膝外側側副靭帯(LCL)損傷とは?原因・治療・リハビリ完全ガイド

今回は膝外側側副靭帯(LCL:lateral collateral ligament)を損傷してしまった際の対処法について書いていきます。

LCL損傷は稀なケガではありますが、他の組織の損傷(合併損傷)を伴うことが多く、中等度以上では痛みが残りやすく厄介なケガです。

この記事では、膝LCL損傷の原因・症状・検査・治療(保存療法/手術適応)・リハビリの流れをわかりやすく解説します!

この記事の要点
・LCL損傷は「膝が外に倒される(内反ストレス)」ことで起こりやすい
・単独損傷のみではなく、半月板/PCL/PLCなどの合併損傷に注意
・軽症は保存療法が基本、中等度以上はリハビリが超重要
・腫れが強い/不安定感が強い/膝が伸びない等は早めに受診

 

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膝外側側副靭帯(LCL)損傷とは?|解剖と合併損傷

膝LCL損傷とは、膝の外側にある大腿骨外側上顆から腓骨頭に付着している外側側副靭帯(図1)が損傷(部分断裂、完全断裂など)している状態をさします。

膝LCL自体の損傷はⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度で表されますが、それに加えて重要なのが、「他の組織の損傷(合併損傷)」の有無です。

LCL損傷と同時に、膝外側半月板損傷、膝後十字靭帯(PCL)損傷、膝関節後外側支持機構(Posterolateral Corner : PLC)損傷が合併することが多いので注意が必要です。

あきと

膝関節後外側支持機構(PLC)は外側側副靭帯膝窩筋腱膝窩腓骨靭帯で構成されています。
膝関節の内反、外旋の安定性に関与しています[]!

 

膝外側側副靭帯(LCL)損傷 解剖 右膝
図1:外側側副靭帯(LCL)のイメージ図。大腿骨外側上顆から腓骨頭に付着しています。

 

膝LCL損傷の原因|起こしやすいシーン(受傷機転)

ラグビーなどのコンタクトスポーツで、膝が外に持っていかれた時(内反ストレス)に受傷しやすいです。

膝の内側からタックルされて、膝が内反方向に強制されると受傷します。

あきと

PLC損傷は膝前十字靭帯損傷や膝後十字靭帯損傷に合併して生じることが多いと言われています[]!

前述したように、他の損傷を合併している可能性もありますので、必ず病院を受診しましょう。

 

ラグビー タックル 膝LCL損傷 受傷機転

 

膝LCL損傷の症状|痛みの場所と特徴

・膝の外側が痛い(図2)
・膝を内反(外側に倒す)すると痛い
・あぐらをかくと痛い

↓損傷が強いと
・膝の曲げ伸ばしで痛い

あきと

合併する損傷によって症状がかなり違います。
リハビリのポイントも変わってきますね!

 

膝外側側副靭帯(LCL)損傷 痛みの場所
図2:外側側副靭帯損傷で痛みが出やすい部位のイメージ図。

 

セルフチェック|LCL損傷が疑われるサイン

※痛みが強い場合や不安がある場合は無理に行わず、受診を優先してください。

チェック①:膝の外側(腓骨頭の少し上〜関節裂隙あたり)を押すとピンポイントで痛い
チェック②:膝を軽く曲げた状態で、膝が外に倒れる動き(内反)で痛い/怖い
チェック③:歩く・方向転換で外側がズキッとする/外側が不安定に感じる
チェック④:腫れが強い、膝が引っかかる、伸びない(ロッキングっぽい)

 

受診の目安|すぐ病院に行くべきケース

以下に当てはまる場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
・膝がぐらつく/踏ん張れない(不安定感が強い)
・腫れが強い、熱感が強い
・膝が伸びない/曲げ伸ばしで強い痛み(半月板などの合併損傷の可能性)
・痛みが数日で明らかに軽くならない(特にスポーツ復帰を急ぐ場合)

 

病院で行う検査|診察・MRIで何が分かる?

軽度の損傷の場合は、診察のみでLCL損傷と診断がつく場合もあります。

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(内反ストレステスト)などを行います。

一方で、他の半月板損傷や靭帯損傷も合併している場合が多いため、MRI(磁気共鳴画像)検査で損傷の程度や合併損傷の有無を確認する必要があります。

 

膝LCL損傷と診断されたら|治療方針(保存療法/手術)

膝LCLの単独損傷では、基本的には保存療法となります。

軽傷の場合は1〜2週間ほどで痛みが無くなることも多いため大きな問題になりにくいですが、中等度以上の場合や合併損傷がある場合は痛みが残りやすいため、リハビリが非常に重要です。

半月板損傷やPCL損傷、PLC損傷を合併すると、手術療法が適応される場合もありますので、病院受診は必ずするようにしてください。

 

膝LCL損傷の保存療法|リハビリの流れ(目安)

基本的には保存療法でリハビリを行い、復帰を目指します!

ここでは「中等度の損傷で、軽い膝内反動揺性(LCLに緩みがある)」場合をイメージして、リハビリの流れを記載しています。

(損傷の程度や合併損傷の有無によってスケジュールは変わるため、あくまで目安だと思ってください)

 

炎症期(受傷後3日ほど)
RICE処置

あきと

RICE処置はとても大切です!
RICE処置の質が悪いと痛みや腫れが残り、今後のリハビリが大変になります…

 

リハビリ前期(3日〜3週)
・可動域を改善する!(←膝の曲げ伸ばし、周囲の筋肉のマッサージ)
・太ももの前と後の筋肉を鍛える!(←大腿四頭筋:特に内側広筋、ハムストリングスの筋トレ)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと

膝を伸ばしきった時に痛みや緩みがある場合は、無理しないようにしましょう。

 

リハビリ中期(3週〜5週)
・体重をかけた筋トレをする!(←スクワット、片脚スクワット、ランジなど)
・ジョギングを開始する!
・少しずつ直線のランニング速度をアップする!

あきと

ポイントは足首の安定性です!
足首が不安定だと、LCL付着部の腓骨の位置が悪くなるため、痛みが出やすいんです。

 

リハビリ後期(5週〜7週)
・ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと

膝が外に倒れると痛みが出やすいです。
足首と体幹を安定させて、しっかりと動きの練習をしましょう!

 

復帰期(6〜8週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと

ポイントは安定性です!
練習前に「しっかり踏ん張れて力が入るか」をチェックしていきましょう!

 

ラグビー 膝LCL損傷 復帰

 

よくある質問(FAQ)|膝LCL損傷

Q. どれくらいで治りますか?(復帰目安)

軽症は1〜2週間で日常生活の痛みが落ち着くことが多いですが、中等度以上や合併損傷がある場合は数週間〜それ以上かかることがあります。スポーツ復帰は「痛みがない」だけでなく「安定性」「動作の質」が重要です。

Q. サポーターは必要ですか?

損傷の程度や不安定感の強さによって有効な場合があります。医師やリハビリの専門家に相談し、必要に応じて使用しましょう。

Q. 受診のタイミングは?

腫れが強い、不安定感が強い、膝が伸びない/引っかかる、痛みが長引く場合は早めの受診がおすすめです。

 

まとめ|膝外側側副靭帯(LCL)損傷

ここまで、膝LCL損傷後の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

膝LCL損傷は軽傷であればそれほど苦労しませんが、緩さが残ると痛みが残りやすいケガです。

安定性や身体の使い方が重要なため、しっかりとリハビリをしていきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]Cooper JM et al. : Posterolateral corner injuries of the knee: anatomy, diagnosis, and treatment. Sports Med Arthrosc Rev. 2006 Dec;14(4):213-20.

[2]LaPrade RF et al. : Injuries to the posterolateral aspect of the knee. Association of anatomic injury patterns with clinical instability. Am J Sports Med. 1997 Jul-Aug;25(4):433-8.

 

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