
今回はジャンパー膝(Jumper's Knee/膝蓋腱障害:Patellar tendinopathy/膝蓋靭帯炎)について書いていきます。
スポーツ選手の膝の痛みの中でも起こりやすく、特にジャンプ・着地・ストップ動作が多い競技で問題になりやすい障害です。
日常生活でも階段の昇降やしゃがみ動作で痛みが出ることがあり、「なかなか治らない…」と困っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ジャンパー膝の原因・症状・セルフチェック・病院の検査・治療(保存/手術)・リハビリ・復帰目安まで、わかりやすく整理して解説します!
・ジャンパー膝(膝蓋腱障害)とは何か(解剖・特徴)
・原因(なぜ繰り返しで痛くなるのか)
・セルフチェックの方法(悪化サイン含む)
・病院で行う検査(エコー/MRIの使い分け)
・改善のためのリハビリ戦略(腱の負荷調整・運動療法)[2][3][4]
目次
ジャンパー膝(膝蓋腱障害)とは
ジャンパー膝は、お皿(膝蓋骨)とスネの骨(脛骨)をつないでいる膝蓋靭帯(=膝蓋腱)の付着部周辺に、運動時の痛みや圧痛が生じる状態を指します(図1)。
臨床では「膝蓋腱障害(Patellar tendinopathy)」として扱われることが多く、単純な“炎症”だけではなく、腱の変化(変性を含む)が関与する可能性がある点がポイントです[4]。

膝蓋靭帯(腱)は、膝蓋骨(お皿)を介して大腿四頭筋(前ももの筋肉)につながっています(図2)。
そのため、運動で大腿四頭筋に強い負荷が繰り返しかかると、膝蓋骨周辺〜膝蓋靭帯へのストレスが増えやすくなります。

ジャンパー膝のリスク因子を調査したシステマティックレビューでも、下肢の柔軟性や筋力・身体特性などが関連しうると報告されています[1]。
原因(なぜジャンパー膝が起こるのか)
ジャンパー膝は、膝蓋靭帯(腱)に繰り返し負荷(ジャンプ・着地・減速)がかかることで発症しやすいとされ、慢性障害の一つとして扱われます。
また、治療では「痛いから完全に休む」だけでなく、腱に対する負荷を適切に調整しながら運動療法を進める考え方が重要になります[2][3][4]。
ジャンパー膝になりやすいシーン
代表的には、以下のような動作で痛みが出やすいです。
- ジャンプ・着地
- ストップ動作(急停止)
- 方向転換動作(カット動作)
- 階段昇降・しゃがみ込み

ジャンパー膝になりやすい人の特徴(リスク因子)
ジャンパー膝になる人・ならない人がいるのは、身体特性と負荷(練習量)の組み合わせが影響するためです。
リスク因子に関するレビューでは、体格、柔軟性、筋力、ジャンプ能力などが関連しうると報告されています[1](※ただし、個人差が大きいため「これだけが原因」と断定はできません)。
直接的な要因(膝蓋靭帯に負荷が集中しやすい)
- 前ももの筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性低下(硬さ)
- 膝蓋骨(お皿)の動き・位置の問題(追従性の低下)
- 内側広筋など、膝蓋骨の安定に関わる筋の機能低下

間接的な要因(負担が膝に偏りやすい)
- 姿勢が崩れて後方重心(膝が前に出やすい)
- 股関節がうまく使えず、膝で衝撃を受けやすい
- ハムストリングスなど下肢後面の柔軟性低下
股関節・体幹を使った動きに修正できると、膝の負担を分散できる可能性があります。

ジャンパー膝のよくある症状
ジャンパー膝では、以下のような症状が出やすいです(上ほど頻度が高いことが多いです)。
- 膝蓋靭帯(腱)を押すと痛い(圧痛)
- 階段昇降が痛い
- スクワットやジャンプで痛い
- 太ももに力を入れると痛い
- 前もものストレッチで痛い
痛みが強い・長引く場合は、運動量の調整が必要なケースが多いです。無理に我慢して続けると慢性化することがあるため注意しましょう。

セルフチェック(自分で確認できるポイント)
セルフチェックは目安です。強い痛み・腫れ・歩行困難がある場合は無理に確認せず、早めに病院で評価を受けましょう。
毎日チェックしたい4項目
- 圧痛:膝蓋靭帯(腱)付着部を押したときの痛み
- 荷重時痛:両脚スクワット/片脚スクワットでの痛み
- 収縮時痛:膝を伸ばし気味で太ももに力を入れたときの痛み
- ストレッチ痛:前ももストレッチでの痛み
この4つを記録し、痛みが減れば改善傾向、痛みが増える・広がるなら悪化傾向として負荷を調整しましょう。
受診を急いだ方がいいサイン(赤旗)
- 歩くだけでも強く痛い
- 急に「ブチッ」とした感覚があり、膝の前が腫れて力が入らない
- 膝が熱い・大きく腫れる・夜間痛が強い
- 痛みが2〜4週間以上改善しない(運動量調整しても)
病院で行う検査(エコー/MRI)
診察(問診・触診・動作テスト)でも診断がつくことがありますが、エコー(超音波)検査は腱の状態を評価するのに有用です。
症状が強い場合や、他の原因(骨・半月板・他の靭帯損傷など)を除外したい場合は、MRIで炎症や損傷の程度を確認することがあります。

治療(保存療法/手術)
基本は保存療法(運動療法+負荷調整)
多くのケースでは、まずは保存療法が中心になります。
運動療法として、腱に対する負荷を段階的にかけるプログラムが検討されており、エキセントリック運動や段階的な腱負荷エクササイズの有効性が報告されています[3][4]。
注射や手術が検討されるケースもある
保存療法で改善が乏しい場合、選択肢として注射や手術が検討されることもあります。
ただし、治療選択にはメリット・デメリットがあるため、病院でしっかり相談しましょう。たとえば、ある臨床研究では介入ごとの臨床効果の時間経過が異なる可能性が示されています[2]。
ジャンパー膝改善のためのセルフエクササイズ(強化版)
ここからは、自宅でできるセルフエクササイズの考え方をまとめます。
大事なのは、「痛みを0にする」より「悪化させずに負荷を上げていく」という発想です(やりすぎも、休みすぎも要注意)。
具体的なやり方を知りたい方は↓の記事をご覧ください。
痛みのモニタリング(運動の可否判断)
・運動後〜翌朝に痛みが増える
・圧痛が日ごとに増える
この3つが出る場合は、負荷が強すぎる可能性があります。練習量(ジャンプ回数)や種目の強度を調整しましょう。
自宅でできるストレッチ(やる順番の目安)
- 前もものストレッチ
→膝蓋靭帯(腱)への張力に関係しやすい部位 - 裏もものストレッチ
→姿勢・重心の改善に役立つ可能性 - お尻のストレッチ
→股関節が使えると膝の負担分散につながりやすい - 胸郭のストレッチ
→姿勢(体幹)を整える土台

自宅でできるエクササイズ(負荷の段階づけ)
研究では、エキセントリック運動や段階的な腱負荷エクササイズが検討されており、痛みと機能の改善に関連する報告があります[3][4]。
- 内側広筋の筋トレ
→膝蓋骨の安定に関与 - 殿筋の筋トレ
→股関節が安定すると膝の負担が偏りにくい - 姿勢を正す筋トレ(体幹)
→後方重心の改善に役立つ - 片脚スクワット(フォーム重視)
→片脚荷重でも姿勢が崩れない練習

復帰目安(いつ競技に戻れる?)
復帰までの期間は、痛みの強さ・期間(急性/慢性)・競技特性で大きく変わります。
・日常生活(階段・しゃがみ)で痛みが落ち着く
・片脚スクワットで痛みが増えない
・ジャンプ/着地の練習後に翌朝の痛みが悪化しない
この条件を満たしながら、段階的に練習量を戻すのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q1. ジャンパー膝は「安静にすれば治る」?
一時的に痛みが軽くなることはありますが、負荷を急に戻すと再発しやすいことがあります。負荷を調整しつつ運動療法を進める考え方が重要です[3][4]。
Q2. エキセントリック運動と段階的負荷エクササイズは何が違う?
エキセントリック運動は「伸ばされながら力を出す」運動で、従来から用いられてきました。近年は、より段階的に腱へ負荷を進める運動療法(PTLEなど)と比較した研究も報告されています[3]。
Q3. 注射は効く?
治療選択は状態によって異なります。ある臨床研究では、介入の種類により短期・長期の臨床効果が異なる可能性が示されています[2]。必ず医師と相談しましょう。
Q4. どれくらい痛かったら病院に行くべき?
歩行や階段で強く痛む、腫れ・熱感が強い、2〜4週間以上改善しない場合は受診をおすすめします。セルフケアで無理を続けると慢性化することがあります。
Q5. 再発予防で大事なことは?
練習量(ジャンプ回数)と身体機能(下肢・体幹・股関節)をセットで見直すことが大切です。リスク因子に関するレビューも参考になります[1]。
まとめ
ジャンパー膝(膝蓋腱障害)は起こりやすいケガですが、放っておくと慢性化しやすい障害です。
「休む」だけではなく、負荷を調整しながら運動療法で膝の安定性を改善していくことが重要になります[3][4]。
運動中・運動後・翌朝の痛みを記録し、悪化サインが出る場合は無理せず病院で評価を受けましょう!
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参考文献(PubMed)
[1]van der Worp H et al. Risk factors for patellar tendinopathy: a systematic review of the literature. Br J Sports Med. 2011;45(5):446-452. PubMed ID: 21367808
[2]Kongsgaard M et al. Corticosteroid injections, eccentric decline squat training and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy. Am J Sports Med. 2009. PubMed ID: 19793213
[3]Breda SJ et al. Effectiveness of progressive tendon-loading exercise therapy in patients with patellar tendinopathy: a randomised clinical trial. Br J Sports Med. 2021. PubMed ID: 33219115
[4]Larsson MEH et al. Treatment of patellar tendinopathy—a systematic review of randomized controlled trials. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012. PubMed ID: 22186923


