下腿コンパートメント症候群|走るとすねが痛い原因・治療・リハビリ

ランニング中にすねやふくらはぎが張って痛くなり、休むと楽になる――このような症状では、下腿コンパートメント症候群が関係していることがあります。

スポーツで問題になる慢性労作性コンパートメント症候群では、運動を続けると痛みや張りが強くなることが特徴です。一方、外傷後に急激な痛みや腫れが出る急性コンパートメント症候群は、早急な対応が必要です。

この記事では、下腿コンパートメント症候群の症状、受診の目安、検査、治療、リハビリ、スポーツ復帰について整理していきます。

この記事でわかること
  • 下腿コンパートメント症候群とはどのような状態か
  • 運動時に起こりやすい症状と受診の目安
  • 病院で行う検査と治療
  • リハビリとスポーツ復帰の考え方

すね・ふくらはぎの痛みは、シンスプリントや疲労骨折などでも起こります。下腿の痛みの原因を広く確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。

 

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下腿コンパートメント症候群とは?

下腿の筋肉は、筋膜などに囲まれたいくつかの区画に分かれています。この区画をコンパートメントと呼びます(図1)。

下腿コンパートメント症候群の解剖図。前方・外側・浅後方・深後方の4区画と、それぞれに含まれる主な筋肉・神経・血管を示す。
図1:下腿の4つのコンパートメント(前方・外側・浅後方・深後方)と、それぞれに含まれる主な筋肉・神経・血管。コンパートメント内の圧が上昇すると、筋肉や神経などに障害が生じることがあります。

 

ランニングなどの運動に伴ってコンパートメント内の圧が高まり、痛みや張りなどの症状を繰り返す状態が慢性労作性コンパートメント症候群(Chronic Exertional Compartment Syndrome:CECS)です[1](図2)。

CECSはランニングをはじめとした反復運動で起こることが多く、運動中に症状が出現し、休息すると軽減するという経過がよくみられます[1]。

ただし、CECSが起こる仕組みは完全には解明されていません。運動による筋肉の容積増加や筋膜の性質などが関係すると考えられていますが、単一の原因だけで説明できる疾患ではありません[1]。

 

下腿コンパートメント症候群の模式図。前方区画の筋肉が腫脹し、筋膜に囲まれた区画内の圧が上昇している状態を示す横断面イラスト。
図2:下腿コンパートメント症候群の模式図。前方区画の筋肉が腫脹し、筋膜に囲まれた区画内の圧が上昇した状態を示しています。内圧の上昇により、筋肉や神経への血液供給が障害されることがあります。

 

あきと
スポーツ選手で問題になることが多いのは慢性労作性コンパートメント症候群です。
一方、外傷後に急激に症状が悪化する急性型は、緊急性が大きく異なります。

下腿コンパートメント症候群の症状と受診の目安

慢性労作性コンパートメント症候群では、安静時よりも走っている途中に症状が出ることが特徴です。

  • 走るとすねやふくらはぎが痛くなる
  • 運動を続けると下腿が張る、締めつけられる感じがする
  • 毎回似たような運動時間・距離で症状が出る
  • 運動をやめると症状が徐々に軽くなる
  • 症例によっては、しびれや力の入りにくさを伴う

特に運動によって症状が繰り返し再現され、休むと軽減するという経過は、CECSを考えるうえで重要です[1]。

ただし、このような症状だけでCECSと診断することはできません。シンスプリント、脛骨の疲労骨折、筋・腱の障害、神経や血管の問題などでも、運動時の下腿痛が起こることがあります。

一方、次のような症状は注意が必要です。

  • 骨折や強い打撲などの後から、痛みが急激に強くなっている
  • 下腿が大きく腫れ、硬く張っている
  • 安静にしていても強い痛みが続く、または悪化している
  • しびれや感覚低下、足首・足趾の動かしにくさが出てきた

これらは急性コンパートメント症候群の可能性も考える必要があります。急性コンパートメント症候群は、筋肉や神経への血流が障害される可能性があるため、早急な医学的評価が必要です[5]。

「脈が触れるから大丈夫」「まだ足を動かせるから大丈夫」と自己判断するのは避けましょう。急性コンパートメント症候群では、症状や診察所見を総合して判断する必要があります。

あきと
外傷後に下腿の痛みや腫れが急激に強くなっている場合は、「少し様子を見よう」と運動を続ける状態ではありません。
早めに医療機関で確認してもらいましょう。

病院で行う検査

慢性労作性コンパートメント症候群が疑われる場合は、まず症状が出る運動、発症までの時間や距離、痛む場所、休息後の変化などを確認します。

CECSは安静時には症状や診察所見が目立たないこともあるため、必要に応じてランニングなどで症状を再現した後に、下腿の張りや痛み、神経症状などを評価します[1]。

コンパートメント内圧測定

運動前後に筋肉の区画内へ針などを挿入し、コンパートメント内の圧を測定する検査です。CECSの診断に広く使われていますが、測定方法や診断基準は完全には統一されていません[1,2]。

そのため、圧の数値だけで判断するのではなく、症状の特徴や診察結果、他の疾患の可能性を合わせて評価することが重要です。

画像検査

レントゲンやMRIなどは、すべてのCECSで必須というわけではありません。疲労骨折など、症状が似ている別の疾患を確認する目的で行われることがあります。

あきと
「走るとすねが張るからコンパートメント症候群」とは限りません。
症状が繰り返す場合は、他の下腿障害も含めて評価してもらうことが大切です。

下腿コンパートメント症候群の治療

慢性労作性コンパートメント症候群では、症状の程度、競技レベル、日常生活への影響、スポーツ復帰の目標などによって治療方針を検討します。

保存療法

まず、症状を強く誘発しているランニング量や運動強度を調整し、下肢全体の機能やランニング動作を確認しながら運動を再構築することがあります。

保存療法として、ランニング動作の修正、マッサージなどさまざまな方法が報告されていますが、研究は小規模なケースシリーズなどが中心で、十分なエビデンスが確立しているとはいえません[3]。

そのため、「フォームを変えれば治る」「ストレッチをすれば改善する」と一律に考えず、それぞれの症状や競技動作に合わせて対応する必要があります。

手術療法

症状によってスポーツ活動が大きく制限され、保存療法を行っても十分に改善しない場合などには、筋膜切開術(fasciotomy)が検討されます。

筋膜を切開してコンパートメント内の圧を逃がしやすくする手術で、スポーツ復帰が可能となる症例も多く報告されています。一方、手術後の満足度やスポーツ復帰率には研究ごとに幅があり、すべての選手が同じ経過をたどるわけではありません[2]。

なお、外傷後などに発生する急性コンパートメント症候群では治療方針が異なり、緊急の筋膜切開術が必要となることがあります[5]。

下腿コンパートメント症候群のリハビリテーション

リハビリでは、単に下腿の筋肉をほぐすのではなく、どのくらいの負荷で症状が出るのかを把握しながら、運動負荷を段階的に戻していくことが大切です。

保存療法で進める場合

症状を繰り返している時期は、痛みを我慢しながら毎回同じ距離を走り続けるのではなく、一度ランニング量やスピードを調整します。

そのうえで、必要に応じて以下のような項目を確認します。

  • 足関節の動きや下腿の筋力
  • 股関節・体幹を含めた下肢全体の筋力と動作
  • ランニングフォームや接地動作
  • 症状が出る走行時間・速度・距離

筋力トレーニングやランニングを再開するときは、運動中だけでなく、運動後やその後の症状の残り方も確認しながら負荷を調整します。

ランニング動作の修正によって改善した報告もありますが、すべてのCECSに共通する方法が確立されているわけではありません[3]。

筋膜切開術後のリハビリ

手術後は、まず創部や腫れの状態を確認しながら、歩行、関節可動域、筋力を段階的に回復させます。

その後は、状態に応じて以下のようにスポーツ負荷を上げていきます。

  1. 日常生活・歩行を安定させる
  2. 下肢の筋力トレーニングを進める
  3. ジョギングを再開する
  4. 走行速度や走行量を増やす
  5. ジャンプ・方向転換など競技動作へ進む

ただし、CECS手術後のリハビリには、広く統一されたエビデンスベースの進行基準がまだありません。Systematic Reviewでも、スポーツ復帰の時期は多く報告されている一方、客観的な機能基準を用いて復帰を判断した研究は確認されていません[4]。

そのため「術後○週だから走れる」と一律に判断せず、執刀医・主治医のプロトコルを優先しながら、創部、症状、筋力、運動への反応を確認して進めることが大切です。

あきと
リハビリでは「何週間たったか」だけではなく、「今の負荷をかけても症状が戻らないか」を確認しながら進めていきましょう。

スポーツ復帰の考え方

慢性労作性コンパートメント症候群では、痛みがなくなったことだけでスポーツ復帰を判断しないことが大切です。

CECSに対する統一された客観的なスポーツ復帰基準はまだ十分に確立されていないため[4]、次のような項目を確認しながら競技負荷を段階的に戻します。

スポーツ復帰で確認したいポイント
  • 日常生活や歩行で症状がない
  • 必要な関節可動域と下肢筋力が回復している
  • ジョギングから徐々に速度・距離を上げても症状が再現しない
  • ジャンプや方向転換など競技に必要な動作が行える
  • 練習量を増やしても痛み・張り・しびれなどが再発しない

ランニング競技では走行時間・距離・速度、球技ではダッシュや方向転換など、競技によって必要な負荷が異なります。

いきなり通常練習へ戻すのではなく、ランニング、競技ドリル、部分練習、通常練習へと段階的に参加範囲を広げていきましょう。

あきと
「ジョギングができた=完全復帰」ではありません。
実際の競技で必要になるスピードや方向転換まで確認してから、練習量を少しずつ戻していくことが大切です。

まとめ

下腿コンパートメント症候群のうち、スポーツで問題になる慢性労作性コンパートメント症候群では、走るとすね・ふくらはぎが痛む、張るといった症状が繰り返し、休息によって軽減することが多いです。

ただし、運動時の下腿痛は疲労骨折など他の障害でも起こるため、症状だけで自己診断することはできません。

特に、外傷後に強い痛みや腫れ、しびれ、動かしにくさが急速に出てきた場合は、急性コンパートメント症候群の可能性もあるため早急に医療機関へ相談しましょう。

治療やリハビリ、スポーツ復帰は一律の期間ではなく、症状、治療方法、競技特性、運動後の反応を確認しながら段階的に進めることが大切です。

参考文献

[1]Vogels S et al. Clinical Consensus on Diagnosis and Treatment of Patients with Chronic Exertional Compartment Syndrome of the Leg: A Delphi Analysis. Sports Med. 2022;52(12):3055-3064. PubMed ID: 35904751

[2]Dean RS et al. Chronic exertional compartment syndrome is frequently diagnosed through static compartment pressure measurements and managed with fasciotomy: A systematic review. J ISAKOS. 2024;9(1):71-78. PubMed ID: 37778507

[3]Rajasekaran S et al. Nonoperative Management of Chronic Exertional Compartment Syndrome: A Systematic Review. Curr Sports Med Rep. 2016;15(3):191-198. PubMed ID: 27172084

[4]Gawel RJ et al. Rehabilitation and return to activity criteria after operative management of chronic exertional compartment syndrome of the leg: a systematic review. Phys Sportsmed. 2024;52(2):125-133. PubMed ID: 37191583

[5]Coe MP et al. AAOS Clinical Practice Guideline: Management of Acute Compartment Syndrome. J Am Acad Orthop Surg. 2021;29(1):e1-e4. PubMed ID: 33201042

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