閉鎖筋肉ばなれとリハビリテーション

今回は閉鎖筋肉ばなれ(内閉鎖筋:obturator internus muscle、外閉鎖筋:obturator externus muscle )の対処法について書いていきます。

キックした瞬間に、股関節の奥深くに違和感や痛みを感じたことはありませんか?

股関節の深層にある「閉鎖筋」の損傷が疑われます。あまり聞き慣れない筋肉ですが、実は重要な働きをしているんです。

この記事では、閉鎖筋肉ばなれの原因や対処法をわかりやすく紹介します!

 

スポンサーリンク

閉鎖筋肉ばなれとは?

閉鎖筋肉ばなれとは、内閉鎖筋または外閉鎖筋(図1,2)の筋繊維が部分的または完全に損傷することをさします。

比較的まれなケガですが、サッカーなどのキックを繰り返すスポーツで報告されています[,,]。

「おしりの下の方が痛い」というのが主な訴えですが、外閉鎖筋損傷の場合は、「股関節が痛い」や「前側が痛い」という訴える場合もあります。

 

閉鎖筋 肉ばなれ 内閉鎖筋 外閉鎖筋
図1:閉鎖筋のイメージ図。左側の図は骨盤を前方見ており、閉鎖膜の外側に起始をもつのが外閉鎖筋です。右側の図は骨盤を後方から見ており、閉鎖膜の内側に起始をもつのが内閉鎖筋です。

 

あきと

閉鎖筋って3Dじゃないとイメージしにくいですよね。
深層外旋六筋(梨状筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋)に含まれる外旋筋です!

 

外閉鎖筋 内閉鎖筋
図2:外閉鎖筋と内閉鎖筋のイメージ図。前方から見える骨盤(閉鎖膜)の外側から出ているのが外閉鎖筋、後方から見える骨盤(閉鎖膜)の内側から出ているのが内閉鎖筋です。

閉鎖筋肉ばなれになりやすいシーン

基本的にはキック動作のインパクトの瞬間で損傷すると報告されています。

また、スポーツ中に股関節回旋運動が強制された場合、交通事故などによる股関節脱臼に伴う損傷などが報告されています。

 

 

閉鎖筋肉ばなれのよくある症状

・股関節の回旋動作が痛い
・股関節のストレッチ、力を入れると痛い
・キックをすると痛い
・走ると痛い

主な症状は、股関節回旋時のおしりの奥の方痛みです(図3)。

 

閉鎖筋肉ばなれ 症状 股関節回旋 ストレッチ
図3:閉鎖筋肉ばなれの症状のイメージ図。股関節を内旋させると、閉鎖筋にストレッチがかかり、おしり側や前側に痛みが生じます。逆に股関節外旋方向に力をいれると閉鎖筋が収縮し、痛みが生じることがあります。

 

あきと

外閉鎖筋は股関節を内転させる作用もあると言われていますので、内転筋のチェックのときのように股関節開くストレッチや内転方向への収縮で痛みが生じることも多いです。

 

 

病院で行う検査

閉鎖筋損傷の診断は、診察とMRIなどの画像検査で行います。

MRI検査では、筋肉などの軟部組織の損傷や疲労骨折の有無を確認することができます(図4)。

疲労骨折、裂離骨折の鑑別のためのX線検査や表層の軟部組織の損傷を確認するための超音波検査を行うこともあります。

 

一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(閉鎖筋の伸長時・収縮時痛)などを行います。

 

内閉鎖筋肉ばなれ mri
図4:内閉鎖筋損傷のMRI画像。Alexandros Toliopoulos. 2022.(文献1)より引用しています。

             

 

閉鎖筋肉ばなれと診断されたら

基本的には保存療法で復帰を目指します。

 

あきと

痛みはあまり長引かず、比較的早く動き出せることが多いですが、再発がとても多いため、
しっかりと専門のスポーツドクターに相談しながら治療方針を決めていきましょう。

 

閉鎖筋肉ばなれのリハビリテーション

保存療法でのリハビリのポイントを解説していきます!

リハビリのポイントは、「閉鎖筋の柔軟性・筋力の改善」「股関節・骨盤の歪み・動きの改善」、「体幹の安定性の改善」、「全身の連動性の改善」です!

リハビリを進めるためのチェックポイント!
・痛み(伸長時・収縮時)が悪化していないこと!
 リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
リハビリ前期(筋肉の伸長時痛・収縮時痛がある時期 1週間〜6週間)
・骨盤・背骨の歪みを改善する(←胸郭、股関節、太ももの筋肉のストレッチ・ほぐし)
・呼吸の練習!(←腹圧など)
・その他痛みの出ない患部外トレーニング

あきと
痛みの出ないエクササイズはある程度積極的に行ってOKです。
特に体幹の柔軟性・安定性改善のエクササイズはたくさんやっておきましょう!
リハビリ中期(伸長時痛・収縮時痛なし 1〜10週間)
・股関節のストレッチ!(全方向に積極的に動かしましょう)
・体幹・股関節、太ももの筋トレ!
・スクワット・片脚スクワットなどの荷重トレーニング!
・痛みなく患部の筋トレを開始してから1~2週後の徐々にジョギングをスタート!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
ジョギングを開始する前に下の①~③を達成できるようにしましょう!
①股関節の可動域に左右差なし
②股関節の筋出力に左右差無し

③片脚のスクワットが左右とも安定してでき

あきと
股関節の柔軟性・筋力と動作が安定したのを確認し、ジョギングを開始しましょう!
リハビリ後期(リハビリ中期の強度を上げても痛みが出ない 8週〜16週)
・スプリント、ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・各種スポーツ動作を開始する!(キック動作などは要注意!)

・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
キック動作は患部への負担が大きいため、特に注意が必要です!
トレーニングした体幹が安定していること、全身が連動して使えていることを意識して徐々にキックを開始しましょう!
復帰期(競技の強度を上げても痛くない 12〜20週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
「筋の硬さ(図4)」は要注意です!
再発しないように復帰後のチェックも行いましょう!

まとめ

股関節の奥の痛みは、軽視せずに早めの対処が大切です!

閉鎖筋は体の深層で働く重要な筋肉であり、リハビリも丁寧に進める必要があります。

症状を見逃さず、確実な回復と再発防止を目指しましょう。

あきと
【お知らせ】
「もっとこれが知りたい!」「こんな記事を書いて欲しい!」「ケガのことを相談したい!」
などご要望をお受けしています!
〈お問い合わせ〉からお気軽にご連絡ください!

参考文献

[1]Alexandros Toliopoulos. : Isolated Obturator Internus Muscle Strain Injury in a Professional Football Player: A Case Report. Cureus. 2022 Apr 8;14(4):e23949. 

[2]Caoimhe Byrne, et al. : Obturator internus muscle strains. Radiol Case Rep. 2016 Dec 16;12(1):130–132. 

[3]Morteza Khodaee. et al. : Obturator Internus and Obturator Externus Strain in a High School Quarterback. Asian J Sports Med. 2015 Sep 23;6(3):e23481.

 

スポンサーリンク
おすすめの記事