HIIT(高強度インターバルトレーニング)の科学的基礎|work:rest比・セット数・低酸素トレーニングまでわかりやすく解説

HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、走力向上に役立つとされる一方で、work:rest比やセット数・頻度の選び方が難しく、ターゲットとする効果が得られない場合があります。

本記事ではHIITの科学的根拠を押さえたうえで、短距離・中距離・長距離に合うメニュー設計を提示し、補足として低酸素トレーニングも整理します。

あきと

HIITは、「きついほど伸びる」ではなく、「目的に合う刺激か」が重要です。

 

目次

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この記事でわかること

  • HIITとは何か(持続走・テンポ走との違い)
  • HIITで起こる主な適応(心肺・筋代謝)
  • 種目別(短距離・中距離・長距離)のwork:rest比/セット数/頻度の考え方
  • バイクHIITとランニングHIITの使い分け
  • 低酸素トレーニングの科学的な位置づけ

 

HIITとは?有酸素トレーニングとの違い

HIITの定義

HIITとは、高強度の運動(work)休息(rest)を繰り返すトレーニングです。

レビューでは、短い反復(<45秒)〜長い反復(2〜4分)まで幅広い形式が整理され、設計変数(強度・時間・回復・本数など)の組み合わせが成果を左右するとされています[ 2, 11 ]。

 

通常のランニングとHIITの違い

ランニングとHIITの効果を比較してみましょう。

ランニングと言っても、ペースによって得られる効果が違いますので代表的なペースで考えてみます。

 

トレーニング 主な目的 伸びる能力
LSD(Long Slow Distance)※1 有酸素能力の土台づくり 回復力・持久力のベース
LT走(乳酸閾値走・テンポ走)※2 速く長く走る能力 レースペースの耐性
HIIT 心肺機能の上限を引き上げる VO2max、高強度耐性の獲得

※1. LSD:会話ができる強度、最大心拍数の60~70%。

※2. LT走:最大心拍数の 80〜88%程度。LTとは、運動中、乳酸が急激に溜まり始める境界であり、20〜40分持続できるギリギリの強度。「これ以上速くすると、急にキツくなって長く持たない」。多くの持久系レースで“最も重要な強度帯”。

 

あきと

VO2max(最大酸素摂取量)とは、運動中に体が1分間で取り込んで利用できる酸素の最大量のことです。

心臓:どれだけ血液を送れるか
:どれだけ酸素を取り込めるか
筋肉:どれだけ酸素を使ってエネルギーを作れるか

この3つをまとめた総合能力の上限がVO₂maxです。

HIITの効果

2007年に発表されたHelgerudらの研究では、LSD、LT、HIIT(15秒work/15秒rest)、HIIT(4分work/3分rest)の4群でトレーニングを行い、VO2maxや心拍出量の変化を比較しました(図1)。

LSD LT 最大酸素摂取量
図1:①LSD(75%HR)45min ②LT(85%HR)24.25min ③HIIT 15sec(90-95%HR)/15sec(active rest70%HR) 47set(23.5min) ④4min(90-95%HR)/3min(active rest70%HR) 4set(28min)の比較グラフ。③④のHIIT群が有意に最大酸素摂取量、心拍出量が改善しています。[5]Jan Helgerud, 2007, Med Sci Sports Exerc.より引用

 

あきと

LSDやLT走よりも、HIITの方が最大酸素摂取量、心拍出量を有意に改善したようです。

ただ... LSDやLT走が必要じゃないという意味ではありませんので、要注意!

 

HIITの適応(体に起こる変化)

心肺機能への適応(VO₂maxなど)

  • HIITによりVO₂maxが改善することがある[ 1, 5
  • 運動強度は、インターバルごとに少なくともVO₂maxの90%以上に達することが大切[ 2

 

筋・代謝への適応(ミトコンドリア等)

  • HIITにより、運動時間が短くても強度が十分に高ければ、筋の代謝適応は起こりうる[ 4

あきと

ここで述べられている、筋の代謝適応とは、ミトコンドリア関連タンパクの増加、酸化系酵素活性の上昇、グルコース輸送・脂質酸化能力の改善をさします。

 

  • HIITと持続走で適応様式が異なる[ 7
HIITで出る適応 持続走で出る適応

心拍出量(中枢:心臓側)の改善、VO₂maxの向上

筋の酸化能力(末梢:筋側)、長時間の安定した代謝

あきと

◯HIIT→ エンジンの「最大出力」を上げやすい
◯持続走→ エンジンの「燃費・持続性」を上げやすい

「どっちが優れているか」ではなく、役割が違う というイメージですね!

 

同じ「HIIT」でも、work:rest比・強度・総時間・頻度が違えば、体への刺激(心肺/代謝/神経筋ストレス)も変わるので注意が必要です[ 11 ]。

 

実践的メニューづくり|work:rest比・セット数・頻度

work:rest比で「何が変わる」?

Work : Rest比は、次の3つをコントロールするための「つまみ」です。

  • 心肺刺激を“維持”できるか(休息が短いほど心拍・呼吸が落ちにくい)
  • 1本あたりの質(速度)を保てるか(休息が長いほど全力に近い質を出しやすい)
  • 筋腱へのストレスがどれだけ積み上がるか(高速度・高出力の反復は負担が増えやすい)

HIITの設計は「変数の操作」が本質であり、目的に応じて組み立てる重要性が総説で強調されています[ 2, 11 ]。

あきと

HIITの変数は、9つあると言われています!

①運動の様式(ランorバイクなど)、②運動強度、③運動時間、④休息強度(完全restやactive restなど)、⑤休息時間、⑥セット数、⑦シリーズ数、⑧シリーズ間の休息時間、⑨シリーズ間の休息強度

たくさんありますね!
①バイク ②120回転/分 ③15秒 ④60回転/分 ⑤15秒 ⑥15セット ⑦3シリーズ(15秒/15秒✕15セットを3シリーズ)⑧3分 ⑨50回転/分みたいに具体的に組んでみましょう。

実際には心拍数を確認しながら強度を調整する必要があります!

運動強度のチェック!

● 心拍数

2〜3分後からHRmaxの90%前後に到達
以降は上下しながら高止まり

● 主観的強度(RPE)

8〜9 (10点中)「かなりきついが、最後まで崩れない」

 

種目別:短距離・中距離・長距離に合うメニュー

短距離(100〜400m)向け:スピードの質を落とさない「長め休息」設計

  • 狙い:最高速度/加速/スピード持久(神経筋・無酸素の比重が大きい)
  • 基本方針:workを短く、restを長くして「1本の質」を守る
  • 推奨work:rest比おおむね 1:5〜1:10(例:7秒workなら35〜70秒rest)
  • 頻度の目安:週1回(レース期)〜週2回(準備期)、他日は技術・筋力・回復に配分

 

HIITの練習メニュー例
  • メニュー例A(最高速度):work 6〜8秒 / rest45~90秒 × 6〜10本 × 1〜2セット(セット間 4〜6分)
  • メニュー例B(400mなどのスピード持久力): work 20〜30秒 / rest 2~4分 × 4〜8本

 

短距離系の高強度反復は、心肺刺激だけでなく無酸素エネルギー供給と神経筋負荷が成果を左右するため、休息操作が重要と整理されています[ 11, 14 ]。

 

あきと

短距離のHIITは「追い込む」より「速さを守る」が正解になりやすいです。
速度低下が大きいなら、restを伸ばす/本数を減らすのが良いかもしれません。

 

中距離(800〜1500m)向け:VO₂刺激(密度)とレーススピード耐性(質)を両立

  • 狙い:VO₂max(心肺の上限)+レースペース耐性(速い巡航と終盤の粘り)
  • 基本方針:「密度の高い短い反復」と「やや長い反復」を週内で両立
  • 頻度の目安:週2回まで(残りはテンポ走・持続走・技術・筋力で全体最適)

 

HIITの練習メニュー例
  • メニュー例A(VO₂刺激:短い反復・高密度): work 15秒/rest 15秒 × 10〜20分(例:30〜40本相当、途中で1〜2分のセット間休息を入れても可)
    非常に短い反復(15/15)でVO₂max近傍を維持しやすく、特に「持続走中心で育ってきたランナー」に短い反復が有効になりうることが報告されています[ 12 ]。
  • メニュー例B(レース耐性:質を守る反復): work 30〜60秒 / rest 60〜120秒 × 6〜12本
    回復を確保することで速度(質)を保ち、無酸素寄りの負荷と心肺刺激を両方確保しやすいという考え方が整理されています[ 11, 14 ]。

 

あきと

1つの負荷のみで決めて行うだけでなく、目的を持って適切な方法を取り入れましょう!

 

長距離(5000m〜ハーフ)向け:VO₂maxとLTをあげていく

  • 狙い:VO₂max+LT付近の持続
  • 基本方針:「短い」or「長い」反復でVO₂刺激を作り、テンポ走(LT)で“巡航力”を補完
  • 頻度の目安:5000m/10000mを目標とする人は、HIITは週2回まで。ハーフを目標とする人は、HIITは週1〜2回。
    【あくまでテンポ走・ロング走の優先度が高い!】

 

HIITの練習メニュー例
  • メニュー例A(短い反復:密度で稼ぐ): 30秒/30秒 × 10〜20分(途中で1〜2分の小休止は可)
  • メニュー例B(長い反復:VO₂近傍の滞在を狙う): work 4分 / rest 3分 × 4本(強度は85〜95%HRmax相当を目安)
    4×4分のような形式でVO₂max改善が報告された研究があり[ 5 ]、4×4はHIITの代表的処方として整理されています[ 6 ]。

 

あきと

長距離選手へのHIITの刺激は、あくまでVO2maxの改善です。「疲れを感じにくい速度」を上げるためのテンポ走(LTの値を改善する)、長時間維持する力を改善するためのロング走が必要不可欠です!

あおい

テンポ走(Tempo run)は、 LT付近の強度で一定時間走るトレーニングです。
「きついが崩れない、会話は不可、リズムは保てる」の強度で行い、LTを押し上げるレースペースを「楽にする」効果があります!

ロング走(Long run)は、 低〜中強度で長時間走るトレーニングです。
「会話ができる、呼吸は安定」の強度で行い、有酸素の土台づくり、疲労耐性向上、エネルギー効率(脂質利用)向上の効果があります!

 

セット数(本数)と“総高強度時間”の考え方

現場では「何本のインターバルを行ったか」ではなく、VO₂max付近の強度に曝露された高強度の合計時間でトレーニングを管理すると、日による刺激のばらつきを抑えやすくなります。

HIITを実施する際には、まず「今日はVO₂刺激を合計何分入れたいのか」を決めたうえで、workとrestの設定やシリーズ数を選択し、心肺刺激だけでなく無酸素負荷や筋疲労の程度にも注意しながら設計することが重要とされています[ 11 ]。

 

あきと

下の表のように、プロトコルによって特徴が違います。
目的をもって、狙った効果が出るようにプロトコルを考えましょう!

表:プロトコルによる特徴の違い

プロトコル 特徴
短い反復:work 15秒/rest 15秒 VO₂刺激の合計時間を確保しやすい。
心肺刺激:高い、無酸素寄与:中、神経筋ストレス:中
長い反復:work 4分/rest 3分 1本あたりの後半でVO₂max近傍に到達し、比較的安定した心肺刺激
心肺刺激:高い、無酸素寄与:低〜中、神経筋ストレス:低

 

週に何回?(頻度)と“期分け”の考え方:「高強度の合計時間」「週あたりの総負荷」「回復の確保」が大切!

  • 週1〜2回から開始し、体調・試合日程・他練習(テンポ・ロング・スプリント)との兼ね合いで調整する考え方が一般的です[ 2, 3
  • 疲労が抜けない状態での高頻度は、オーバートレーニングの観点からも注意が必要とされています[ 8

 

また、総負荷が同等に設定されている場合には、短い反復、長い反復といった異なるインターバル形式を段階的に用いても、得られる有酸素適応に大きな差が生じにくいと報告されています。

これは、インターバルの形式そのものよりも、高強度で運動した合計時間や回復を含めた全体のトレーニング設計が、適応を左右する重要な要素であることを示すデータとして参考になります[ 13 ]。

 

あきと

結局のところ、「高強度の合計時間」「週あたりの総負荷」「回復の確保」の設定がとても重要になります!

あおい

頻度を増やす前に、「睡眠」「筋肉痛」「脚の張り」「練習の質」の変化をチェックしましょう。
伸びている時ほど“回復”が重要です!

【バイクHII】T vs 【ランニングHIIT】|どっちが良い?(走力向上の選び方)

バイクHIITが向くケース

  • 関節への衝撃を抑えたい(疲労が強い時期、補助トレーニング)
  • 痛みがある・再発が心配で走行量を一時的に落としたい

 

ランニングHIITが向くケース

  • 競技特異性(走る動作・接地・フォーム)を重視したい
  • レースに直結する感覚を作りたい

 

・走力向上が目的なら「最終的には走る刺激」が重要です!

疲労や疼痛がある時期はバイク有効に活用しましょう[ 10

 

低酸素トレーニングって効果的?(HIITとの組み合わせも)

低酸素トレーニングの位置づけ

低酸素環境下でのトレーニングは、吸入できる酸素量を制限することで、同じ運動強度でも心肺系や代謝系への負荷が高まり、通常環境とは異なる生理的刺激を与える方法です。

systematic reviewとメタ解析では、VO₂maxへの影響が整理され、条件によっては改善がみられる可能性が示されています[ 9 ]。

Feng et al., 2023[ 9 ]の研究によると

VO₂max改善の観点では、以下のように言われています。

効果が高い:LHTL(Live High-Train Low):生活=高所(or 低酸素室)、トレーニング=常酸素
効果が限定的:LLTH(Live Low-Train High):生活=常酸素、トレーニング=低酸素(=低酸素下でのHIIT/インターバルなど)

あきと

Live Highと言われても、なかなか難しいですよね。
Train Highはどのようにすると効果的なのか見てきましょう!

 

 

Train High「低酸素 × 有酸素(ゆっくり走)」は効果が限定的

ある系統的レビューでは、低酸素下で単に有酸素走だけ(いわゆるIHT=Intermittent Hypoxic Training)を行っても、通常の環境(常酸素)と比べてVO₂maxやパフォーマンスが有意に改善しないという結論が出ています[15]。

これは、同じ時間・同じ量の有酸素運動であっても、低酸素条件下だからといって、必ずしも有酸素能力や最大酸素摂取量が大きく伸びるわけではないということです。

低酸素の刺激だけでは十分なトレーニング効果につながらない可能性が示されています。

 

Train High「低酸素 × HIIT」はVO₂max改善に上乗せの可能性あり

別のレビュー・メタ解析では、低酸素環境でのHIITは、常酸素でのHIITに比べてVO₂maxの改善が大きいという結果が示されています。

具体的には、複数の研究を統合したメタ解析で、低酸素 × HIIT の方が常酸素 × HIIT よりもVO₂maxの伸びが有意に大きかったと報告されています[16]。

 

低酸素環境の注意点

  • 全員に同じ効果が出るとは限らないため、必須ではなく補助的選択肢として考える
  • 疲労・睡眠・栄養の管理がより重要になる

 

HIITとランニング障害予防(シンスプリント・膝痛など)|実践するときの注意点

安全に行うための基本

  • ウォーミングアップ(ジョグ+動的ストレッチ+流し)を十分に行う
  • 痛みが出たら中止し、負荷を見直す
  • 体調不良時は実施しない
  • 成長期は頻度・強度を控えめにし、無理に追い込まない

 

よくある失敗パターン

  • 高強度の頻度を増やしすぎて回復が追いつかない
  • フォームが崩れた状態で本数だけをこなしてしまう
  • テンポ走・ロング走・HIITを詰め込みすぎる

過度な負荷の継続はオーバートレーニングの観点からも注意が必要とされています[ 8 ]。

 

よくある質問(FAQ)

HIITは毎日やってもいいですか?

一般的には、毎日の実施は推奨されないことが多いです。

まずは週1〜2回を基本に、体調と競技日程を見て調整するのが安全側です[ 2, 8 ]。

 

work:rest比は「15/15」と「30/30」どちらが良い?

一概に優劣が決まるとは限らず、狙い(心肺刺激の維持/1本の質の確保)と、選手の体力・経験で選ぶのが現実的です。

15/15のような非常に短い反復がVO₂max付近の維持に有効になりうる可能性は示唆されていますが[ 12 ]、全員に同様に当てはまるとは限らないため、体調・フォーム・速度低下を見ながら目的にあった方法を選びましょう!

 

セット数(本数)はどれくらいが目安ですか?

「本数」より、高強度の合計時間で管理すると良いです。

 

バイクHIITだけで走力は伸びますか?

バイクは関節負荷を抑えつつ心肺刺激を入れやすい一方、走る動作の特異性(接地・フォーム)は別の要素です。

負荷を考慮しながら、状況に応じたバイクとランニングの併用が現実的です。

 

低酸素トレーニングは必須ですか?

必須ではありません。

条件によってVO₂max改善が示唆される一方、誰にでも同様に効くとは限らない点が重要です[ 9 ]。

まずは通常環境でのHIITと基礎持久力づくりを整えてから検討するのが安全です。

 

まとめ

  • HIITは「短い反復〜長い反復」まで幅広く、設計変数(回復・本数など)が成果を左右する[ 2, 11
  • 短距離は「質(速度)を守る」ため休息長め、中距離は「密度+質」、長距離は「VO₂刺激+テンポ走」の両輪が基本になりやすい
  • 頻度は週1〜2回から。回復不十分な高頻度は避けるのが安全[ 8
  • 低酸素は補助的選択肢

 

あきと
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参考文献

 

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