
今回は鵞足炎(がそくえん)について、スポーツ整形・リハビリの視点でわかりやすく解説します!
鵞足炎は、スポーツ選手だけでなく一般のランナーさんにも起こりやすい膝の内側の慢性痛の原因のひとつです。
この記事を読めば「まず何をすればいいか」が分かるように、セルフチェックや受診の目安も強化してまとめます。
この記事でわかること
- 鵞足炎(鵞足部痛)の原因と起こりやすい動き
- よくある症状と、他のケガとの見分け方(受診の目安)
- 自宅でできるセルフチェック(押す・動かす・片脚で確認)
- 病院で行う検査(超音波・MRIなど)と治療の流れ
- 再発予防のリハビリ・復帰目安・FAQ
目次
鵞足炎とは
鵞足(がそく)とは、膝下の内側(脛骨の内側)にある半腱様筋、薄筋、縫工筋の3つの腱が集まって付着している部位を指します。
この鵞足部(腱や周囲の滑液包など)に炎症や負荷が集中し、膝の内側下方の痛みが出る状態を一般に鵞足炎(pes anserine tendinobursitis など)と呼ぶことがあります。
鵞足部の痛みは、膝の内側の痛み=全部鵞足炎というわけではなく、半月板損傷や内側側副靭帯(MCL)損傷、変形性膝関節症などでも似た痛みが出ることがあるため注意が必要です。

3つの筋肉が付着している様子が「ガチョウの足」に似ていることから、鵞足と呼ばれるようになったと言われています。
原因
鵞足炎は、鵞足部に付着する腱や周辺組織へ反復するストレスがかかり、炎症・痛みが出る状態と考えられています。
鵞足炎になりやすいシーン
鵞足炎は徐々に症状が出てくる慢性障害としてみられることが多く、以下の場面で悪化しやすいです。
- ランニング(特に坂道・スピード練習・距離の急増)
- バスケットボール・サッカーなどの反復ダッシュや切り返し
- 階段昇降やしゃがみ動作が多い生活・仕事

鵞足炎になりやすい人の特徴
鵞足炎のリスクには、体の硬さやフォーム、筋力バランス、体格などが関与する可能性があります。リスク因子を検討した研究も報告されています[1]。
直接的な原因
- 鵞足に付着する筋(半腱様筋・薄筋・縫工筋)が硬い/張りやすい
- 膝にねじれが出やすい(Knee-in Toe-out など)
- 急な運動量増加(練習量・走行距離・強度の上げすぎ)
半腱様筋・薄筋・縫工筋の硬さは、付着部である鵞足部を引っ張りやすくし、痛みに影響する可能性があります。
間接的な原因
- 体幹が弱い(骨盤が安定しにくい)
- 殿筋が弱い(股関節の安定性が低い)
- 足首が不安定(下腿のねじれが増えやすい)
体幹・股関節・足首が不安定だと、膝周りの「グラつき」を止めるために鵞足部への負担が増えることがあります。
骨盤を安定させることが、再発予防の第一歩になりやすいです!
症状
鵞足炎では、以下のような症状がみられることが多いです。
- 膝の内側下方(脛骨内側)の押す痛み(圧痛)
- 走ると痛い/距離が伸びるほど痛くなる
- 階段昇降が痛い
- 膝を曲げる動きで痛い(しゃがみ、立ち上がりなど)
- 鵞足部が腫れぼったい感じがする
ただし、膝の内側痛は他の病態でも起こるため、痛みが強い・長引く・腫れが強い場合は病院で評価を受けましょう。
受診を強く推奨するサイン
- 安静でも痛い/夜間痛がある
- 膝がロックする(引っかかって動かない)・膝崩れがある
- 腫れが強い、熱感がある、赤く腫れる
- ぶつけた・捻った後から急に痛くなった(外傷の可能性)
- 2週間以上改善しない/練習ができない
セルフチェック(自宅でできる)
セルフチェックは「痛みの場所」と「痛みが出る動き」を整理するのが目的です。痛みが強い場合は無理せず中止してください。
セルフチェック①:圧痛(押した時の痛み)
- 膝のお皿の少し下から、内側へ指を移動します
- 脛骨(すね)の内側で、膝関節裂隙より少し下の部位を押します
- そこにピンポイントの圧痛があれば鵞足部痛の可能性があります
セルフチェック②:荷重時痛(片脚スクワット)
- 片脚で軽くしゃがむ(痛みが出ない範囲)
- 膝が内側に入る(Knee-in)ほど痛みが増えるか確認
- 同時に、つま先が外へ逃げる(Toe-out)癖がないかもチェック
セルフチェック③:膝屈曲の収縮時痛(踵を押しつける)
- 椅子に座り、踵を床に押しつけて「膝を曲げる筋肉(ハムストリングス)」に力を入れます
- 鵞足部に痛みが出るか確認します(痛みが強い場合は中止)
スポーツをしている人は、運動量のコントロールも重要です!痛みが増えるなら「量・強度・頻度」を一度下げましょう。
病院で行う検査(超音波・MRIなど)
鵞足炎は診察で疑うことが多いですが、似た症状の疾患があるため、必要に応じて画像検査で確認します。
- 診察(問診・触診):痛みの場所、動作での痛み、圧痛を確認
- 超音波(エコー):腱や滑液包周辺の状態を評価できることがあります
- MRI:症状が強い/長引く/他の損傷が疑われる場合に検討(半月板や靭帯、骨の異常の確認)
また、膝の内側痛の原因として半月板損傷・MCL損傷・変形性膝関節症などが合併・鑑別に挙がるため、自己判断で放置しないことが大切です。
治療(保存/手術)
鵞足炎は多くの場合、まず保存療法(運動量調整、物理療法、リハビリ)から行われます。
保存療法(まず行うこと)
- 運動量を一時的に調整(痛みを増やす練習を減らす)
- 炎症が強い時期はアイシング(15〜20分を目安)
- リハビリでフォーム・筋力バランス・柔軟性を改善
手術療法
鵞足炎で手術が選択されるケースは一般的には多くないとされますが、他の損傷や病態(半月板・靭帯・関節症など)が主因の場合は、そちらの治療方針が優先されます。症状が強い・長引く場合は、原因の再評価が重要です。
リハビリ(セルフケア)
ここからは、自宅でできるセルフケアの考え方をまとめます。痛みが強い場合は無理をせず、医療者の指導に合わせて調整してください。
セルフケアの前に:毎日チェックする項目(強化版)
- 圧痛(押したときの痛み)
- 荷重時痛(両脚/片脚スクワットでの痛み)
- 収縮時痛(踵を床に押しつけて膝屈曲に力を入れた時)
- 翌日痛(運動後〜翌朝に痛みが増えていないか)
「痛みが減っていれば改善傾向」「痛みが増えていれば負荷過多の可能性がある」と考え、運動量を調整しましょう。
ストレッチ(硬さの改善)
- 半腱様筋のストレッチ(ハムストリングス)
- 薄筋のストレッチ(内転筋)
- 縫工筋のストレッチ
- 大腿筋膜張筋〜腸脛靭帯のストレッチ(膝のねじれに関連する場合)
- ふくらはぎのストレッチ(足首の硬さがある場合)
痛みの原因となる筋肉がある程度しぼれている場合は、その筋のストレッチを優先してOKです!
エクササイズ(安定性の改善)
- ドローイン(体幹の安定性)
- 殿筋トレ(股関節の安定性)
- バードドッグ(体幹を安定させたまま股関節を動かす)
- カーフレイズ(足首の安定性)
- 片脚スクワット(フォームと下肢アライメント)
痛みが出るメニューは無理せず中止しましょう!「やった直後」と「翌日」に悪化しない範囲で続けるのがコツです。
復帰目安(ランニング・スポーツ)
復帰時期は、痛みの強さ・期間・フォーム・合併疾患の有無で大きく変わります。目安としては以下をクリアしてから段階的に復帰を検討します。
- 歩行・階段で痛みが強く出ない
- 圧痛が明らかに軽減している
- 片脚スクワットがフォーム良くでき、翌日に悪化しない
- ジョグ→距離→スピード→切り返しの順に進めても悪化しない
復帰途中で痛みが戻る場合は、負荷の上げ方が急な可能性があるため、1段階戻して調整しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:鵞足炎は走りながら治せますか?
痛みが軽度で、走った後・翌日に悪化しない範囲なら「運動量を調整しながら」進められることもあります。ただし、痛みが増える場合は負荷過多の可能性があるため、いったん量や強度を下げてリハビリを優先しましょう。
Q2:鵞足炎と半月板損傷はどう違いますか?
鵞足炎は「膝の内側下の押す痛み」が目立つことが多い一方、半月板損傷では「ひっかかり」「ロッキング」「曲げ伸ばしでの引っかかり感」「膝関節全体が腫れる」などが出ることがあります。見分けが難しいこともあるので、症状が強い・長引く場合は医療機関で評価しましょう。
Q3:エコーやMRIは必ず必要ですか?
軽症では診察で判断されることもあります。ただし、他の損傷が疑われる場合や、痛みが強い・長引く場合は、超音波(エコー)やMRIで確認することがあります。
Q4:注射は効果がありますか?
症状や背景によって選択されることがあります。鵞足部痛(pes anserine tendino-bursitis)に対して理学療法と注射治療を比較した報告もあります[2]。ただし、適応や方法は個人差があるため、医師と相談しましょう。
Q5:再発しやすいですか?
痛みが引いて走り始めると再燃することがあります。再発予防には、フォーム(Knee-inなど)と体幹・殿筋・足首の安定性、そして運動量の上げ方が重要です。
まとめ
- 鵞足炎は膝の内側下方(鵞足部)の痛みが特徴で、ランニングや切り返しで悪化しやすい
- 筋の硬さやフォーム(Knee-in Toe-out など)、体幹・殿筋・足首の不安定が影響する可能性がある[1]
- セルフチェック(圧痛・片脚スクワット・収縮時痛)で状態を把握し、悪化するなら負荷調整
- 他のケガとの鑑別が重要。強い痛み・腫れ・ロッキングなどがあれば受診を推奨
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参考文献

