
今回は五十肩(肩関節周囲炎)になってしまったときの対処法について、できるだけわかりやすく整理していきます。
五十肩は、その名の通り50歳前後の方に多くみられる肩の痛みの通称です。病院では肩関節周囲炎(あるいは凍結肩/癒着性関節包炎)と説明されることが多いと思います。
このブログでは、以降「肩関節周囲炎」と表記します(一般的な「五十肩」とほぼ同じ意味で扱います)。
- 肩関節周囲炎(五十肩)で起こりやすい症状と経過の目安
- 病院で行う検査・治療(注射/画像検査/サイレントマニピュレーション等)の考え方
- 時期(炎症期・拘縮期・回復期)に合わせたリハビリの進め方
- 受診を急いだ方がよい「赤旗サイン」
肩関節周囲炎の「痛み」や「肩の可動域制限」は長く続くこともあるため、困っている方も多いのではないでしょうか。経過は人によって差がありますが、一般に数か月〜年単位で続くこともあります[1]。
それでは、肩関節周囲炎について順番に解説していきます。
目次
肩関節周囲炎とは?
肩関節周囲炎とは、肩の痛みと、肩の動かしにくさ(可動域制限)を主な症状とする状態の総称です。
そのため、大きなケガ(はっきりした受傷機転)がなく、肩の痛みや動かしにくさが目立つ場合に、幅広く「肩関節周囲炎」と説明されることがあります。
症状は時期によって変わることが多く、痛みが強い炎症期、動かしにくさが目立つ拘縮期、痛みが落ち着き可動域が戻ってくる回復期に分けて考えられることがあります。
痛みや可動域制限は、負担のかけ方やリハビリの進め方が合わないと長引くことがあります。無理に頑張りすぎず、時期に合わせた対応が大切です。
肩関節周囲炎が起こりやすいシーン(きっかけ)
肩関節周囲炎は、スポーツをしていない一般の方にも多い状態です。
物を持った時、不意に肩が意図しない方向に引っ張られた時など、痛くなった瞬間がはっきりしている場合もあれば、
徐々に痛みや動かしにくさを自覚するような、明確な誘因がないケースもあります。
肩関節周囲炎のよくある症状
主な症状は、肩の「痛み」と「可動域制限」です。
痛みは、動かした時の痛みと、寝ている時の痛み(夜間痛)に分けて説明されることが多いです。
先に確認:受診を急いだ方がよいサイン(赤旗)
肩の痛みがすべて五十肩とは限りません。次のような場合は、できるだけ早めに整形外科などで相談してください。
- 転倒などの後から強い痛みが続く/腕が上がらない(骨折や腱断裂などの可能性)
- 強い腫れ・熱感、発熱、赤く腫れる(感染などの可能性)
- しびれが強い、手の力が入りにくい、首から腕に電気が走る感じ(神経の問題の可能性)
- 夜間痛が非常に強く、安静にしても改善しない/急に悪化している
病院で行う検査
基本的には、診察(問診・触診・可動域の確認など)で肩関節周囲炎が疑われます。
ただし、前述したように肩関節周囲炎はあくまで「総称」でもあるため、症状が強い場合や他の原因が疑われる場合には、
MRI検査、エコー検査、レントゲン検査などで、痛みの原因となる組織(腱板など)の損傷や、別の病気がないかを確認することがあります。
画像検査の他には、問診(痛みが出た状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(関節可動域、Neerテスト、棘上筋テストなど)を組み合わせて評価します。
肩関節周囲炎と診断されたら(治療の考え方)
基本は保存療法(手術をしない治療)で、痛みのコントロールとリハビリを行いながら改善を目指します。
特に、炎症期・拘縮期・回復期に応じて適したリハビリを選ぶことが大切です。痛みが強い時期に無理をすると、かえってつらさが長引くこともあります。
また、痛みの軽減目的で関節内への注射(ステロイド注射など)が検討されることがあります。短期的には痛みや機能の改善に役立つ可能性があると報告されています[2]。
さらに、可動域の改善を狙って関節包の拡張(ハイドロリリース/関節包内の拡張注入:hydrodilatation)が検討されることもあります。研究では、障害(不自由さ)や外旋可動域が一時的に改善する可能性が示されていますが、長期的な位置づけは議論もあります[3]。
一方で、肩の拘縮が強く、どうしても保存療法で改善しにくい場合には、サイレントマニピュレーション(麻酔下徒手授動術)を行うこともあります。適応やタイミングには幅があり、合併症の報告もあるため、専門医と十分に相談して判断します[4]。
日本語では「非観血的関節受動術」と説明されることがあります。
肩関節周囲炎のセルフチェック(目安)
正確な診断は医療機関での評価が必要ですが、目安として次のような特徴があることが多いです。
- 腕を上げる・背中に手を回す動作がつらい(服の着脱、髪を結ぶ、エプロンの紐など)
- 人に動かしてもらっても(他動でも)動かしにくい感じがある
- 夜間痛で寝返りがつらい/肩を下にして眠れない
ただし、腱板断裂など別の疾患でも似た症状が出ることがあります。痛みが強い・急に悪化した・力が入らないなどがあれば、早めに受診を検討してください。
肩関節周囲炎のリハビリテーション
ここからは、肩関節周囲炎のリハビリテーションの流れを説明していきます。
リハビリの全体像(炎症期・拘縮期・回復期)
基本的には保存療法でリハビリを行い、症状の改善を目指します。
期間は目安ですので、痛みの程度や生活の困りごとに合わせて、無理のない進め方に調整していきましょう。
✅ 患部の炎症を抑える
✅ 姿勢を良くする
✅ 肩の可動域を改善する
✅ 肩のインナーマッスルを鍛える
★回復期
✅ 良い姿勢をキープ、可動域・筋力を継続して改善する
・姿勢を良くする練習!(←胸を張る練習、普段も姿勢を良く)
夜間痛の背景は一つに決めきれませんが、ここでは大きく分けて「炎症」と「肩のズレ(負担のかかり方)」の2つを意識します。
炎症が強いときはアイシング、肩まわりの負担が偏っているときは背中・肩甲骨まわりのストレッチを丁寧に行いましょう。
・痛みのない範囲で肩のストレッチ!(←硬くなった肩のストレッチ)
・肩のインナーマッスルの筋トレ!(←チューブなどで筋肉を鍛える)
せっかく肩のストレッチを行っても、姿勢が崩れると戻りやすいので、日常生活で少しずつ整えていきましょう。
・筋トレも継続!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)
再発予防のために、普段から姿勢をよくする意識を続けていきましょう。
復帰目安(仕事・スポーツ)
復帰の目安は、痛みの強さ・可動域・必要な動作(仕事/競技特性)で変わります。
- 日常生活:夜間痛が落ち着き、服の着脱や洗髪が「我慢しなくても」できる範囲に近づくと楽になりやすいです。
- スポーツ:投球・コンタクトなど肩への負荷が高い競技は、可動域と筋力が戻ってから段階的に。
「急いで治す」よりも、時期に合わせて痛みを悪化させない進め方の方が結果的に近道になることもあります。経過が長いケースもあるため[1]、不安が強い場合は医療機関やリハビリで相談しながら進めましょう。
FAQ(よくある質問)
Q1. 五十肩は放っておけば必ず治りますか?
以前は「自然に治る」と言われることも多かったですが、長期に症状が残るケースも報告されています。自然経過だけで必ず完全に元通りになる、とは言い切れないため[1]、生活で困るほどの痛みや動かしにくさが続く場合は相談をおすすめします。
Q2. 痛いけど、動かした方がいいですか?
時期によります。痛みが強い炎症期は、強い痛みを我慢して動かしすぎるとつらさが増えることがあります。痛みが落ち着いてきた拘縮期〜回復期で、痛みの出方を見ながら少しずつ可動域を広げていくイメージが安全です(本文の流れを参考にしてください)。
Q3. 注射は効果がありますか?
関節内ステロイド注射は、短期的に痛みや機能の改善に役立つ可能性が示されています[2]。一方で、症状の時期や体質、治療の組み合わせで効果は変わるので、医師と相談しながら選択するのが良いです。
Q4. ハイドロリリース(関節包の拡張注入)はどうですか?
研究では、障害(不自由さ)や外旋可動域が一時的に改善する可能性が示されています[3]。ただし長期的な位置づけは議論もあるため、痛みの時期やリハビリの状況も含めて、医師と適応を確認するのがおすすめです。
Q5. サイレントマニピュレーションは安全ですか?
可動域改善を狙える一方で、合併症がゼロではありません[4]。適応・タイミング・他の選択肢(注射、拡張注入、リハビリなど)を含め、専門医の説明を受けた上で判断することが大切です。
まとめ
ここまで、肩関節周囲炎(五十肩)の考え方、検査、治療、リハビリテーションの流れを整理しました。
肩関節周囲炎は、時期に合わない頑張り方をするとつらさが長引くことがあります。炎症期・拘縮期・回復期を意識しながら、痛みと動かしにくさのバランスを見て進めていきましょう。
また、赤旗サイン(強い腫れ・発熱・しびれ・外傷後の強い痛みなど)がある場合は、早めに医療機関で相談してください。
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参考文献
[1]Wong CK et al. Natural history of frozen shoulder: fact or fiction? A systematic review. Physiotherapy. 2017;103(1):40-47. PubMed ID: 27641499
[2]Sun Y et al. Intra-articular Steroid Injection for Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials With Trial Sequential Analysis. Am J Sports Med. 2017;45(9):2171-2179. PubMed ID: 28298050
[3]Poku D et al. Efficacy of hydrodilatation in frozen shoulder: a systematic review and meta-analysis. Br Med Bull. 2023;147(1):121-147. PubMed ID: 37496207
[4]Kraal T et al. Manipulation under anaesthesia for frozen shoulders: outdated technique or well-established quick fix? EFORT Open Rev. 2019;4(3):98-109. PubMed ID: 30993011

