
股関節の内側に痛みを感じたことはありませんか?
特にスポーツ中のキック動作や方向転換で急に痛みが走った場合、それは「股関節内転筋肉ばなれ(Adductor Strains)」かもしれません。
このケガは見落とされやすい一方で、放置すると再発や長期離脱につながることもあります。
今回は、内転筋肉ばなれの原因や症状、治療・予防のポイントについてわかりやすく解説します!
目次
内転筋肉ばなれとは?
股関節内転筋肉ばなれは、内転筋群(図1)に過度の負荷がかかることで内転筋が損傷した状態をさします。
重度の内転筋肉ばなれではない場合、内転筋に関連する鼠径部の痛みのほとんどは一時的なもので、数週間で寛解します[1,2]。
しかしながら、内転筋を負傷したアスリートが適切な対応をせずにそのままプレーを継続すると、長期化してしまう可能性があります[3]。
内転筋肉ばなれも一般的な肉ばなれと同様に、Ⅰ度(軽度)、Ⅱ度(中等度)、Ⅲ度(重度)と表記されます。


軽度の痛みであればあまり長期化することはありませんが、そのまま放置すると厄介な痛みにつながってしまうことがあります。
内転筋肉ばなれになりやすいシーン
急激な方向転換やキック動作が行われるサッカー、ホッケー多く見られると言われています[1,2,4]。
また、姿勢が悪かったり、骨盤などの歪みが内転筋肉ばなれにつながりやすいです。
内転筋肉ばなれのよくある症状
・内転筋のストレッチ痛
・内転動作(脚を閉じる動作)での痛
・歩行、走行時の痛み
・(重症時)内出血や腫れ
主な症状は、太もも内側の痛みです。
股関節を開く内転筋のストレッチなどで痛みが誘発されます(図2)。

病院で行う検査
内転筋肉ばなれは、一般的に診察とMRI検査画像で判断されます。
X線は疲労骨折などの骨の損傷の有無が確認できます。
筋肉の損傷は、エコー検査やMRI検査で確認できます。
一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(内転筋の伸長時・収縮時痛)などを行います。
内転筋肉ばなれと診断されたら
基本的には保存療法で復帰を目指します。

しっかりと専門のスポーツドクターに相談しながら治療方針を決めていきましょう。
ここからは、内転筋肉ばなれのリハビリについて説明していきますね。
内転筋肉ばなれのリハビリテーション
保存療法でのリハビリのポイントを解説していきます!
リハビリのポイントは、「内転筋の治癒」「股関節・骨盤の歪み・動きの改善」、「体幹の安定性の改善」、「全身の連動性の改善」です!
・腫れ・痛みが悪化していないこと!
・骨盤・背骨の歪み、股関節の可動域を改善する(←胸郭、股関節、太ももの筋肉のストレッチ・ほぐし)
・腹圧・背筋の強化!
・その他痛みの出ない患部外トレーニング

・体幹・股関節の筋トレ!(姿勢を良く生活しましょう)
・痛みなく患部の筋トレを開始してから1~2週後の徐々にジョギングをスタート!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
①股関節のストレッチで左右差なし
②片脚のスクワットが左右とも安定してできる
③図2のストレッチ、収縮時痛の左右の感覚の差もない

・各種スポーツ動作を開始する!(キック動作などは要注意!)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

運動した後の股関節の筋肉の硬さも要チェックです!

再発しないように復帰後のチェックも行いましょう!
まとめ
股関節内転筋肉ばなれは、スポーツ中によく起こるケガのひとつですが、早期に適切な対応をすることで回復を早め、再発を防ぐことが可能です。
日頃から柔軟性と筋力をバランスよく維持し、ウォーミングアップやクールダウンを丁寧に行うことが予防の鍵となります。
痛みを感じたら無理をせず、早めに専門家の診断を受けるようにしましょう!

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参考文献
[1]Eckard TG, et al. : Epidemiology of Hip Flexor and Hip Adductor Strains in National Collegiate Athletic Association Athletes, 2009/2010-2014/2015. Am J Sports Med. 2017 Oct;45(12):2713-2722