確認してみてください。
有痛性分裂膝蓋骨とは?
分裂膝蓋骨とは、膝のお皿である膝蓋骨の一部が成長の過程で完全には癒合せず、骨片のように残っている状態です(図1)。
分裂膝蓋骨そのものは、痛みがないまま偶然レントゲンなどで見つかることもあります。その分裂部にスポーツによる繰り返しの負荷や牽引、膝への直接的な外傷などが加わり、痛みが出ている状態を有痛性分裂膝蓋骨と呼びます。

分裂膝蓋骨は、分裂している場所によって古典的にはSaupe分類のⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型に分けられます。一般的には、膝蓋骨の外側上部に骨片がみられるⅢ型が多いとされています(図2)。

Saupe分類は分裂部位を確認するための分類であり、分類だけで治療方法が決まるわけではありません。痛みの強さ、スポーツでの症状、画像所見、保存療法への反応などを合わせて治療方針を考えます。
症状は、ジャンプや着地、ダッシュ、急なストップ、深く膝を曲げる動作などを繰り返したときに出ることがあります。また、膝を直接ぶつけたことをきっかけに、それまで痛くなかった分裂部に症状が出る場合もあります。
特に練習量や運動強度が急に増えた時期は、膝への負荷が増えやすいため注意が必要です。
主な症状と受診の目安
有痛性分裂膝蓋骨では、膝のお皿の外側や外上に痛みが出ることが多く、スポーツ動作で症状が強くなることがあります。
- 膝のお皿の外上を押すと痛い
- 階段やスクワットで膝のお皿まわりが痛い
- ジャンプや着地で痛い
- ダッシュや急なストップで痛い
- 太ももに力を入れる、前ももを伸ばす動作で痛い
押したときの痛みだけが目立つ場合もありますが、痛みが続く、練習量を減らしても改善しない、スポーツに支障が出ている場合は、整形外科やスポーツ医療の専門家へ相談することを検討してください。
成長期の膝前方痛では、他のケガとの区別も大切です。
膝のお皿の下が痛むオスグット病や、膝蓋腱周囲に痛みが出るジャンパー膝などでも、ジャンプやスポーツで膝前方に痛みが出ることがあります。
- 痛みが強く、歩くことが難しい
- 膝が大きく腫れている、熱感や赤みがある
- 膝が十分に伸びない、曲げられない
- ロッキングや強い引っかかりがある
- 夜間にも強い痛みが続く
- 発熱を伴う、または症状が徐々に悪化している
これらの症状では、有痛性分裂膝蓋骨以外の外傷や骨・軟骨、関節内の問題などが関係している可能性もあるため、医療機関での評価が重要です。
病院で行う検査
病院では、まず痛みの場所や発症した時期、どの動作で痛みが出るか、練習量が変化していないかなどを確認します。
- 触診:膝のお皿の外側・外上に圧痛があるかを確認します。
- 可動域・筋力評価:膝の曲げ伸ばしや、大腿四頭筋に力を入れたときの症状を確認します。
- 動作評価:スクワットや片脚動作などで、どのように痛みが出るかを確認します。
- 画像検査:必要に応じてレントゲン、MRI、エコーなどを行います。
分裂膝蓋骨の有無は、レントゲン検査で確認されることが多いです。ただし、レントゲンで分裂膝蓋骨が見つかっただけでは、そこが痛みの原因とは限りません。
痛みの場所や圧痛、スポーツ時の症状などと画像所見を合わせて判断します。他のケガとの区別や分裂部周囲の状態を詳しく確認する必要がある場合には、MRIなどが検討されることもあります。

有痛性分裂膝蓋骨の治療
有痛性分裂膝蓋骨では、まず保存療法から治療を始めることが一般的です。小児・思春期の有痛性分裂膝蓋骨を対象としたシステマティックレビューでも、保存療法を第一選択とし、改善しない場合に手術療法を検討する流れが報告されています[1]。
- 痛みを悪化させる練習や動作の負荷調整
- 痛みや炎症への対応
- 必要に応じたテーピングや装具の使用
- 膝や股関節周囲の筋力・柔軟性の改善
- 競技動作へ向けた段階的なリハビリ
痛みが強い時期は、ジャンプ、ダッシュ、深いスクワットなど、症状を繰り返し悪化させる動作を一時的に減らします。すべてのスポーツ活動を必ず完全休止するという意味ではなく、症状に応じて練習内容や運動強度を調整することが重要です。
一方、十分な保存療法を行っても痛みが続き、日常生活やスポーツ復帰に大きな支障が残る場合には、手術療法が検討されることがあります。骨片切除や骨片を固定する方法などが報告されています[1][2]。
どの治療が適しているかは、年齢、症状の程度、分裂部位、競技レベル、保存療法への反応などによって異なります。手術が必要かどうかは、専門医と相談して判断します。
有痛性分裂膝蓋骨のリハビリテーション
リハビリでは、単に痛みをなくすだけではなく、スポーツによる負荷に耐えられる状態へ段階的に戻していくことが大切です。
具体的なリハビリメニューについては、以下の記事も参考にしてください。
① まずは痛みが出る負荷を調整します。
ジャンプやダッシュなどで痛みが強い場合は、その動作の回数や強度を一時的に減らします。その日の痛みだけでなく、運動後や翌日に症状が悪化していないかまで確認することがポイントです。
- 圧痛:膝のお皿の外上を押したときの痛み
- 荷重時痛:スクワットや片脚動作での痛み
- 収縮時痛:膝を伸ばして太ももに力を入れたときの痛み
- ストレッチ時痛:前ももを伸ばしたときの痛み
- 運動後・翌日の反応:練習後に痛みが増えていないか
② 痛みが落ち着いてきたら、必要な筋力や動作を戻します。
膝まわりだけでなく、競技動作に必要な股関節や体幹の筋力、片脚で身体を支える能力なども確認します。ここで大切なのは、「股関節や体幹が悪いから有痛性分裂膝蓋骨になった」と考えるのではなく、スポーツへ安全に戻るために必要な機能として評価することです。
③ 基本動作から競技動作へ段階的に進めます。
スクワットや片脚動作が安定して行えるようになったら、ランニング、ジャンプ・着地、ダッシュ、方向転換などへ負荷を高めていきます。
負荷を上げたあとに痛みが明らかに強くなる場合や、翌日まで症状が残る場合は、一度負荷を下げて調整しましょう。
スポーツ復帰の考え方
有痛性分裂膝蓋骨からのスポーツ復帰は、「何週間休んだか」だけで決めるのではなく、膝の症状と競技に必要な動作を確認しながら判断します。
- 日常生活やスクワットで膝のお皿の外上に強い痛みがない
- 太ももに力を入れる、前ももを伸ばす動作で症状が悪化しない
- 片脚動作やランニングを安定して行える
- ジャンプ・着地・ダッシュなど競技に必要な動作を段階的に行える
- 練習後や翌日に痛みが増えない
有痛性分裂膝蓋骨では、すべての選手に共通する明確なスポーツ復帰時期が決まっているわけではありません。システマティックレビューでは手術後のスポーツ復帰について報告されていますが、研究数や症例数には限りがあります[1][2]。
そのため、痛みが落ち着いたことだけで判断せず、ランニング、ジャンプ、方向転換など競技に必要な動作と、その後の症状反応を確認しながら復帰を進めることが大切です。手術を受けた場合は、執刀医や主治医の指示・リハビリプロトコルを優先してください。
まとめ
- 有痛性分裂膝蓋骨では、膝のお皿の外側・外上にスポーツ時の痛みが出ることがあります。
- 分裂膝蓋骨が画像で見つかっても、それだけで痛みの原因とは判断できません。
- 基本は保存療法で、症状を確認しながら運動負荷とリハビリを段階的に進めます。
- スポーツ復帰は期間だけでなく、競技動作と運動後・翌日の反応も確認して判断します。
成長期の選手で痛みが続いている場合や、スポーツ活動に支障が出ている場合は、無理に練習を続けず、整形外科やスポーツ医療の専門家へ相談することを検討してください。
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参考文献
[1]Hines KE et al. Treatment of symptomatic bipartite patella in patients <21 years of age: A systematic review and treatment algorithm. J Child Orthop. 2024;19(1):75-82. PubMed ID: 39726688
[2]Matic GT et al. Return to activity among athletes with a symptomatic bipartite patella: A systematic review. Knee. 2015;22(4):280-285. PubMed ID: 26014341


